テロとの戦争(4)周辺事態法

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=578812631&owner_id=12631570

今回は国内法に「低強度紛争戦略」がしっかりと取り込まれている点について述べる。この日記を読んでくれている方々には、「周辺事態法」の説明は不用だろう。

アメリカの要求に応えてつくられた「新ガイドライン」。これを法律的に整備したのが「周辺事態法」だった。あまり指摘されたのを見たことがないが、「周辺事態」というのは「低強度紛争」のことに他ならない。

低強度紛争は病気とその予防にたとえられる。低強度紛争の元凶はテロリズムや革命思想であり、それは「観念的伝染病」であるという。武力行使はそれらを駆除するための「苦い薬」だというのだ。

これらのような政治的・軍事的ウィルス、すなわち観念的伝染病は、初期の段階でその存在が確認されて処置を施さなければ、早期の発見に抗し、大規模な戦争になることが可能である。

ところで、アメリカ太平洋軍司令官のプルーハー将軍は語っていた。「太平洋軍の軍事戦略とは何か」という問いに「予防国防である」と。彼は予防国防に関して次のように述べている。

予防医学が健康を支える状態を促進するように、予防国防は安全保障と安定を支える。
(『アジア太平洋地域における我々の将来の形成』)

低強度紛争戦略の言葉づかいとそっくりである。つまりアメリカのプランでは太平洋軍は低強度紛争を主要な戦略にしているのだ。プルーハー将軍は続ける。

近い将来、戦略全体が、前方展開戦力と基地ならびに兵站支援を求めた他国との協力のネットワークに依存することになる。

アメリカ軍に「基地を提供している国」、「兵站」すなわち物資や資金を援助している国とのネットワークが戦略のカギだというのだ。これはすなわち日本のことである。日本を低強度紛争に引きずりこむというわけだ。

さてここで低強度紛争の特徴をまとめてみよう。

  • 国家の正規軍との戦いとは限らずむしろゲリラとの戦いである。
  • したがって地域のはっきりした決戦方式ではない。
  • 予防戦略がとられる。
  • 「観念的伝染病」とアメリカ式「自由・民主主義」とのイデオロギー戦争である。

では、これらの特徴と「周辺事態」についての政府説明を比較してみよう。

周辺事態とは、

  • 日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である
    →差し迫った脅威がなくても「影響」の段階で予防的に発動されるという。
  • 国家間の武力紛争に限られるわけではない。
    →敵は政府軍とは限らない。
  • 「周辺」とは地理的概念ではない。
    →地域が限定されない。
  • 価値観を共有する米国との同盟の強化である。
    →イデオロギー戦争への参画である。

もうおわかりだろう。

「周辺事態法」は日本をアメリカの低強度紛争にしっかりと組み入れる法律なのだ。この法律をつくるときに、どれほど北朝鮮の不審船やミサイル危機が騒がれたか、思い起こしてほしい。つまり、そういうことなのだ。北朝鮮の脅威とは、日本をアメリカの戦略に組み入れるために作り上げられ、利用されたものだ。

まんまと国民ははめられ、その結果、低強度紛争戦略は日本の国内法にしっかりと位置付けられてしまっているのだ。そのことに多くの国民は、いまだに気付いていない。ため息をつくしかないな。