青木ケ原に2日間 生還した男性の話

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■保護の経緯

その人は12月11日、青木ヶ原樹海に入り、12日夕方、富士吉田署の警察官に保護されました。

警察官からサラ金被害者の会に行きなさいと言われましたが、彼には借金がありませんでした。「借りたら返せなくなるので借りたことがない」そうです。しかし自殺を考えるほどに困っている人を助けるところと言えばサラ金被害者の会しかないので、警察官はそこを教えたのです。

警察官は交通費としてポケットマネー3000円を渡したそうです。彼は迷ったあげく12月15日日午後、会に行きました。

■青木ヶ原に至る経緯

その人は働き盛りの43才、信州で建築の派遣仕事をしていましたが、11月10日派遣を打ち切られ、寮を出て行けと追い出されたのです(*末尾注)

東京に出て仕事を探したけれど、住む所がないと言うと雇ってもらえませんでした。アパートを借りるお金もないし、にっちもさっちも行かなくなって、死ぬしかないと思い詰めました。

彼は家族がなく、母や兄弟とは20年以上音信不通だと言います。身寄りもなく、相談できる所も知らず、これまで飯場など社会の底辺で生きてきたので世の中を上手に渡る知識もありません。迷いに迷って、死のうと決意したのです。

■保護されて以後のこと

借金を抱えていないし、転落の軌跡が違うので、被害者の会としてはいわば範囲外の人なんですが、そんな不人情なことを言わないで親身になって相談に乗りました。かつて同じ場所で死に場所を求めてさまよった経験のある相談員、いわば樹海の先輩が区役所に事情を説明したところ、取りあえず緊急措置として保護施設に入居が決まりました。

その方はほっとした表情を取戻し、少しだけ元気になったようで、これで仕事が探せると語っているそうです。ともかくこうして彼は青木ヶ原から生還する事ができました。

これまで借金もしないで遊びもしないで真面目に働いてきて、いきなり派遣切り、解雇、寮も追い出され、仕事がない、住むところもない。会社の都合でいきなり死に直面しなければならない。なんということでしょうか。

彼は本当に社会の底の底で生きてきた人で、助けてくれる人もなく、貯えもなかったため、解雇と同時に行き詰まってしまったのですが、これから彼より少しましな所にいる人、さらにそれより上にいる人という具合に、順番に被害が及ぶでしょう。多少の貯えがあってもどうしようもない。このような相談がこれから激増しそうな状況です。

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*注
彼はその派遣会社で1年7カ月も働いていたので失業手当を受ける資格がありそうなのですが、受けていません。雇用保険に加入していなかったり、うまく言いくるめて雇用保険を辞退させる悪質な会社もあります。この人の場合はそうでした。

会社都合で退職させられても、派遣社員の場合は1カ月程度の「待機期間」を認める慣例があり、会社は1カ月先でないと離職表を書かなかったりします。しかも失業期間が最低1カ月ないと失業と認めない労働行政にも問題があります。

寮にいてこそ何とか食べていけたけれど、寮を追い出されたら手持ちの金では1カ月もたない。
失業期間にお金を使い果たしてしまえば、1カ月先の給料日まで生活できないので、日払いとか飯場とか、いっそう条件の悪い所へ就業するしかなくなるのです。