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不条理(1) 「ニュース23」より
からの続きです。
そこに3つのコメントをいただきました。
まず非戦さんが言います。
個人だけのせいとはいえません。暗い深い闇がこの社会を覆っているようです。刑務所に入りたいと思う加害者を罰しても、被害者の恐怖や傷が癒えるわけではないし、加害者を厳罰に処しても、何の問題も解決するわけではないし、どうしたらいいのでしょう。
もぐら@政権交代!さんも言います。
シャバで何とか暮らして行けるなら、誰が牢屋でくさいメシを食べる事を望むでしょうか。
同じ事を思いながらTVのニュースを見ていました。
犯人のおばあさんは、性格的に問題のある人だと思います。おそらく頑固で気むずかしく、他人とうまくつきあえないタイプの人なんでしょう。けれどお金さえあれば、周りに嫌われながらでも、それなりに平穏な暮らしを営めたでしょう。個人的な疎外感を理不尽な怒りに変え、犯罪にまで至らしめたのは貧困ですよね。
最初は性格的に難のある人が社会からはみ出していきますから、ある意味でこういう犯罪者は炭坑のカナリアに似ているんではないのでしょうか。ガスが漏れ出すとまず弱いカナリアが死ぬので、それを警告として受け取って避難したと言います。死んだのがカナリアだから関係ないと無関心でいたら、次に死ぬのは人間です。
変わり者の無能力者がやったことだから自分には関係ないと思っていたら、次に貧困にたたき落とされるのがじぶんかも知れませんよね。
つぎにまーくさん
そういう人がいる反面、合法的に犯罪をする人間が集団化して、お金を稼ぎまくっている現実もあり
そうですね。ここまで経済が落ち込んだのは、金融工学を駆使して実体経済の世界から貨幣を吸い上げていった金融ビジネスのせいですよね。ビジネス界は潤沢な資金で学会に影響力をもち、メディアを買い、政治力を買います。けれども貧困にたたき落とされる側は何の力もありません。踏みつけられ、しかも法律を守らねばなりません。
TVは次に、職を失い路上に放り出された20代、30代の青年たちを追いました。路上生活に追い込まれた一人の青年が語っていました。
「最悪の選択をしちゃったから、そういう意味では自己責任かも……」
そうでしょうか。自分のライフスタイルに合わせた新しい働き方だと喧伝して、派遣をバラ色に染めて見せたのは誰なんでしょう。
「平成10年版労働白書」は派遣労働を「外部労働市場」と名付け、こう語っていました。
- 働く意欲と能力のある労働者が、そのニーズに応じた多様な雇用・就業の場で、自らの能力を十分に発揮して働けるようにしていく
- 外部労働市場の機能を強化して雇用の安定を図る
- 働き方自体について、労働者の個別性、自律性を重視し、多様な選択肢のある仕組みに変えていく
http://www.jil.go.jp/kisya/daijin/980707_01_d/980707_01_d.html
このように、派遣システムを推進したのは国でした。
しかし国の言葉とうらはらに、実際には働く意欲と能力のある労働者が派遣システムのせいで大量に仕事を失っています。
「自らの能力を十分に発揮」するどころか、誰にでもできる仕事しかさせてもらえないから、スキルアップにつながりません。
「そのニーズに応じた多様な雇用・就業の場」などなく、あるのは企業のニーズに応じた画一的な働かせ方でした。
働き方自体についても、労働者の個別性は失われ、使い勝手の良い「ハケン」として扱われ、人をモノのように資材部が管理する状態です。自律性とは言えど、休むか辞めるかの選択肢しかなく、多様な選択肢などどこにもありません。外部労働市場の機能を強化すればするほど、雇用の安定は失われました。
こういう実態が明らかになって来ると、今度はどう言っているのか。
東京大学社会科学研究所の佐藤博樹教授は語ります。
派遣が低賃金で、スキルを身につけられるような現場が与えられず、仕事のキャリアアップにつながらないという議論に対して教授は、それは間違いだ、と言います。ハケンは給料が安いというが、それは働き方の実態を無視した比較なんだと。
>一面的な論議だと思います。
>正社員と非正規社員……どちらが上か下かということではありません。
>実態を無視した論議
>質的に異なる働き方を、同一の尺度、例えば賃金といった尺度だけで測定して、その水準の差(格差)を問題にすることが誤りなのです。
比較の仕方が間違っていると。
ではどういう風に比較するのが正しいのでしょうか、さらに教授は言います。
正規社員になると馬車馬みたいに働かされるし、いやな仕事も断れない。会社の言いなりにならなくてもいいのが非正規なんだと。そういう自由を選択したくせに、自由の他に身分保障も求めるのは間違いだと。
>正社員の働き方の本質は「無限定」雇用が特徴です。
>会社は「仕事が増えたら残業して下さい」、「事業所を縮小するので他の事業所に異動してください。仕事も変わります」といったことを社員に要求することができる強い人事権を持っています。
派遣の実態がどうなるのかわからなかった時代には派遣は素晴らしい働き方なんだと若者を誘導しておいて、その実態が明らかになって批判が起きると、選んだのは自分じゃないか、文句を言うなと叱りつけるわけです。
不条理(3)自己責任論に異議あり!
に続きます。