ソマリアで自衛隊は何ができるのか

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海賊対策の新法制定、首相と防衛相が方針確認
読売新聞 – 2009/1/23 23:27
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白燐弾の話題が一段落したので、前から気になっているソマリアの海賊問題について書きたいと思います。前の日記で想像力の欠如について書きました。海賊対策に関して、いま行われている議論がどれほど想像力(プランニング能力)に欠けたものか、具体的に指摘したいと思います。

海賊退治のためにどんな部隊を派遣するつもりなのでしょうか。特別警備隊を出せと言う声が高いようです。特別警備隊は、武装工作船対策のために創設された部隊ですから、海賊退治にうってつけだというのです。

特警隊なら、たしかに海賊を制圧する能力を持っています。その特殊ボートは時速40ノット(74km)も出るので海賊の高速漁船なんか目ではありません。通常2隻が互いに援護しながらヘリとともに作戦に当たります。しかし日本周辺での作戦しか想定していない特警隊をソマリアに派遣するなら、特別機動船を2隻とヘリ3機を運べる「母艦」が必要です。

どの艦を使うのでしょうか。スペースのある「おおすみ」にはヘリ搭載能力がありません。無理してヘリを載せても、飛行管制をしたり整備する能力がありません。「おおすみ」より大きな「ひゅうが」はまだ就役しておらず、乗員訓練もしていないので使えません。ヘリ搭載護衛艦「はるな」型、「しらね」型だと、警備艇を積むためにはヘリを降ろさねばなりませんので、話が本末転倒です。掃海母艦「うらが」ならスペースがありますが、速力が22ノット。海賊船を追跡できません。では特別機動船をあきらめて、重機関銃や対戦車ロケットを積んだ海賊船を相手に小型ゴムボートで突入させるのでしょうか。

そんな死んで来いと言うに等しい作戦を命令できるはずがない。海上自衛隊は海外での作戦行動を想定していないので、ソマリアで働く能力を持っていないのです。この弱点は、いざ部隊を派遣しようというときに、きっと争点として浮上するでしょう。

さらに、運良く海賊を拘束したとして、司法権限を持たない部隊はその後何をすれば良いのでしょうか。各国軍はせっかく海賊を捕らえても、海岸まで運んで釈放するしかない現状です。有効な海賊対策の国際法が作られないうちは、いくら強い部隊を派遣しても何もできないのです。

http://www.asagumo-news.com/news/200901/090122/09012204.html

ロシアの戦車を積んだウクライナの貨物船が乗っ取られたのが昨年9月25日でした。ロシアは直ちに特殊部隊を載せた艦艇を現地に派遣し、米国も駆逐艦を派遣しましたが、何も手を出せずにいまもにらみ合いが続いています。「何もしないわけにはいかない」と政府は言いますが、乗っ取られてしまうと軍艦を派遣しても、実際に何もできないのです。こういう問題になるとすぐに「憲法の制約があるから何もできない」という議論に進めたがる人がいますが、ロシアだって何もできないんだからこれは憲法の問題ではなく、国際法の問題であり、軍隊の能力の問題です。軍事力は万能ではないのです。

ではどうすべきなのかという点については明日書こうと思います。