在特会の言い分を検証する(5)国民年金

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■在日外国人に対する年金についての在特会の主張

いつものように在特会の言い分から。

Q.掛金を払いたくても払えなかったのだから、年金をあげないのは差別じゃないの?

A.1964年に施行された国民年金法は1982年に国籍条項が撤廃され、在日外国人も年金受給の対象となりました。しかし、読んで字の如く“国民”年金であり、「外国人を対象外にする事は、憲法や国際条約に違反するものでない。我が国に在留する外国人の社会保障に対して第一次的に責任を負っているのは、その本国である」との判決が出ています(2007.2.23京都地裁・第2民事部)。

また、「いずれ韓国に帰るから」という理由で掛金の支払を拒否したのは彼ら在日の側であり、そこまで年金に拘るのであれば総連なり民団なりが互助年金を作ればよかった、或いは個人で銀行や保険に加入すればよかっただけの話で、それを怠ってきたツケを日本政府に払わせようとする筋違い論のゴリ押しに過ぎません。

余談ですが、大韓民国に年金制度が出来たのは1986年。つまり、韓国に帰るという言い分は掛金を支払う意思なし、という事の裏返しでもあります。つまり、現在、年金をもらえないのは彼らの自己管理能力の欠如が原因であり、そのツケを日本人に払わせようとしている、一種のユスりタカりに過ぎません。

■在特会の主張5つの間違い

1.「外国人を対象外にする事は、憲法や国際条約に違反」するものです。

在特会も認めているとおり、年金については「1982年に国籍条項が撤廃され、在日外国人も年金受給の対象となりました」。その理由は『国際人権規約B規約(自由権規約)』を日本が批准したからです。

『国際人権規約B規約』は、自動執行力があり、裁判規範性もありますから、国籍を理由とする差別は許されないことになったのです。つまり年金制度について外国人を対象外にする事は、国際条約違反です。

憲法第98条2項は国際条約の遵守を定めています。

『国際人権規約B規約』を守らないで、年金から外国人を対象外にする事は、憲法違反です。

第98条 2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

2.「我が国に在留する外国人の社会保障に対して第一次的に責任を負っているのは、その本国である」との判決は、年金受給資格の適格性について述べたものではありません。

年金受給資格の適格性については、すでに外国人にも認められていて、立法措置も執られていますから、在特会の主張は失当です。

では判決は何を語っているのか、それを説明するために、1975年以前にさかのぼります。日本が国際人権規約を批准したのは1975年でしたが、1982年まで、日本政府は外国人に年金資格を与えることを放置していました。しかも1982年以前に年金を掛けていたのに貰えなくて放置されていた人、掛け金年数が足りないとして受給資格者から漏れた人、そもそも年金に加入できなかった人などは、いまも無権利のままです。

判決が述べているのは、「年金無資格者について何らかの形でさかのぼって救済せよ」との訴えについて判断したものです。すなわち、この判決は1982年以前については、国に立法上の責任はないといっているのです。いまはすでに立法措置が執られているのですから、昔のことを説明した判例を引っ張り出してこれをひっくり返そうとするのは論理が転倒しています。

3.掛金の支払を拒否したのは在日コリアンの側ではありません。

そもそも年金加入資格を国が与えていなかったのです。地方自治体の手違いで年金に加入して掛け金をかけ続けていた在日コリアンもありましたが、受給年齢に達してから年金資格がないことがわかり、支給を拒まれています。ここで在特会が述べていることは全くの虚偽であって、許し難いデマと言わざるを得ません。

4.年金支払いを日本政府に要求するのは「筋違い論のゴリ押し」ではありません。

『国際人権規約A規約(社会権規約)』に従うならば、外国人の年金資格を作らなかった立法上の不作為(=するべきことをしなかったこと)について日本政府に責任がありますから、日本政府には年金資格を与えられなかった在日コリアンの損害を回復する義務が生じます。

しかし日本政府と最高裁判所は、『国際人権規約A規約』の自動執行力(=決められたことを行えと言う命令力)と裁判規範性(=守らなければ違法と判断できる法的力)を認めません。

これについては国連人権委員会が日本に対して異例のコメントを下しています。

当委員会はまた、規約の規定は直接的な効力を持たないとの誤解に基づき、規約が判決で参照されないのが-般であることにも懸念を有している。
さらに、国も裁判所のこの立場を支援しており、規約が定める義務に違反していることにも懸念を有している。

国連委員会は最高裁の解釈を「誤解」であるとはっきり述べています。また最高裁の判例を根拠に何もしない日本政府について、「規約が定める義務に違反している」とまで言っています。在日コリアンが「年金を支払え」というのは、国際条約にもとづいた、まったく正当な要求です。

在特会の主張は国際条約を「筋違い論」であるといい、国連委員会の意見を「ゴリ押し」「ユスりタカり」というに等しいものであり、国際的には全く通用しない論理であって、世界に大恥をさらしているようなものなのです。

つまり、現在、年金をもらえないのは「彼らの自己管理能力の欠如」が原因ではなく日本の立法・司法・行政の問題なのであり、そのツケを在日コリアンに払わせようとしている、一種のやらずぶったくりに過ぎません。

5.これは「在日特権」ではありません

在特会が最初に自分で認めているので言うまでもないことですが、年金受給資格はすべての外国人に認められたものであって、在日コリアンだけのものではありません。だから「在日特権」などというのはまったくお門違いもいいところです。在特会のこの主張は、彼らが自分で何を言っているのかもわからない程度の論理能力しかない団体であることを、自己暴露しているものなのです。