憲法と自衛隊(4)自衛隊は「陸海空軍その他の戦力」か?

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自衛隊が合憲である根拠の続きを書く。

今日の論点は憲法9条第2項。

「前項の目的を達するため陸海空軍その他の戦力を保持しない。国の交戦権はこれを認めない。」

第1項が自衛権を否定していないとしても、第2項で武装を完全否定しているという解釈が有力である。しかも国の交戦権まで否定している。

だから自衛権はあっても憲法は非武力的手段しか認めていないとの解釈があり、改憲派も1項はそのままでよいとしつつ、第2項を変えようとしているのだ。しかし「前項の目的を達するため」とあるように、ここは自衛以外の武力行使を禁じた第1項の目的に沿って読む必要がある。

ここで、自衛隊が「陸海空軍隊その他の戦力」にあたるかどうかを考える。

通常、軍隊は一般行政機関と区別して扱われる。警察や国境警備隊は、武装していても軍事組織とされていない。軍と警察のちがいは、どんな法律によって規律されているかの違いだ。警察などは一般法と行政法の下におかれている。つまり司法権のもとに規律されているのだ。

これに対し、軍は行政法と刑法以外に軍法という独自の法律を持つ。軍は軍だけに適用される軍法を持ち、この法律を運用するのは裁判所ではなく、司法権から独立した軍法会議(軍律裁判所ともいうが、軍事組織だ)である。なぜなら、そうでなくては戦争ができないからだ。

しかし自衛隊は軍法会議などの軍隊司法を持たず、憲兵もいない。すなわち自律的刑罰権をもたない。この点では、警察や海上保安庁と同じ、一般行政機関なのである。また憲法にその存在を規定されていない点でも、警察や消防組織と同様の存在と言えるのだ。

だから軍隊かどうかといえば、外形的には軍隊だが、法制的・実質的には軍隊でないと言えるだろう。

軍法会議のない組織は、外征戦争に耐えられない。

自国防衛にあたっては勇敢で精強な軍隊が、国境線を越えたとたんに弱兵の集団に変身してしまう例は、古今東西、数限りなく存在する。自国防衛は兵士の個人的動機と一致しているので、兵士の自発的意志で充分戦える。そこに軍律による強制は必要ない。しかし外征戦争には兵士の個人的動機がないので、軍律による強制が不可欠なのだ。

軍律裁判所も憲兵ももたない自衛隊は、すなわち自国防衛にしか使えない戦力であって、これこそ憲法第9条1項の目的にふさわしい戦力と言える。それゆえ、自衛隊は憲法第9条の禁じる「陸海空軍隊その他の戦力」にはあてはまらないと言えるのだ。

では軍法と軍法会議(軍律裁判所)さえなければ憲法第9条に違反しないのか。

そんなことはない。いま書いたのはあくまで一般原則である。その戦略、編成、装備などさまざまな面で、私たちは自衛隊が脱法的存在にいたらぬよう、監視しなければならない。いまの自衛隊はどうかと問われれば、その一部は極めて違憲の疑いが濃いと言わざるを得ない。その具体的内容は多岐にわたるので、ここで触れる余裕はないが、また機会があれば言及したい。ともあれ以上で第2項の前半部について語ったことになる。

明日は「交戦権」について書くことにする。