2010年式 新型戦車が公開された

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<記事>
陸上自衛隊に2010年度から導入される新型戦車の試作車両が13日、神奈川県相模原市の防衛省技術研究本部陸上装備研究所で公開された。主砲の直径は120ミリと、現有の「90式」と同じだが、情報通信機能が強化され、戦車同士による位置や現場状況のデータ共有が可能に。同省は「連携が強まり、ゲリラ攻撃に対処できる」としている。

新型戦車は全長9.42メートル、幅3.24メートル。重量は約44トンで、90式より小型軽量化され、小回りが利くほか、トレーラーでの搬送が容易だという。

http://blogs.yahoo.co.jp/bzd05757/32459919.html
〈記事に写真があります〉

主砲が120ミリというのは予想されていたことだけど……。もともと120ミリっていうのは旧ソ連軍戦車との戦いを想定して導入されたいきさつがある。低火力のゲリラ相手に120ミリはないだろう。いったんでかいのを手にすると、二度と手放したくなくなるのが軍隊の心理だな。

でも、120ミリを載せたのはそれだけの理由ではないと思う。それは、C4Iといわれる高速通信による相互連携機能を導入したことから推測できる。

敵より0.1秒でも遅れれば撃破されるのが戦車戦だ。逆にいえば、敵より0.1秒早く撃てば勝てる。GPSと高速通信を組み合わせて戦車相互のデータを共有するってのは、米軍が実際にやっている。湾岸戦争で米軍は高速で移動するイラク軍戦車を秒単位で捕捉して、コンピーターを使って各戦車の個別目標を手分けし、短時間に大量の砲弾を、夜間暗視装置を使って正確に浴びせかけて、一方的に勝利した。

この戦訓でもわかるように、C4Iのハイテク戦は近代軍隊を相手に戦う正規戦でこそ有効性が発揮されるシステムのはずだ。ゲリラが神出鬼没だといったって、戦車より速く走れる人間はいないもん。だから新型戦車は、あくまでも本格的戦車戦用だと考えるしかない。国土に侵入してくるゲリラに対抗するためというのは、その方が国民や国会向けに説明しやすく、同意が得やすいからだろう。

本当の使い道は別にあるように思う。もちろん、それは海外派遣。米軍と共に戦車戦をやるつもりでなければ、もっと違ったコンセプトの戦車を作ったはずだ。この戦車、すでに憲法改悪を照準に入れて開発されているに違いない。

装輪戦車は三菱が開発するそうですね。似たような8輪の装輪装甲車をコマツが開発しているのに。

そのうえ新型戦車って……日本はどんだけ金が余ってるんだって思いますよね。どうしても履帯車両の戦車が必要な理由として、センタウロのような装輪装甲車は装甲が薄いって理由が語られているんです。

が、ですね。新型戦車、90式が50トンもあったのに較べて、44トンになったって言うんです。形を見るとフランスのルクレール戦車やイスラエルのメルカバ戦車みたいに、砲塔が鋭く斜めになって避弾経始を重視しているのがわかります。てことは、重量を軽くするために、かなり装甲を犠牲にしているんじゃないかなと思うんです。だったら装輪戦車と変わりないんじゃないかと。

あと、山がちの日本では不整地走行能力が問われるというんですが、8輪だったら履帯車両と変わらないという実績があるようです。そもそもそんなことを言うんなら、50トンの90式でどうやって山ん中を走るつもりだったんだって言いたいです。

なんか装備全体の開発コンセプトが不整合、不透明で、ともかく強そうなものは何でもほしいみたいなところがあります。防衛省上層部は、そういう戦争ゴッコみたいなノリでアメリカに追随しているんじゃないんだろうか。

歩兵一流、士官二流、将軍三流と言われた旧軍の伝統を忠実になぞっているようで、なんだかなあとため息がでますわ。

乗ったことないんだけど、戦車の乗り心地はすごいらしいですよ。だから戦車の乗員て、普通科隊員並にガタイがいい。M1戦車なんて、あれを時速90キロですっ飛ばして、片端から敵戦車を撃破していったら……そりゃあ爽快ですわ。ただしぶっ飛ばされる戦車に自分が乗っていないってことが前提で。このあたりの身勝手な感覚が、戦争を根絶できない要因なんでしょうね~。

以前、射撃訓練の観的壕係(標的に弾が当たったのを確認して表示する役目ね)に選ばれて、弾の飛んでくる下で首をすくめてたことがありますが、実弾の入った銃声のそりゃあ怖いのなんの。自分は戦争に向いてないと思いました。まあ、たいがいの人は向いてません。死にたくないもん。自分の側は死にたくないから、装甲をよりゴツく、戦闘力はより強く、相手にだけ死んでもらおうという方向に進化するんですね。うん、やっぱり戦争ってのは人間を悪くします。

ここで私がいいたいのは「迅速かつ有効」な対抗手段がゼロ式のような新型戦車なのかということです。

それを語る前に誤解を解いておきたいのですが、90式にはエアコンついてますよ。72式の時からついてました。エアコンがなきゃ、コンピュータが故障してしまいますもん。

さて。GPSを使った位置情報システムは、90式にも72式にも必要でしょう。C4Iシステムもね。

でも、そのために新型戦車開発ってのは、本末転倒ですよ。

防衛力は国民の税金を使った限りある予算内で整備するんですから、無駄遣いは許されません。諸外国は現在のMBTを改良してC4Iシステムを搭載するなど、工夫をこらしています。私は72式もエンジンを積み替えたり、足回りを改良したり、弾着増強を施したりの改良を施せば、まだ十分現役で使えると思っています。72式のコンセプトこそ、専守防衛の自衛隊にピッタリです。

新型戦車は軽くなったとはいっても46トンもあるんだし、テスト中に色々出てくる要求を取り入れていったら、もっと重くなる可能性だってあるんです。最終的には90式とあまり変わらないものになるか、そうでなければ装甲車並の装甲の戦車という、どちらにしても「使えない戦車」になる可能性が高いです。そのうえ120ミリでしょ?

戦車同士の正規戦を視野に入れたかのような新型戦車は、日本には不向きですよ。国内で本格的戦車戦が起きる可能性なんて、ほとんどゼロです。米軍と自衛隊を向こうに回して、日本に上陸を敢行出来る国なんてありませんよ。

でも、もしそういうことになったら?
では考えてみましょう。

戦車を含む敵の重武装陸軍部隊が上陸してくる時って、どんな時です? 航空優勢を取られ、制海権も奪われた時でしょ? それは航空自衛隊と在日・在韓米空軍、米海軍航空隊が全滅し、海上自衛隊と米第七艦隊が壊滅した時です。

も、わやですな。その時点で戦車があったって、何の役にたちますか? 空軍を失ったイラク戦車隊と同じ運命が待っているだけですよ。でも、こんな事態はまず起きません。だからいずれにせよ、戦車戦はあり得ない想定です。

こういうことは自衛隊も分かってるんです。分かってて、なおも日本には合わないスペックのものを作るというのだから、国土防衛ではない目的があるんじゃないかと疑うのは、合理的推論ですよ。

防衛力の保持を認めるということが、即、軍部の提案を何でも受け入れるという意味でないことには、同意していただけると思います。

日本に相応しい防衛力とは何かについて国民の側がしっかりと意見を持ち、批判すべき点は批判する。それが主権者としての国民の義務ではありませんか?

それからこれは言っておきたいのですが、やなたまさんのように、近隣国に対して「生物学的悪性度」などという侮蔑的な評価を下して敵対的態度を露骨に顕すのではなく、抑止力を維持しつつ緊張緩和の方途をさぐるのが現実的だと思います。

保険は保険なりに、起きうる危険と身の丈とに見合った装備にとどめたいものです。税収の何十年分もの借金を抱えた政府なんですからね、日本は。