憲法と自衛隊(5)「交戦権」についての政府コンニャク問答の真意

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=501750395&owner_id=12631570

憲法第9条第2項
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

交戦権とは、平たくいえば、「戦う権利」である。「戦時国際法により交戦国に認められる諸権利のこと」という定義もある。

憲法はこれを認めないという。しかし憲法をよく読んでみよう。憲法は交戦権を無前提に否認しているのではない。交戦権を否定するのは、「前項の目的を達するため」であると明記してある。

第1項にあるように、「国際紛争を解決する手段」としての交戦権、これを認めないというのである。国際紛争を解決するための武力行使と、自衛のための武力行使のちがいは以前に説明した。当然、自衛のための交戦権は否定されていないのだ。

ところが、政府は変なことをいう。政府答弁では、憲法が否認している交戦権とは、つぎの事項であるらしい。

1. 相手国兵力の殺傷及び破壊、
2. 相手国の領土の占領、そこにおける占領行政、
3. 中立国船舶の臨検、敵性船舶のだ捕等を行うことを含む。
(1981年4月14日、鈴木善幸総理の答弁書)

2は論外としても、1と3ができないのでは、戦えないではないか。これでは自衛権をもち、自衛戦力を保持していても、何にもならない。侵略軍が国土を踏みにじり国民をなぶり殺しにしていても、自衛隊は指をくわえて見ていなければならない。できるのはせいぜい警察官職務執行法の範囲で、敵兵を「取り締まる」ことぐらいである。

それでは良くないので、政府はまたも変なことを言う。
「自衛のための武力行使は、交戦ではない。」
うにゃ?

「自衛のための武力行使は交戦ではなく、自衛行動権の行使である。」
ほにょ?

それって、もしかして言い方を変えただけじゃないのか?
そのとおりなのだ。政府はつぎのようにも言う。

自衛行動と交戦のちがいを質問されて、
「国際法の上から見れば、それはやはり普通の交戦国がやることとだいたい似たようなことをやる。」
なんだ、普通の交戦国がやることはやるんじゃないか。

「捕虜の取り扱いとか、市民に対する扱いとか、害敵手段の制約とか」については、戦時国際法が適用される。」(真田秀央・内閣法制局長官=1978年8月16日)

戦時国際法も適用されるんだ。戦時国際法とは、交戦時の国際法である。交戦するにあたって適用される戦時国際法が適用されるのに、交戦しているのではない?

それって国際法的には交戦だけど、憲法的には交戦じゃないってこと?

なんだかなあ。どうして政府はこんなコンニャク問答でごまかそうとするのか。なぜ、つぎのようにすっきりと言えないのか。

「憲法は国際紛争を解決しようとして交戦してはならないと定めている。」「国際紛争の解決を目的としない、自衛のための交戦までも否定してはいない。」

憲法を普通に読めばわかることなのに、政府がわざとひねくれまくった読み方をするのは、どうしてなのか。それは、ことがらをややこしくすることで、あたかも憲法に問題があるかのように装うためだ。

「こんなにくだらない屁理屈をこねなければ、国の独立も国民の安全も守れない憲法なのだ。」「こんな憲法なんか、欠陥品だ。」

このように主張するためなのである。この話、明日へつづく。