政の論理と武の論理

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“首相批判”の訓示 陸自指揮官を処分へ

日テレNEWS24 2010/2/12 18:35

http://www.news24.jp/articles/2010/02/12/04153452.html

陸上自衛隊の訓練指揮官が10日に鳩山首相を批判したともとれる訓示を行った問題で、北沢防衛相は12日、この幹部隊員を処分する考えを明らかにした。

この問題は、10日、宮城県内で始まった日米共同訓練で日本側の指揮官を務める中沢剛連隊長(47)が、「同盟関係は政治・外交上の美辞麗句で維持されるものではなく、ましてや『信頼してくれ』などという言葉だけで維持されるものではない」と訓示したもの。

自衛隊の最高指揮官である首相の批判ともとれるこの発言に対して、北沢防衛相は12日、文民統制の観点から問題があるとの認識を示した。防衛省では、中沢連隊長らに対して近く何らかの処分を行う方針。

まず問題の発言を振り返ってみましょう。
以前、私は日記に書いたことがあります。

同盟関係は政治・外交上の美辞麗句で維持されるものではなく、ましてや『信頼してくれ』などという言葉だけで維持されるものではない。

軍事的な世界観では、大切なのは「能力」である。……意図などはいつコロリとひっくり返るかわかったものではない。「昨日の友は今日の敵」が世界史上の事実なのだ。

北朝鮮が日本を口汚くののしろうが、知ったことではない。どんなに敵対心を抱いていても侵攻能力がなければ脅威ではないし、どれほど友好的にふるまっていても侵攻能力があれば警戒するにこしたことはない。

戦闘部隊にとって大事なのは現実であって、口先ではないのです。同盟関係もそうで、いくら口先で「血の結盟」と言っていても、中国とソ連が武力衝突したことがあります。大日本帝国も「東亜の平和」を口にしつつ、中国を侵略しました。「韓国の独立のために」という口実で日清戦争を戦ったのに、戦後になると韓国を保護国扱いした歴史もあります。そういう意味では、同盟関係が「『信頼してくれ』などという言葉だけで維持されるものではない」というのは正論です。

しかしながら、政治の世界はそうではありません。まずは言葉を発しなければ始まらないのが政治です。そういう意味では、鳩山さんは政治家として正しいメッセージを発しました。あとは実行が伴うかどうかです。

中沢剛連隊長の言ったのは正論ですが、しかしただの原則論であって、言わずもがなの内容でもあります。いまそれを言って何になるのか、意図不明の訓辞です。

「同盟関係は『信頼してくれ』などという言葉だけで維持されるものではない。自衛隊が信頼に値する戦闘部隊たらねばならない。諸君はよく信頼に応えるべく、訓練に励んでくれたまえ。」
これなら特に問題にならない訓辞でしょうが、中沢連隊長は何が言いたかったのでしょうか。

武官は政治家を信頼し、実行を見守るのが正しい態度です。つまらぬ発言で、自衛隊が最高指揮官を信頼していないかのように見られるのは、不幸なことです。政治の論理と軍事の論理は性質が異なるのですから、武官が政治に容喙するかの如き態度は好ましくありません。

田母神さんもそうですが、口数の多い武官というのは、あまり優秀とは言えないんじゃないかなという気がします。そういえば、2.26事件以来の日本陸軍でも口数の多い幹部ばかりがもてはやされ、国を誤りましたね。