生活保護の現場にはいろいろな人生がある

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Aさんは50代の働き盛り。ちょっと知能が平均より低いが、まじめな働き者だ。中学を出てから、30年間ずっと同じパチンコ屋に勤め続けたというから、こんなに真面目な人はちょっといない。奥さんは障がいを持っているが、親切で優しい人柄だ。いつも奥さんをいたわりながら、どこに行くにも2人でいるのは、ちょっとうらやましい。

10年ほど前、Aさんの勤め先が倒産した。Aさんは安月給の中からコツコツと貯めていたので、その貯金をはたいて、とあるスーパーマーケットの向かいに小さな一軒家を中古で買って、内装をしてお好み焼き店を始めた。奥さんを雇ってくれる所はどこにもないが、自分の店でお好み焼きを焼くぐらいなら、どうにかできたからだ。人通りが多く、いい立地だと思った。夫婦2人で頑張れば、どうにか食べていけるくらいには、もうかるはずだった。

ところがまもなく予想も付かないことが起きた。運の悪い人はいるものだ、スーパーが突然閉店し、たちまち人通りが絶えてしまったのだ。

この不景気だ、いまさら別の仕事につくのは難しい。善後策を考えつつ、貯金を食いつぶしながら店の建て直しを図ったが、なにをしてもうまくいかなかった。

Aさんは運送会社の助手として働きに出て、土日と勤務空けに店を手伝った。しかしいまどき、パートの助手の給料はたかが知れている。休まず真面目に働いても、手取りはわずか12~13万円だ。爪に火をともすような生活が続いた。

そうこうしているうちに遠い県に住む父親が倒れ、多額の入院費が必要になった。Aさんは親戚を拝み倒して借金することになった。カード会社にも借金が出来た。国民生活金融公庫から店の内装の名目で資金を借りたが、そんなものは借金の返済と生活費に消えてしまった。病院代と店の経費と利子の支払いに追われ、稼いでも稼いでも追いつかなくなった。リボ払いのカード残高が雪だるまのようにふくらんでいった。

昨年、とうとう立ちゆかなくなって、家を売って借金を返したが、給料と妻の年金ではやっていけないので、いま生活保護を受けている。アパートの家賃補助の他に、生活費補助が月額1~2万円だ。

生活保護がなければどうなっていただろう。アパートの家賃を支払うために、また借金を重ねたかも知れない。どこかに安いアパートがあったとしても、遠いところだったら、自転車で通えるいまの職場を辞めるしかない。

転居先で、つぎの仕事が見つかるのか? 生活に困って闇金にでも手を出したら、もうおしまいだ。あるいは飯場にでも流れていくか。Aさんのような人にはそんな選択肢しかないのが、現代日本社会だ。

人が生きるというのは、お金だけの問題ですむものではない。長く住んで気心の知れた人たちが近所にいるから、Aさん夫婦は安心して暮らせるのだ。いきなり見知らぬ人たちの中に、Aさん夫婦が融け込むのは難しかろうと思う。近所から孤立して、Aさん夫婦が生きていけるのだろうかと考えると、かなり難しいと思う。

Aさんは60歳になれば厚生年金が受給できる。それまでの間、生活保護が頼りだ。

先日、おみやげを届けてくれた。父親が入居している他県の軽費老人ホームに見舞いに行ったのだそうだ。余裕のある生活ではなかろうに、きっとずいぶん節約して交通費を貯めたのだと思う。酒も飲まず、タバコも吸わない、いつもニコニコしている仲の良い夫婦だ。

この人たちはもう充分に不幸な目にあっている。助ける振りをして他人を地獄にたたき落として儲ける奴もいる世相だ。人のいいAさん夫婦がお金にあせると、ろくなことにならないと思う。悪い奴らにだまされてひどい目にあうことのないよう、最低限の暮らしを生活保護で確保して、穏やかに暮らしてほしい。

日本が生活保護制度のある国でよかったと思う。この制度は、本当に世界に誇れる制度だと、心から思う。たしかにコストはかかるが、困ったときはお互い様ではないか。

それにしても、働き盛りの失業問題や低賃金問題をどうにかしないと、生活保護受給はますます増えるだろう。まずは派遣制度という現代の奴隷労働をなくさないとなあ。