沖縄戦裁判に思う 矛盾だらけの原告側証言

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=619221104&owner_id=12631570

11月9日の「沖縄戦裁判」は原告側として梅澤裕元部隊長と赤松嘉次元部隊長の弟さん、被告側として大江健三郎氏が出廷した。

マイミクのもぐらさんが日記を書いておられるので参考にしてください。

大江岩波沖縄戦裁判本人尋問「報告会&学習会」に出席して

2007/11/10

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=619009717&owner_id=9270908&comment_count=4

ここに書く内容は以下の速記録を参考にしました。

*http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/99444/
*http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/99496/
*http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/99530/
*http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/99573/
*http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/99545/

全体として、原告側の立場がますます弱くなったと感じます。梅澤さんの証言には矛盾点があり、信用するに足りないものだと思います。

原告側弁護人:集団自決のことを知ったのはいつか。

梅沢さん:昭和33年の春ごろ。サンデー毎日が大々的に報道した。

原告側弁護人:島民に餓死者はいたか。

梅澤さん:いない。

なんと梅沢さんは、「集団自決」があったことを戦後13年もたつまで知らなかったといいます。あり得ることでしょうか。部隊長は島民が何百人も亡くなったことに、どうして気付かなかったのでしょう。他方では「島民に餓死者がいなかった」と断言しています。どうしてそんなことを知っているのでしょう。人口が激減していても気付かない人なのに。

ちなみに渡嘉敷島のほうのことですが、赤松部隊長のもとで中隊長をつとめていた皆本義博氏は、7月の裁判で、自決はその場では知らず、翌日に隊員から聞いて初めて知ったと証言しています。

隊員が知っており、中隊長に報告されているのです。梅澤さんの部隊では誰も知らず、部隊長に報告もしなかったのでしょうか。不自然ですねえ。事情をよく知るはずの梅澤さんの部下が何も語らないし、表にも出てこないのもどうしてだか、よくわかりません。梅澤さんの部下はどうして元上官の無実をはらそうとしてくれないのでしょう。不思議なことです。

変な証言についてもうひとつ書きます。

「本当は命令などなかったのに、命令があったことにしようと住民が決めた」と梅澤さんは語ります。

原告側弁護人:軍の命令だということに対し、島民の反対はなかったのか。

梅澤さん:当時の部隊は非常に島民と親密だったので、(村の)長老は「気の毒だ」と反対した。

原告側弁護人:その反対を押し切ったのは誰か。

梅澤さん:復員兵が「そんなこと言ったって大変なことになっているんだ」といって、押し切った。

ちょっと待ってくださいよ、梅澤さん。あなたはその場にいたのですか? 沖縄にいたのですか? あなたは昭和57年になって、初めて沖縄に行ったのでしょう? なんでこんな見てきたようなことを証言できるのです? もしもそのように尋ねられたら、助役の弟がそう言っていたと語るでしょう。しかし他人から聞いた話なのに、自分で体験したかのようにしゃべれる。梅澤さんという人が、こういう話し方をする人だということだけはよく分かりました。

もうひとつ不審点

原告側弁護人:(昭和62年に)助役の弟に会いに行った理由は。

梅澤さん:うその証言をしているのは村長。何度も会ったが、いつも逃げる。今日こそ話をつけようと行ったときに「東京にいる助役の弟が詳しいから、そこに行け」といわれたから。

これも、ちょっと待ってよと言いたいですね。助役の弟さんは戦時中に沖縄にいなかった人ですよ。その人に聞けなんて、村長が言うはずないじゃないですか。

こんなふうに矛盾の多い証言ですが、信頼できる証言もしています。なぜ信頼できるかと言えば、自分に不利な証言だからです。事実を自分の有利にねじ曲げることはあっても、不利になるようにわざわざ曲げる人はいませんから。

被告側弁護人:手榴弾は重要な武器だから、梅澤さんの許可なく島民に渡ることはありえないのでは。

梅澤さん:ありえない。

手榴弾を軍が渡したかと問われて「知らない」と言っていましたが、「知らない」などということがあり得ないと自分で暴露してしまったのです。

被告側弁護人:昭和63年12月22日に沖縄タイムス社の常務と話をした際に「もうタイムスとの間でわだかまりはない」と言ったか。

梅澤さん:言った。

被告側弁護人:覚書を交わそうとしたとき、「そんなもん心配せんでもいい。私は侍だから判をつかんでもいい」と言ったか。

梅澤さん:言った。

これは梅澤さんが沖縄タイムス社に命令などしていないと抗議に行ったとき、タイムス社から反論されて困ってしまい、「もう命令があったとか、なかったとかで抗議しない」と約束した時の話です。「抗議を蒸し返さないと言うなら、一筆書いてくれ」と言われたときに、「私は武士だから口約束でも約束は守る」と胸を張り、ハンコをつかなかったのです。

命令否定派はこれまでその覚書のことを「沖縄タイムス社が勝手につくったものだ。ハンコもないような文書に何の値打ちがあるか」と非難していたのですが、今回、梅澤さん自らの口で、沖縄タイムス社の言い分が正しいことを認めてしまったのです。ご本人が認めてしまったのですから、否定派のみなさんはお困りでしょうねえ。

他にも梅澤さんは裁判を起こすまでに岩波に一度も抗議していないこと、裁判をする前には大江さんの本を読んでいなかったことも明らかになりました。読んでもいない本で心が傷つくとは、不思議な方ですね。法廷での最後のやり取りは、こうです。

被告側弁護人:大江健三郎氏の『沖縄ノート』を読んだのはいつか。

梅澤さん:去年。

被告側弁護人:どういう経緯で読んだのか。

梅澤さん:念のため読んでおこうと。

被告側弁護人:あなたが自決命令を出したという記述はあるか。

梅澤さん:ない。

被告側弁護人:訴訟を起こす前に、岩波書店や大江氏に抗議したことはあるか。

梅澤さん:ない。

被告側弁護人:昭和55年に出した島民への手紙で「集団自決は状況のいかんにかかわらず、軍の影響下にあり、まったく遺憾である」と書いているが、集団自決は軍の責任なのか。

梅澤さん:私は「軍は関係ない」とは言っていない。

被告側弁護人:手紙を出した当時、軍の責任を認めているということか。

梅澤さん:全然認めていないわけではない。

つぎは赤松部隊長の弟さんの証言です。赤松さんの弟さんはご遺族なので、戦時中の様子はご存じありません。兄の名誉を傷付けられたので、遺族として痛みを感じたというのが、裁判の動機だと言われてきました。

被告側弁護人:お兄さんは裁判をしたいと話していたか。また岩波書店と大江さんに、裁判前に修正を求めたことがあったか。

赤松さん:なかったでしょうね。

おや、裁判が故人の遺志ではないことを証言してしまいました。

被告側弁護人:お兄さんの手記は読んだか。

赤松さん:読んだ。

被告側弁護人:「島の方に心から哀悼の意を捧(ささ)げる。意識したにせよ、しなかったにせよ、軍の存在が大きかったことを認めるにやぶさかではない」と書いているが。

赤松さん:知っている。

赤松部隊長は手記で「意識したにせよ、しなかったにせよ」などと他人事のように書いていたこと、初めて知りました。それにしても軍の責任を認めているのです。だったらなんで事情を知らない遺族が裁判を起こしたのでしょう。

原告側弁護人:裁判は人に起こせと言われたのか。

赤松さん:確かにそうやけど、歴史として定着するのはいかんと思った。そういう気持ちで裁判を起こした。

赤松さんは、店頭で『沖縄ノート』が得られていることを誰かに知らされたと証言しました。そして裁判しろと勧めたのも「その人」であることを告白しました。だれかがウラで糸を引いていたのです。また『沖縄ノート』はパラパラと読んだだけであると正直に答えました。むしろ曽野綾子が『沖縄ノート』を批判しているのを読んで『沖縄ノート』に怒りを覚えたと証言しました。

そりゃまあ、曽野綾子の本を読めばそうも思うでしょう。自分の兄のことを『沖縄ノート』で「極悪人」と書いてあるぞ、「人の罪をこのような明確さでなじり、信念をもって断罪する神のごとき裁きの口調」で無茶苦茶書かれているぞと煽られれば、腹もたつでしょう。しかし『沖縄ノート』には、赤松の「あ」の字も出てこないし、「極悪人」とも書かれていません。だったら、赤松さんは曽野綾子のデマを信じ、誰かにそそのかされて裁判をしたことになります。なんだか哀しくなる話です。

最後に大江さんの証言です。

大江さんに対する原告側の追及には驚きました。あんたの本は部隊長個人を非難していないかも知れないが、読む方はそこに非難が書いてあると誤解したかも知れないじゃないか、誤読するような書き方をした責任はどうなんだ、と言うのです。

原告側弁護人:作家は、誤読によって人を傷つけるかもしれないという配慮は必要ないのか。

大江氏:(傷つけるかもしれないという)予想がつくと思いますか。

原告側弁護人:責任はない、ということか。

大江氏:予期すれば責任も取れるが、予期できないことにどうして責任が取れるのか。責任を取るとはどういうことなのか。

もはや原告側は何を言っているのやら、無茶苦茶ですね。