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沖縄の基地問題を考えるときに忘れてならないのが、沖縄戦です。胸がつまりそうな証言をこれまで読んできましたが、今日はちょっと違った角度から沖縄戦をとらえなおしたいと思います。
■死亡率30.5％
沖縄戦で死亡した県民数は、沖縄県の調べでは122,228人、そのうち一般県民は94,400人と言われています。しかし実はもっと多いそうです。
94,400人というのは、戦前に較べて減った人口を数えているだけなのです。だけどそれでは実態を表せません。戦前の人口調査には軍人が含まれていませんでした。その人たちが戦後の人口調査に入っています。他には復員兵が帰っていますし、サイパンなど国外に出稼ぎに出ていた人が戻ってきました。だから人口は何万人も増えて当然なのです。なのに、この人たちを加えても、沖縄では94,400人も人口が減っているのです。新しい登録者を除いて数えれば、本当の人口減はもっと多かったはずです。本当の人口減は12万人よりもっと多かったに違いなく、おそらく15万人以上に達するだろうと見られており、これがすなわち沖縄戦の県民死者なのです。
1944年2月の沖縄県人口は491,912人。よく言われる県民の4人に1人が亡くなったという話は、死者12万人を基礎にした数字です。本当は15万人が亡くなりました。なんと死亡率30.5％です。
■旅順作戦の死亡率は11.5％
沖縄戦がどれほどすさまじい戦闘であったかをイメージするため、他の戦場と較べてみましょう。
人口730万人の東京で、大空襲の死者が10万人です。死亡率1.37％。けたが違います。（空襲が悲劇として軽いというのではありません。）
シベリア抑留の死者は、厚生省の調査では5万3千人。帰還した人が47万3千人です。死亡率10.07％。ただし11年間の死者です。沖縄戦のピークはたった2カ月でしたから、なんとも言葉を失う数字です。短期間に集中して、これほど凄まじい殺戮は他に例がありません。
では短期間の戦闘と較べるため、旅順の203高地攻撃を確かめてみましょう。「肉弾」という言葉を生み、日露戦争最大の惨劇と言われている、あの戦闘です。参加将兵延べ約13万人、そのうち戦死者1万5千人。死亡率11.5％。203高地でさえ沖縄戦の1/3の死亡率なのです。
敗戦の最大の悲劇として伝えられている満州引き上げの惨劇はどうでしょう。満州の日本人人口は155万人。そのうち24万5千人が亡くなりました。死亡率15.8％です。
原爆はどうでしょうか。1945年当時の広島市の人口は35万人。原爆のせいで1945年11月までに亡くなった人は、広島市の公式発表で9万104人。死亡率25.74％です。
沖縄戦に匹敵する死亡率といえば、米軍の大犯罪といわれるソンミ村虐殺事件があります。ソンミ村の人口は507人。このうち殺されたのが173人です。死亡率34.12％。
原爆やソンミ村虐殺と較べるしかないほどの惨劇が、沖縄戦でした。いえ、原爆は一都市、ソンミ村は一村という範囲でしたが、沖縄は全県が戦傷となったのです。しかもこの中には、たとえば対馬丸事件の死者が含まれていません。（フィリピン戦やカダルカナル戦はほとんどが餓死ですから、参考にならないと考えます。）
■世界戦史上類例のない沖縄戦
歴史的に検証できない中世のお話は別として、これほどすさまじい民衆被害を出した戦闘というのは、世界史的に空前絶後ではないでしょうか。独ソ両軍あわせて100万人の死者を出したスターリングラード攻防戦の住民死亡率が30％を超えるといわれていますが、統計がなくただの伝説です。しかしこの戦いは独ソ戦最大の悲劇とされ、あれほどひどい戦場はなかったとされています。沖縄戦は、これに匹敵する死亡率で、しかも伝説ではなく統計上の事実なのです。
■沖縄の基地問題を避けて選挙は語れない
これが沖縄戦でした。おじいやおばあの証言なんか当てにならないとうそぶくネトウヨも、この数字を否定することはできません。そしてこの数字がはらむ、筆舌に尽くしがたい、そして数え切れない悲劇に思いを致すならば、沖縄に米軍基地を当たり前のように置き続けている現状を、菅総理のようにあっさりと肯定できるはずがないのではないでしょうか。抑止力だか戦略だか知らないけれど、そんな理屈でこれ以上沖縄県民に軍の負担を押しつけていられる事態ではないでしょう。みんなには、ほんとうに、ほんとうによくよく沖縄の歴史を噛みしめて、参議院選挙に臨んでほしいなあと、そう思います。
参院選マニフェスト、各党が相次ぎ発表
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