憲法と自衛隊(3)改憲はアジアの危機を高める

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国際紛争とは国家間の対立があらわになった状態のことである。それが外交で解決できればいいが、一方あるいは双方が、自国の意思を相手に強制し、もしくは強制されまいとして武力を行使すれば、武力紛争となる。武力による解決というのは、相手を武力で屈服させて、その意思を消滅あるいは撤回させることだ。

例をあげれば、アメリカが北ベトナムを空爆したのは、ベトナム統一の意思を武力で屈服させるためだった。アメリカは自分の国家意思を北ベトナムに強制しようとしたわけだ。リビアがアメリカのミサイル攻撃に屈したように、北ベトナムが空爆に屈服していれば、国際紛争が武力で解決したことになる。

しかし北ベトナムは抵抗戦争を選んだ。北ベトナムが対空ミサイルでアメリカのB-52を撃墜したのは、アメリカの意思に屈服しないためだ。けれど北ベトナムは自分を守るのに精一杯で、アメリカに自分の意思を強制する武力がなかった。そこで紛争解決の手段としては、国連外交や世界世論にアメリカの非道性を訴えるなど、非武力的手段に期待するしかなかった。

北ベトナムの戦略は成功した。アメリカが北爆を停止したのは北ベトナムの武力に屈したからではない。平和世論がアメリカを負かしたのだ。平和的手段で武力干渉を挫折させたわけだが、しかし北ベトナムの頑強な軍事的抵抗がなければ、国際世論の勝利もなかったに違いない。憲法9条が許していると私が理解している自衛戦争というのは、こういうものである。

北ベトナムはその後、南ベトナムを武力で打倒して統一を達成した。南北ベトナム間の国際紛争を武力で解決したことになる。憲法はこういう行為を禁じている。北ベトナムは民族統一のためにサイゴンに攻め入り、アメリカは自衛のためと称してイラクに攻めこんだ。このように、武力で国際紛争を解決しようとすれば、必ず相手国の軍事力とその策源地(生産とか補給の根拠地)を攻撃して破砕しなければならない。しかし憲法は自衛目的であっても、これを許さない。「国際紛争を解決する手段として」の武力行使を許さないというのは、こういう意味である。

いまの自衛隊には外征能力がない。だから外国に日本の国家意思を強制する力はない。しかし抵抗能力としては、相当のものだ。自国を防衛するだけなら、憲法を変える必要はどこにもない。必要もないのに、今あえて改憲を唱えるのは、自国防衛のためではなく、そのしばりをなくすためなのだ。

日本の改憲と戦略変更は、アジアの戦略環境を激変させるだろう。日本に対する警戒感から、軍拡競争が始まるに違いない。軍部の台頭はいまだ脆弱な民主主義体制を揺さぶり、各国の政治は不安定化せざるを得ない。そのことが国際関係にフィードバックすれば、アジアの緊張はますますこうじる他ない。改憲は日本一国の国内問題ではおさまらないのだ。これが、私が憲法9条を守らなくてはならないと考える理由のひとつである。

論点はこのあと、第2項の問題や「押し付け論」のことなど、まだまだ多岐にわたるが、続きは帰国してからにしたい。ちょっとま、更新おやすみです。では、また。