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■テポドンなのか銀河なのか
朝鮮のロケットの名称問題です。
私がテポドンという名称を使っていることについて、友人のいるちゃんから大略こんな批判がありました。
- テポドンは正式名称ではない。
- 銀河2号という正式名称がちゃんとある。
- テポドンは反朝鮮勢力により蔑称として使われている。
- なのにあえて正式名称を避けて通称を使うのはなぜか
これについて色々考えてみました。
こんがらかった議論を整理しないとうまく意図が伝わらないですね。
まず、現状を見てみましょう。
朝鮮政府には日本を侵略する能力がありません。なのに「ただではおかない」というような過激な発言が繰り返されています。つぎに日本政府には朝鮮を侵略する能力がありません。なのに敵基地攻撃論などいう夢想に近い発言が聞こえます。どちらもできもしないことを国内政治の都合で勇ましく言い立てて対立を深めています。はっきり言って馬鹿馬鹿しい。
こういう関係性の中ではニュートラルな立場を取りたいところです。あちらでなければこちらという立場設定はあまりにも単純な設定だと思うからです。しかしそういう立場はあり得ないんですよね。
両国の関係性の中では名称にも政治性が付与されます。テポドンと称しようが銀河2号と称しようが、そこには必ず政治性を帯びた意味づけがされてしまいます。どちらも拒否しようとすれば自分独自で作った第三の名称を使うしかないのですが、そんなものを考案しても誰にも分かって貰えません。
それでも独自の名称を付与して使うこともできないではありませんが(たとえば「きっこのブログ」で日本を指してニポンというとか、創価学会を指してナンミョーというとか)、それもなんだか「分かる人にはわかる」と言った感じですからねえ。
■銀河と称せない理由
朝鮮政府は新型ロケットを開発してもその事実も名称も公表しません。もちろん名称は第三者には分かりません。ノドンの場合、朝鮮政府のいう「火星7号」がそれなのか、「木星」なのか、いまだに定説がありません。だから通称を使うしかありません。
では正式名称が分かっている場合はどうでしょうか。実は発射前から名称が分かっているロケットは「銀河2号」が初めてなのです。「白頭山1号」は何年もたってから朝鮮政府の内部文書でそれがわかっただけで、朝鮮政府はいまだに対外的に正式発表していません。「銀河1号」は一昨年に発射されたのがそれだったと推測されていますが、朝鮮政府の発表がないので確認できません。
朝鮮政府は外の世界のことなどお構いなしで、名称を対外的に公表する必要などないと考えているようです。自分たちの内部で区別がつけばよいと考えているとしか思えません。こういう状態ですから、米国が通称をつけたのには合理的な理由があるのです。
政府の正式名称を使うべきだというのは一般的にはその通りですが、朝鮮政府のことに限っては「通常は通称を使えばよい、朝鮮政府が発表したときだけ正式名称を使え」と言うのと同じです。先方がそういうことを求めてもいないのに過剰に迎合しているようで、それはそれで中立的でなくなってしまいます。朝鮮政府がもっとオープンにしてくれれば一番いいのですが、望み薄です。
■テポドンはミサイルではないと言えない理由
「銀河2号」は朝鮮政府が人工衛星だと言っているのに、日本政府が勝手にミサイルと決めつけてそれをテポドンと称しているので、テポドンと言えば「銀河2号=ミサイル」説に同調することになってしまうかも知れません。これはどうなのでしょう。
私は日本政府の主張に同意できません。
かと言って、「銀河2号」が朝鮮政府の発表通り人工衛星ロケットかというと、その主張にも同意できないのです。
その理由を述べます。
これまでの経過はこうです。
1998年=「白頭山」ロケットで「光明星1号」を打ち上げた(朝鮮政府は成功と発表したが、失敗だった)。
2006年=事前発表なしに発射された名称不明のロケットが打ち上げ直後に空中分解した。(朝鮮政府は発射したことも含めて何の発表もしていません)
2009年(今回)=「銀河2号」で「光明星2号」を打ち上げた(朝鮮政府は成功と発表したが、失敗だった)。
今回のロケットが「銀河2号」なら、他に打ち上げたロケットがないのだから一昨年のが「銀河1号」だと考えるしかありません(朝鮮政府の発表はありません)。
打ち上げたロケットは3基。衛星は2基。するとどうなるのか。
「白頭山ロケット」で上げようとしたのが「光明星1号」で今回のが「光明星2号」だとすると、一昨年の「銀河1号」は人工衛星打ち上げではなかったことになります。何も載せずに趣味で発射することなどあり得ないので、ならば弾頭を搭載していたとしか判断できません。そのロケットが「銀河1号」ならば、銀河ロケットはミサイルだということになります。すると「銀河2号」が人工衛星を載せていたと言われても、ああそうですか、平和的なロケットなのですねとは言えませんね。
■ミサイルとしてのテポドンか人工衛星ロケットとしての銀河か
実を言えば私は今回の「銀河2号」がミサイルだという日本政府の発表は間違いで、人工衛星の打ち上げ失敗だったと推測しています。それは朝鮮政府の発表を信じるからではなく、別の根拠があるからです。
もっと言えば、今回のは「光明星2号」ではなく、実際には「光明星3号」だったと思っています。朝鮮政府の立場では存在しなかったことになっている一昨年の発射も人工衛星の失敗だったと思っているからです。
どちらの政府の発表も信じていないのです。信じてもいないのにその立場に追従はできません。そこで私はテポドンをミサイルとは言わないし、人工衛星ロケットとしての「銀河」とも言いたくないのです。
すると人工衛星であれ弾頭であれ関係なく使える、ただのキャリアとしての名称であるテポドンというのが、一番よいのではなかろうか。
■銀河(テポドン)
さて結論です。
以上の理由でテポドンと言い続けるのが自分の立場を正しく示すものだと考えます。
で、今後ですが、「銀河(テポドン)」と称することにします。
なぜテポドンとだけ言わないかというと、それは朝鮮政府におもねっているのではなく、友人のいるちゃんが嫌だと言うからです。自分としては友達が嫌だというものを無理して拘るほどのことでもありませんから。
まあ、海上自衛隊なんて自分たちの潜水艦を「どん亀」と称しているし、航空自衛隊もF1をひそかに「後家製造機」なんて言ってるけど、外国から同じように言われたら気分悪いだろうからね。
その程度のもんだとしか思えない。そんな軽いもんではないといるちゃんは言うかも知れないけどね。自分としてはそんなに重いもんではないというのが正直な気持ちです。このあたりは立場性の違いなのでしょう。
しかし「銀河」では何のことか分からない人が大半ですので、「テポドン」を説明としてくっつけるのです。自分の筋論なんて、まあこんなものです。ただ、文章ならこれでいいけど会話の中ではどうしよう。「いわゆるテポドン」とか「いわゆる銀河」というしかないのでしょうね。
それにしても朝鮮民主主義人民共和国政府ってのは厄介な政府だなあ。
いまみたいな国内運営をしてたら、いずれ国内矛盾が深刻化してやっていけなくなると思う。国際的孤立もますます深まるだろうしね。瀬戸際外交なんてそういつまでも続けていられないはずだから。
あんな政府を持って気の毒なのは国民だなあ。