朝鮮学校差別省令反対のパブリック・コメント

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1889900317&owner_id=12631570

以下の意見を文科省に送りました。
論点別にメールせよとのことなので、2本送りました。

じつは日頃の自分の意見と異なる見解も交えているのですが、それは自分と反対意見の人にも受け容れやすくするための配慮です。批判を仰いで、もっとよい意見を文科省に送っていただく糧としたいと思います。

朝鮮学校排除のための省令改定パブリックコメントは、26日(土)までです
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000617

意見

表題 改正省令案は制度の法的安定性を損ない、また日本社会に実害をもたらすものなので反対です。

論点1 改正省令案は制度の法的安定性を損なうので反対です

「公立高校授業料無償制・高等学校等就学支援金制度」について、文部科学省はつぎのように説明しています。

以下引用

制度に関するQ&A

2.なぜこの制度を実施する必要があるのですか。

(答)高等学校等への進学率は約98%に達し、国民的な教育機関となっており、その教育の効果は広く社会に還元されるものであることから、その教育費について社会全体で負担していく方向で諸施策を進めていくべきと考えられます。
また、高等学校等については、家庭の経済状況にかかわらず、全ての意志ある高校生等が安心して教育を受けることができるよう、家庭の経済的負担の軽減を図ることが喫緊の課題となっています。
さらに、多くの国で後期中等教育を無償としており、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」という条約にも中等教育における「無償教育の漸進的な導入」が規定されるなど、高校無償化は世界的にも一般的なものとなっているといえます。
このようなことから、高等学校等における保護者の教育費負担の軽減を図ることを通じて教育の機会均等に資することができるように、
今回の制度を実施するものです。

引用終わり

上記説明にもとづけば、朝鮮学校高等部を無償化の対象にするのは理の当然であると考えます。

無償化対象に(イ)、(ロ)、(ハ)の三類型を置いた理由は、

「(イ)大使館を通じて日本の高等学校の課程に相当する課程であることが確認できるもの(民族系外国人学校)」だけでは台湾系民族学校など国交のない地域の生徒が排除されるので不合理であるし、

そこに「(ロ)国際的に実績のある学校評価団体の認証を受けていることが確認できるもの(インターナショナル・スクール)」を加えても、
それら学校評価団体が欧米系にかたよっているため(イ)で排除される生徒の救済にならず、

ために「(ハ)文部科学大臣が定めるところにより、高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして、文部科学大臣が指定したもの」の項目が置かれたと推測いたします。

これら三類型は、日本に於ける民族教育の現状を合理的に踏まえたものであり、納得できるものです。

ところが日本に於ける民族教育の現状が変化したわけでもないのに、今回(ハ)を省令から削除すれば、前記の問題点が再浮上することになるだけです。

そのために
「現時点で、(ハ)の規定に基づく指定を受けている外国人学校については、当分の間、就学支援金制度の対象とする旨の経過措置を設ける」
との規定が置かれたのでしょうが、
そうすると、つぎのような問題点が現れるのではないでしょうか。

1)法によらずに裁量による予算支出というものが発生するため、「高等学校等就学支援金制度」の法的安定性が損なわれます。

2)法の外側にいわゆる「既得権」を認めることになり、この面からも制度の法的安定性が損なわれます。

さらに、今後生じるであろう事態に対しても、新省令案は対応できないと思われます。

たとえば、中国籍を持つ在日チベット人子弟の教育です。在日チベット人コミュニティはこれから大きくなることはあっても小さくなることは考えられません。するとチベット人の父母からその子弟に対して、民族的誇りを持って日本社会で共生していくための中高等教育を施したいとの声が高まるのは必至です。

しかし中国政府が在日チベット人コミュニティの独自教育を容認するはずがないため、その学校について、「大使館を通じて日本の高等学校の課程に相当する課程であることが確認できる」ことは望み薄でしょう。

しかも「国際的に実績のある学校評価団体の認証」もないでしょうから、結局は「高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして、文部科学大臣が指定」するしかないと思われます。

しかし新省令はこの道をあらかじめ閉ざしてしまうものです。「高校無償化は世界的にも一般的なものとなっている」にもかかわらず、むしろ後退するような改正案に合理性はないと考えます。

意見

表題 改正省令案は制度の法的安定性を損ない、また日本社会に実害をもたらすものなので反対です。

論点2 省令改正案は日本の国益に反するので反対です

改正が提案されたのは、いうまでもなく「北朝鮮」と朝鮮学校との関係が不透明であるとの判断によるのでしょう。

わたしはそのことについて詳しい情報を持ち合わせておりませんが、「北朝鮮」がらみの犯罪に、朝鮮学校が組織として関与した実態はないのではありませんか。

不正経理について新聞報道がありましたが、そんなことは日本の私立学校でも生じていることであり、無償化対象からはずすべき積極的理由にはなり得ないと思います。
また朝銀問題が明るみに出た結果、すでに制度が改められており、再び同様の犯罪が起こせるとは思えません。
いずれにせよ、犯罪に対処すべきは司直であって、教育制度を用いて対北朝鮮問題をどうにかするという発想が根本的に誤っております。

そもそも朝鮮学校生徒の就学支援金を停止したところで、「北朝鮮」政府が何らかの痛手をこうむるわけではなく、またそのことで何らかの譲歩を得られるとは考えがたいところです。

つまり日本外交にとって実益は何もありません。

逆に、朝鮮学校生徒の就学支援金を停止することによって、日本外交は実害を被ります。

まず第一に、「北朝鮮」政府はこれを日本の対「北朝鮮」敵視政策の証左であると強調し、場合によっては核問題の国際協議に参加しない理由の一つとして持ち出すかも知れません。核問題の六カ国協議が停滞している理由の一つが日本の教育政策にあるなどという悪宣伝を国際社会に対してなされることは、日本にとっての実害であるといえます。
また日本社会における異民族差別の証拠として国際社会に喧伝されれば、日本にとって大いなるイメージダウンともなりましょう。これも実害のひとつです。

実益がなく、実害のみがあるような省令改正が相当でないのは、申すまでもないことです。

最後に申し上げます。
たしかに「北朝鮮」政府のしてきたこと、いまもしていること、不快であり許し難いものがあります。

しかしながら、朝鮮学校に学ぶ青年たちは、日本に生まれ、日本社会に育ち、この社会で生きようとしている青年たちです。
その青年たちに差別を味わわせ、日本社会に対する失望を抱かせて、我が国にとって何か善いことがあるのでしょうか。

彼らの日本社会に対する愛着や帰属意識を自ら破壊するような制度改変を、なぜ日本政府がわざわざ行うのか、わたしには不思議でなりません。

これらの理由により、わたしは今回の省令改正案には全く同意できません。よくよくご検討のうえ、撤回下さるようお願いいたします。

以上