宝を活かす国・宝の持ち腐れの国 憲法集会での伊藤千尋さんの話

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1481074930&owner_id=12631570

5月2日の憲法を守るはりま集会で、伊藤千尋さんに講演してもらいました。
その講演記録を一部ご紹介します。
もっと読みたかったらコメントください。

——————————–

みなさんこんにちは。

僕これまでジャーナリストとして68の国々を見て参りました。68番目の国がアイスランドです。この間、火山が爆発しましたね。ヨーロッパで飛行機が飛べなくなっちゃいました。

そこに去年行ったんですけれど、この島、火山だけじゃなく温泉もあるんですよ。首都レイキャビクという所のすぐ近くにサッカー場2面分の露天風呂があるんです。市民が一人200円で入ることができます。

露天風呂の取材に行ったわけではありません。露天風呂のそばに地熱発電所がある。地熱による熱いお湯を吸い上げて、蒸気でもって電力をおこす発電です。熱いお湯を噴き出させちゃったら露天風呂ができちゃった。ついでにできちゃった露天風呂。

で聞いてみたら、この国は地熱発電と風力発電、それから水力発電、自然の発電でもって電力を100%まかなっている。ああいいなと思ったんです。

待てよ日本だって条件同じじゃないか。日本だって温泉あるじゃないか。しかし日本では地熱発電ってあまり聞かない。細々としかやってない。日本で地熱発電やったらどれくらい電力がまかなえるのかと思って調べてみたんです。

ちゃんと研究所がありました。調べてもらいました。それによると、どのくらい電力がまかなえるのか。地熱発電だけで原子力発電所20基分だそうです。

おーと思うじゃないですか。原発なんかいらないんですよ。われわれの地下には石油はないけれど温泉はある。温泉の暖かい熱を使えば、その熱でもって発電ができるのです。そしたら原子力発電所20基分がまかなえるんです。なのに、なぜわざわざ放射能が出るような原子力発電所を持ってこなければいけないのか。多分あれで儲ける人が出るからです。

なーんだ、われわれの地下には温泉がある。温泉は入っても良いけど電力に使っても良い。貴重な財産があるのに日本では使ってこなかった。ほんとは良いものなのに使ってこない。

実は良いものは日本には沢山ある。その見本のようなものが憲法9条です。良いものなのに使っていない。

途中、30分間すっとばします。この話が、ぐるっとまわってどこにどうつながるか、お楽しみに。

このコスタリカで最近やっているのはエコツアーというものです。今世界で環境とかエコとか言ってるじゃないですか。このコスタリカでもずーっと前からそれをやっている。コスタリカのあちこちに山小屋のようなホテルが作られていて、そこに泊まったら泊まり客に対してホテルの人が村の森を案内してくれるんですね。で、動物とか植物とか説明してくれる。

私も山奥の山小屋に行きました。夜中でした。バスで行って、バスから降りたらざんざん降りの雨だったんです。ホテルに向かって雨の中を走っていったんです。フロントにいたお爺ちゃんが走り出てきて、僕の荷物を一つ持って一緒に雨の中を走ってくれたんです。そして、フロントについて部屋割りをした。

部屋が山小屋だもんだから、フロントから100メートルほど離れているんです。どうしようかなぁ両手に荷物持ってるし、雨はざんざん降りだしと思っていると、横に白髪のお婆ちゃんがいました。そのお婆ちゃんが僕に傘をさしてくれて、彼女は自分の肩が雨で濡れるにもかかわらず、僕が雨に濡れないよう傘をさしかけてくれて、山小屋までずーっとついてきてくれたんですよ。

山小屋に着いて、ありがとうございますと言って、そこで寝て、翌朝起きたら雨も上がっていました。靄がだんだん晴れていって森の輪郭がだんだん現れてくるわけです。鳥が鳴いていて気持ちよくなりました。で、散歩しました。そしてホテルの正面、フロントの所に出て参りました。すると若いお爺ちゃんが竹箒で庭を掃いているんですね。竹箒は日本と同じです。

このお爺ちゃんと立ち話をしてわかったったのが、昨日、荷物を持ってくれたお爺ちゃんが元大統領だったということです。僕に傘をさしかけてくれたお婆ちゃんは、元大統領夫人だったのです。名前を聞いたらカラソ。この人ですよ。国連平和大学を作った人は。へーっと思った。

すると、その人がホテルの前に朝っぱらから立っているではないですか。昨日はありがとうございました、あなたは元大統領ですって?と聞いたら、はいそうですと言うんです。

思わず聞きましたよ。元大統領が何でこんなことやっているんだと。日本の中曽根さんとか小泉さんとか、決して彼らはそんなことしませんよね。威張ってます。

何であなた元大統領なのにこんなことしてるんですかと聞くと、彼は言った。コスタリカでは大統領は一期しかやってはいけないという法律があるんです。権力者は作らないと。独裁者は作らないと。

もちろん大統領の後、議員になることはできるんですよ。あるいは小沢さんのように黒幕になることもできたのです。そういう道を選ぼうとすればできるんだけれども、大統領の後、スパッと政治家そのものをやめてしまったと。そして、これからは一民間人としてこの社会の発展のために尽くしたいと考えた、と言うんです。

そして、彼は考えた、もうこの国には平和国家への道はできた、教育国家への道もできた、足りないのは環境国家だと。で、これまでの財産、退職金をつぎ込んで、この山小屋を造ってその時からエコツアーを始めたって言うんです。

環境というのは、本来、個人個人が自然と向き合い、自然との共存を考え意識する、これが出発点だと。その時、つまり30年以上前からエコツアーというものを始めているわけです。

偉いなぁと思ったんです。僕はその時、日本の新聞記者だとか何も名乗っていませんよ。向こうから見れば、夜中にやってきたどこかの国の一観光客にすぎない。それを、元大統領が雨の中を走ってくれて、荷物を持ってくれて。これってクーッと泣けて来るじゃないですか。

この元大統領に僕は色んなことを質問したんですけど、こんな中でこんなことを聞いたんです。

この国の電力はどうしてますか?と。
すると、水力発電と地熱発電でやってますと。

ヘーッ。水力発電はさておき、地熱発電は結構技術がいるんじゃないですかと聞きました。どうしたんですか。自前で開発したんですかと。すると、いや、よその国から技術援助を受けました。へえぇどこですか、と聞いたら日本ですと。

日本は地熱発電の技術を海外に輸出するぐらい持っているわけです。地熱発電を自分の国でやらずに、よその国でやっている。何だこの国はと。