ヘイトスピーチとは何か(1)神戸新聞社説

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神戸新聞社説

特定の人種や民族などを汚い言葉でののしり、差別をあおる言動を「ヘイトスピーチ(憎悪表現)」という。敵意をむき出しにした侮蔑や攻撃は人を傷つけ、周囲をも不快にする。とてもまっとうな議論の姿勢とは言い難い。

ヘイトスピーチを街頭で繰り広げる活動が目立つようになったのは、ここ数年だ。多くの場合、在日コリアンや中国人を標的にし、集団でがなり立てる。

「ぶっ殺す」「たたきつぶすぞ」などとその表現は極めて過激で、常軌を逸している。「大虐殺」といった言葉も平気で使う。見聞きしただけで不安や恐怖を感じる人は少なくないだろう。

日弁連は「人の生命・身体に対する直接の加害行為を扇動する言動」と批判し、中止を求める会長声明を出した。ほとんど脅迫行為と言ってもいい言動に対し、何らかの歯止めが必要との声も上がっている。

表現の自由は基本的な権利だが、差別や攻撃にさらされた人たちの人権も守らねばならない。このような事態が続くようなら、法規制も考えざるを得ないのではないか。

気になるのは、同じような街頭行動が全国に広がっていることだ。ネット右翼と称される団体の呼び掛けで、県内では神戸で頻繁に行われている。

東京や大阪では、在日コリアンが多い地区で言動に抗議する人たちともみ合いになった。学校や労組の事務所に押しかけ、騒ぎを引き起こした例もある。

参加者は勤労者や主婦、学生などさまざまだが、行動が一線を越えることもある。これまで暴行や威力業務妨害などの容疑で何人も逮捕者を出している。

言動がここまでエスカレートした背景には、領土問題や歴史認識をめぐる韓国、中国への反発があるようだ。確かに反日デモなどの乱暴な振る舞いには日本人の多くが眉をひそめ、憤っている。

だからといって差別や憎悪をあおり立てる行為は正当化できない。そのような言動は、米国では「ヘイトクライム(憎悪犯罪)」として取り締まられ、ドイツなどでも法律で禁止されている。

日本が加盟する人種差別撤廃条約も表現の規制を求めている。政府は「処罰を検討するほど深刻な問題はない」と態度を留保し、国会の動きも鈍いが、国連などから対応を迫られる可能性がある。

ヘイトスピーチは、自分たちが享受している表現の自由を危うくしかねない。憎悪の言葉は結局、口にした側にはね返ってくる。そのことを知るべきだ。

*http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201306/0006102001.shtml