自衛官の命について

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=973090171&owner_id=12631570

マイミクさんの日記に「自衛隊は隊員の命を軽視しているのでは」という疑いが書かれており、自殺者が多いことが挙げられていたので、自分の考えを書きます。

■海上自衛隊リンチ事件

まずその日記の主テーマである海上自衛隊リンチ事件について触れますと、こんなこと、あってはならない事件だと思います。責任を曖昧にしたり、真相をうやむやにして終わらせてはなりません。

この事件は単なる個人的「いじめ」ではありません。一部隊が全員で関わった事件ですし、事件の起きた日時(9月9日(火)午後4時45分)から公務中の災害であるのが明らかですから、自衛隊自体の責任を深く追及すべきだと思います。人が死んでいるのですから不起訴処分になることはないと思いますが、業務上過失致死にしてはいけません。未必の故意による殺人が相当だと思います。

この件は以前に日記で言及しています。
「自衛隊に制裁は似合わない」
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=963131682&owner_id=12631570

■自衛官の自殺率は高いか

自衛官の自殺については以前から多いと指摘されていて、私も海外派遣との関連や厳しい営内生活など自衛隊特有の原因があるのではないかと疑った時期があります。

私が自衛隊にいた時の同期生にも自殺者が出ています。それは私の友人で、訓練や学業についていけなかったのに、親の期待を背負っていたので退職できず、思いあまって自殺を選んだのでした。

厚生労働省の調べでは日本の自殺者は2006年の数字で人口10万人あたり13.2人となっています。

資料:平成19年自殺対策白書
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/w-2007/html/part3/b3_14.html

自衛官総数は約24万人です。単純に日本の平均自殺率を適用すれば年間31.6人となります。現実には30人どころか年間90人もの隊員が自殺しているのですから、自衛官の自殺率は明らかに高いと見えます。

けれど自衛隊は構成員のほとんどが男性ですから、日本社会全体の平均を当てはめるのは不適当です。男性の自殺率は女性より高いのです。先ほどの表を見ると、男性の自殺率は人口10万人あたり34.8人。

東京新聞によれば、自衛隊の自殺者は10万人当たりに換算すると34.4人ですから、あまり変わらないことになります。

資料:東京新聞
*http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2008091502000131.html

東京新聞は公務員と比べると比率が高いと書いていますが、終身雇用で身分の安定した公務員と、2年任期制の特別職公務員の自衛官を比べるのは不相当だと思います。

■自衛官の自殺原因

営内生活のストレスとかいじめ自殺はあると思います。これは集団生活を余儀なくされる自衛隊組織の特殊性が原因と言えるでしょう。
なにせ人間関係の密な社会ですから、小さな人間関係のもつれが大きな問題になるという傾向はあるのかなと思います。

しかし自殺問題を単純に「自衛隊が武力組織だから自殺者が多いのだろう」とか「殺人集団だから隊員の命も粗末に扱うのだろう」というふうには短絡できないと思います。いじめ自殺そのものは民間会社にも多いですしね。自衛隊特有の現象というより、日本社会全体に蔓延している病理ではないかと私は考えています。全体として自殺率が極端に高い事実もないわけですし。

一般論として自衛隊が隊員の命を軽視しているかと言えば、そんなことはないというのが結論です。

■海外派遣と自殺の関係

それよりも安易に紛争地帯に行ってこいと命令する政治家連中のほうこそ、隊員の命を何だと思っているのかと、私には恐ろしいです。

昨年11月の国会答弁によれば、イラク等に派遣された隊員は延べ19,700人で、そのうち自殺者が16人出ているとのことです。

資料:イラク帰還自衛隊員の自殺に関する質問に対する回答
*http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b168182.htm

これを人口10万人当たりに直せば、約81.3人となります。

人口10万人あたり34.8という日本全体の男性の自殺率と比較して、これはべらぼうな数字です。海外派遣は隊員にとってかなりのストレスになっているのは間違いないと思われます。それでも政府に命令されれば行かなければならないのが自衛官の立場です。

「事に臨んでは危険を顧みず、専心職務の遂行に努め……」
これは自衛官の宣誓文です。
自衛官に志願した以上、この宣誓から免れるようなどと隊員は考えていないでしょう。しかしイラクやアフガンなど我が国と何の関係もなく大義もない戦争に自衛隊が協力する義務など、本来ならあるはずがないのです。

自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣です。現在の最高指揮官は、自衛官を危険な戦場に赴かせておきながら、自分は毎晩ホテルで食事をして銀座の高級クラブに通っている奴です。こんな連中に自衛隊は好きなように弄ばれており、自衛官はその被害者だというのが、私の結論です。