新テロ特措法 延長の必要なし

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自衛隊による海上燃料補給活動の中身は誤解されていると思います。燃料補給のこれまでの実績が海上自衛隊のHPに掲載されているので見てください。ここに掲載されているのは今年2月に補給活動が再開されてからの数字です(防衛省広報室に電話確認しました)。

それによれば、最もたくさん補給した相手はパキスタン海軍で2,290キロリットル
次いでカナダ海軍(合同任務部隊の司令部隊)で1,515キロリットル
米国には800キロリットルしか補給していません。

補給回数はこの8月は4回。
累計でも44回にすぎません。
*http://www.mod.go.jp/j/news/hokyushien/jisseki080910.html

2001年から2008年2月までの実績は補給回数が外国艦艇に794回、49万キロリットルですから、ずいぶん減っています。

もともとたいした必要性はなかったのですが、今はますます必要とされなくなっているのです。パキスタン海軍なんて、自衛隊を無料のガソリンスタンドと勘違いしているんじゃないかなあ。海上自衛隊が引き上げたって、米軍が本気で文句言うとは考えられません。

<関連日記>
海上自衛隊の補給支援活動の規模を計算する

米軍情報紙に面白い記事が載っていました(*注1)。 米軍が1年間に購入する石油は1億3000万バレルだそうです。 これがどれくらいの量か調べました。 日本全体の原油輸入量が約5.1億トン。これはざっと計算すれば、約37億バレルにあ...

海上自衛隊に海賊退治の任務を与えようという話が出ていますが、これは何とか派遣を続けるための苦肉の策ではないでしょうか。たしかに海賊被害は深刻だし、各国が艦艇を派遣しています。しかしつぎのような情報もあることに留意すべきです。

マレーシア、マラッカ海峡における米国の支援を改めて拒否
AFP, 2007/11/14
マレーシアのラーマン(Abdul Rahman Suliman)副首相は14日、マラッカ海峡における海賊対策に対する米国の支援を、この海域における海賊事案が減少してきていることを理由に、改めて拒否した。同副首相の発言は米国の具体的な支援申し入れに直接対応したものではないが、マレーシアは近年、マラッカ海峡に対する米国の意図を懸念してきており、米国のマラッカ海峡における対テロ哨戒を繰り返し拒否してきた。

「海上安全保障情報月報」2007年11月号p.3
https://www.spf.org/wp/wp-content/pdf/200711.pdf

軍隊の派遣は地域の軍事バランスを変化させてしまうかも知れないし、このように警戒されることもあるのですから、慎重に行うべきです。

米軍のプレゼンスを警戒するマレーシアですが、日本の海上保安庁の支援は喜んで受け入れていることも合わせて特記しておきます。

また軍隊投入は効果に疑問符もつけられています。

国際海事局(IMB)、アデン湾沖航行の船舶に新たな警告
The International Maritime Bureau, 2008/8/21
国連安保理は6月2日に安保理決議第1816 を可決して、外国艦艇に「必要なあらゆる措置」を授権した。国際海事局(IMB)ムクンダン局長は、この決議について、「海軍艦艇の介入は個々のケースでは役に立つ。しかし、これは長期的な解決策ではない。連合国海軍部隊のプレゼンスが、この海域の襲撃事案の抑制にほとんど力になっていないのは明らかである」と指摘している。

「海上安全保障情報月報」2008年8月号p.6
https://www.spf.org/wp/wp-content/pdf/200711.pdf

じつはムクンダン局長は決議が採択された当初は歓迎していたのです。「この決議が、海賊事案を抑制し、この海域を通航する船舶への危険を軽減することを期待している」と。でも実際に海軍が派遣されても、海賊は減るどころか増えました。なんじゃこりゃと思ったんでしょうね。

ところで国際海事局は昨年から海賊に関する情報を寄せるよう船舶に呼びかけていましたが、その成果が上がって、海賊の正体や居場所がだんだん判明してきているようです。

IMB、アデン湾沖航行の船舶に新たな警告
The International Maritime Bureau, 2008/8/21

……情報筋によれば、アデン湾沖で海賊が襲撃に発進する場合に、母船として使われていると見られる、2隻の疑惑のトロール船が存在する。それによればロシア製の船尾トロール船、BURUM OCEAN、及びARENA又はATHENAの船名を持つ、2隻のトロール船が母船と見られている。その内の1隻が、アデン湾に面したソマリアのボサーソの北東約60カイリ沖で活動していると見られている。

「海上安全保障情報月報」2008年8月号p.6
https://www.spf.org/wp/wp-content/pdf/200711.pdf

くわしい情報があれば、治安機関の介入で海賊を抑止できます。こういう任務は実績のある海上保安庁の役目でしょう。

<参考日記>
海賊退治に適任なのは海上保安庁

海賊対策 海自の護衛に前向き * それより実績のある海上保安庁にお願いしてはどうでしょう。海賊の名所だったマラッカ海峡では事件が減少しています。日本の取り組みが功を奏したのだと思います。海上保安庁が海賊船より足の速い中古の巡視船を提供したり、関...

<参考情報>
海上安全保障情報月報
https://www.spf.org/wp/wp-content/pdf/200808.pdf