英国で派遣労働規制規則が成立

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英国で派遣労働者規則が1月21日に成立し、来年(2011年)10月に施行されることになりました。日本の運動に参考になる内容です。

新しい規則は、派遣先で3ヶ月働いた派遣労働者に、正規労働者と同等の基本的な労働条件を保障する内容です。
給与水準や、労働時間、時間外労働、休憩、休息時間、夜間労働、休日、祝日に関する権利について、正規労働者と均等の処遇を定めています。

均等処遇といっても、何を対象とするかで、労働側と経営側が対立しました。
経営側は「基本給のみが対象」と主張しました。
労働組合は、「給与全般が対象」と主張しました。

規則は最終的に、派遣労働者の「労働に直接かかわる賃金すべて」を対象とすることになりました。すなわち基本給のほか、時間外手当、シフト手当、休日労働手当、業績手当、疾病手当などがこれにあたります。

一方、企業年金、整理解雇手当や、疾病手当のうち、企業が法定レベルを上回って設定している部分、現物給付、ボーナスなどは適用が除外されます。

また、派遣と派遣の間の待機期間について、最低賃金額を下限として従前賃金の50%を支払うことが義務づけられました。

心配されているのは抜け穴です。職業紹介所を経由した労働者は、派遣ではなくパート労働者だということで、今回の規則は適用されません。また、業務請負の派遣は適用外となります。日本では実質的には派遣なのに、名目だけ請負業にして法の規制を逃れることが横行していますが、英国でも同じ問題があるようです。

労働組合などは、名ばかり請負業務が横行しているとして、適用範囲の拡大を政府に求めましたが、反映されませんでした。こんごは抜け穴防ぎが労働者の課題となるでしょう。

抜け穴を防ぐための規則に、前進面もあります。

企業が規制をかいくぐるために、契約期間を12週より短く設定して、何度も更新を切り替える手口が指摘されていました。規則は、同一の雇用主のもとで働く場合、最低6週間の休止期間をおくか、全く異なる仕事に従事する場合を除いて、就業期間は通算されるとしています。

このほかつぎのような規則が定められました。

1.正社員と均等でなければならないもの

  • 社内食堂などの施設の利用権
  • 空きポストができた場合の応募などの権利
  • 妊娠中あるいは乳幼児の母親である派遣労働者に対する保護

規則に強制力を持たせるために、政府の設置する監督機関(Employment Agency Standard Inspectorate)が検査するそうです。

また派遣労働者自身が雇用審判所に申し立てることもできます。雇用審判所の審理により違反が認められた場合は、派遣労働者に対して2週間分の賃金を下限とする未払い賃金等の支払いのほか、最高で5000ポンド(72万円)の賠償の義務が課されました。

違反事業者に対しては改善状況の検査が実施され、改善命令に従わないなどの場合には罰金(上限は設定されていない)や最長で10年の業務停止が課されます。

施行は当初、2010年4月が予定されていたのですが、経営側の要求で2011年10月まで延期されました。

*1英ポンド(GBP)=144.63円(2010年2月4日現在のレート)

<参考>
派遣労働者規則、11年10月施行へ
労働政策研究・研修機構
http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2010_2/england_01.html