曽野綾子の目は節穴か

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喫茶店でたまたま手にした週刊ポストに、2つの対照的な記事がありました。

まずは「昼寝するお化け」。
曽野綾子の名物コラムです。

日本は貧困化しているというが、一体どこが貧困なのか。街は静かで物乞いはいない。停電もない。水道も止まらない。途上国では街はうるさいし、物乞いは当たり前、失業者がウヨウヨいる。停電はしょっちゅうだし電気が届いていない地域もざらにある。水道などなく、給水車の順番を巡って怒鳴り合う後景が普通……。

お前たち物知らずの国民は何を文句ばっかり言っているのだ、これまでの自民党政治に何の不足があると言うのかという口吻です。まあいつものことですが。

同じ号に、東京足立区のテレクラに電話してきた売春志望の主婦の記事がありました。曽野綾子が上から目線で垂れる講釈より、こちらの方がよほど現実味がありました(ただし記憶で書くので大雑把です)。

「ワリキリでイチゴー」 電話での主婦の交渉です。ワリキリとは「割り切った交際」のことで、要するに短時間の売春のことだそうです。イチゴーは1万5千円。

喫茶店で待ち合わせて、記者が彼女の生活実態を聞き出します。

離婚して、娘と病気の母親の3人暮らし。朝5:30から15:30と、19:00から22:00まで弁当製造会社のパート勤めです。車はなく自転車で通います。13時間労働で、給料は23万円です。

母親の介護費用に半分が飛びます。公営住宅の家賃が26,600円。光熱費、雑貨品や日常小物、携帯電話代などに3万円。残り58,400円で食費と教育費を賄わねばなりません。仕事場の総菜の余りを持ち帰って食費の足しにします。区のジュンヨー(準要保護家庭)認定を受けているので児童手当が5000円もらえるそうで、助かっていると言います。

これでは塾に通わせるなんてとてもできません。1日13時間も働いていては、勉強を見てやったりする余裕もないでしょう。どこかに遊びに連れて行くなんて事もできないと思います。

娘は小学生。彼女にかかる教育費とは、給食費、学校要覧、ドリル、副読本、キャンプ代、社会見学代など大口の徴収、鉛筆消しゴム、クレパス、筆入れ、はさみなど学用品、トレパン、トレシャツ、給食用シートなど毎年1回の出費……。

記事に書いてなかったけれど、我が家でも算数セットだとか学校で共同購入する教材がかなりあって、他にもたくさん物いりだったことを思い出します。

彼女は週に1回、母親を病院につれていき、その待ち時間を利用して売春します。月に4~5万円の収入になるそうです。それを含めてようやく10万円の生活費になり、どうにかやっていけると言います。
職場の女性とレズの関係にあるが、そうでもして憂さ晴らしをしないとやってられない。民主党の子ども手当が下りれば、家賃分が丸々浮くことになり、とても助かる……。

記事にはあと2人の売春女性が登場しますが、同じような生活レベルでした。

そりゃあ水道は出るしスイッチを押せば電気がつきます。テレビも冷蔵庫もあります。途上国に較べれば贅沢だろうと言われればその通りです。では、記事にあるような女性は、途上国がうらやむような生活をしていて、幸福なのか。冗談ではありません。毎日13時間も働いていながら、売春しなければ食べていけないような社会がまともであるはずがない。

曽野綾子は先進国の代表として、たまに途上国に出向いてお金を配っていい気分なのでしょう。そこでの見聞を披瀝して悦に入っているのでしょう。でも、遠いアフリカの話ではなく、自分が住む東京の貧困に気付かないようでは、その目は節穴だと言われても仕方がないと思います。

それにしても、素人売春は危ない。殴られたり、踏み倒されたり、性病を感染されたり、変な性向の客もいるだろうし、犯罪の犠牲になる危険もある。なんとかならないんだろうかなあ。

<参考情報>
社会が“溜め”を回復しないかぎり、貧困化のスパイラルは止まらない
*http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/ocn/sample/ron/09/069/r09069BNA1.html

<おすすめの番組>

NHKプロフェッショナル仕事の流儀 第128回
10月13日(火)放送予定(22:00~)
守るのは、働く者の誇り
~弁護士・村田浩治~

昨秋のリーマンショック以降、「派遣切り」という言葉に象徴される雇用の問題が大きくクローズアップされている。今や日本の労働者の3分の1を占めるといわれる非正規労働者の立場は弱く、「偽装請負」などの違法労働行為や、不当な解雇で苦境に立つ人が後を断たない。

大阪・堺に、そうした人々に希望を与える一人の弁護士がいる。村田浩治(49)だ。違法な労働実態があった上に解雇された場合には、職場復帰に向け救済に乗り出す。現行の法律では、違法な労働実態があったとしても派遣先の企業の雇用責任は問えないため、その救済は困難だ。裁判で勝つ見込みも少なく、報酬も少ないため、この種の問題を専門とする弁護士は、限られる。しかし、村田はさまざまな手段を駆使し、企業と粘り強い交渉を続けることで和解解決にこぎつけようとする。

村田は弁護士になって20年。この問題に取り組み続けるのには、理由がある。
村田は小さな町工場を営む家に生まれた。幼いときに父を亡くし、家族皆で働き、工場を支えた。その時に学んだ思いが弁護士の原点だ。
「働くことは多くの時間を費やし、“人生”そのもの。その尊さを守りたい」
この夏、派遣切りにあったという女性が村田を頼ってきた。調べていくと、違法な労働実態の疑いが明らかになってきた。女性を救済するため、奔走を始めた村田。しかしそこには数々の壁が立ちはだかる。孤立無援の女性を村田は守りぬけるのか。
不況の時代、頻発する「派遣切り」「正社員切り」……数々の難題にひとり立ち向かう、ナニワの熱血弁護士。執念のドラマに密着する。