テロとの戦争(3)対反乱支援

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さて今回は「対反乱支援」について語る。

「対反乱支援」とは昨日書いた「反乱支援」の全くの裏返しだ。アメリカの支配に抵抗する勢力の攻撃から、アメリカが支援する政府を守る。

説明の前に、「低強度紛争戦略」と従来の戦争戦略のちがいについて見ておこう。昨日紹介した教典には、「低強度紛争」の戦略目的がつぎのように記してある。「敵を国内的にも国際的にも孤立させて国際社会(とその援助)から締め出し、敵の政権(民衆運動の場合はその政治的影響力)の非合法化を目指す」

孤立させる。
政治的影響力を奪う。

いまアルカイダに対してアメリカが仕掛けているプランが、これだ。「テロリスト」と名付けさえすれば、煮て食おうが焼いて食おうがお構いなしというような昨今の風潮は、まさしくアメリカの思惑どおりの展開であろう。

またこうも言う。「従来の戦争とは違って、物理的に敵を排除することを目的」としていない。つまり敵野戦軍をせん滅して勝利するというような戦争ではなく、敵を孤立化し、政治的影響力をそぎ落として干上がらせる。こんなことが可能かどうかは別にして、ともかくこれがアメリカの計画だ。

その目的を達するため、「対反乱支援」として次のような方策が書かれている。

親アメリカ政府に対する、

  1. 資金・武器の供与。
  2. 軍隊・警察の訓練。
  3. 教育、土木工事、農業、輪送、通信の支援、保健・衛生の援助。こういった民生支援をつうじて社会経済状況を改善して反政府活動を弱める。

こうして最終的には強力な親アメリカ国家機構の建設を促進する。このような活動の総体が「対反乱支援」だという。

注目したいのは「(3)教育、土木工事、農業、輪送、通信の支援、保健・衛生の援助」。

これこそ陸上自衛隊がイラクで行ったことではないか。学校の建設、橋・道路の補修、水の補給、病院の建設と機材援助、これが自衛隊の活動だった。「戦闘に行くのではない、民生復興支援に行くのだ。」これが何度も繰り返された説明だった。

一般的には、自衛隊の民生復興支援活動はつぎのように理解されている。

  • 国際社会は資金援助を求めているだけではなく、「ブーツ・オン・グラウンド」、すなわち人的貢献を要求している。
  • しかし日本は憲法の制約があって戦闘任務につけない。
  • 世界の要求と憲法の制限の板挟みの中で、ようやく実施できたもの、それが民生復興支援だ。

国内事情としては、この説明は間違っていない。しかしアメリカの戦略に立てば、これは単なる民生復興支援ではない。先に見たように、民生活動は「低強度紛争」の中にしっかりとビルトインされているのだ。「対反乱支援」なのだ。政府もメディアも、この事実を国民に隠している。ゆゆしきことではなかろうか。

次回は国内法に「低強度紛争戦略」がしっかりと取り込まれている点について述べる。