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9月3日の日記「弁護士が被告人を弁護するのは当然」にたくさんのコメントをもらった。
「>」が寄せられたコメント。その後が私の回答です。
>タイミング的に見て、死刑を回避する為、弁護士が入れ知恵したとしか思えない。
何の根拠もない憶測ですし、現実としてありえないことです。弁護団は刑事事件のプロです。入れ知恵がどれほど重大な違法行為であるか、充分に知っています。バレたら命取りです。弁護士生命を絶たれるかも知れないような危険を、こんな裁判ひとつのために冒すはずがありません。市民は裁判実務を知らないので、まるでテレビドラマのようなことを憶測しているのだと思います。
>そして、内容が被害者を愚弄しているとしか思えないことから非難が集中しているのではないでしょうか。
確かに被害者を愚弄しているとしか思えない内容であり、犯人の愚劣な人格をよく表していると思いますが、それが被告人の主張である以上、弁護士にはそれを代弁する義務があります。
>被告人は当初からあの主張をしていて、弁護士が有利に裁判を進める為、隠していたと言う可能性もありますが。
当初からあの主張をしていたようです。弁護団が家裁調書を調べなおしたことで明らかになりました。第一審の段階でどうしてそれを主張しなかったのか、弁護団は第一審、第二審を担当した弁護士を批判しています。
その理由は公判が有利になるからではなく、被告人の本当の主張を公判で訴えなかったからです。常識で考えて、あの主張が裁判的に有利であるなら、どうして後になるまで隠しておく必要がありますか?
>過程はどうあれ、一般市民はあれを弁護士の死刑を回避する為の強引な手段と見ている。
すでに書きましたが、「市民がどう見ているか」と「本当はどうなのか」を混同してはいけないと思います。
>どんなことをしても被告人を守る、法律の範囲内であれば何をしても良い。弁護士として、本当にこれで良いのでしょうか?
もちろんです。「法律の範囲内であれば」ね。たとえば「入れ知恵」は「法律の範囲外のこと」なのです。むろん、そういうことを弁護士はやっていません。
>(略)以上の流れで、場合によっては弁護士の効力が減衰してしまう可能性があります。
裁判員制度など一つの表れでは?
それは認識不足です。裁判員制度は弁護士のあり方が問題となって導入されようとしているのではなく、裁判官のジャッジの仕方が問題とされたのです。
そして裁判員制度について危惧されているのは、まさに弁護士が公判に勝つため、真実ではなく裁判員の情緒や情感に訴えるパフォーマンスに走るのではないかという点です。その危惧が、いま現実のものとして展開されています。すなわち光弁護団を非難する橋下徹弁護士の誤ったパフォーマンスに多くの人が情感を動かされ、間違った判断をして行動しています。
>弁護士は法律を守るだけではなく、一般の人が納得できる行動、いわゆる倫理に基づいて行動すべきではないのか?
倫理的に非難されるべきことなど、どこにもありません。非難されている行動についてこれまで語ってきましたが、まだ不明の点があれば指摘して下さい。
>今回の騒動により、弁護士の影響力が希薄化し、将来真に弁護が必要な場合に、十分な弁護が受けられなくなってしまうのでは無いかと危惧します。少なくとも、橋下弁護士の言う説明責任?は、弁護士の信用回復の為必要ではないかと思います。
橋下弁護士が求める説明責任については、単に彼の勉強不足であることは前のコメントで触れました。が、仮に説明責任を果たしていないとしても、それは懲戒に値する行為ではありません。弁護士は依頼人に対して誠実であるべきです。第三者である国民にサービスするのは、本来の職責ではありません。
人手の足りない弁護団は裁判対策だけで手一杯だと推測できます。だからこそ、法律のプロたる橋下弁護士は、冷静に事実を見て、国民に対して事態を正しく解説すべきだったのですが、逆のことをしてしまったのです。
事実をもっと大切にして頂きたいと思います。「ねつ造された証言」という言葉がありました。しかし差し戻し審では「証言」は行われていません。裁判の実際を見ないで、外部で語られていることだけを根拠に心証を固めているのかなと思ったのですが、間違っていますか?
ネットではさまざまに加工された情報が出回っています。一例をあげます。
>計画的犯行ではないと主張するために弁護団が持ち出した根拠の一つに、「作業員のコスプレをして犯罪を行っているから」というものがある。偽装をコスプレと言い換えれば「計画的」が「偶発的」になるというのか!
こういう論調があるのをご存じですか?これがまったくのねつ造情報なのです。弁護団はこう述べています。
「身元がすぐに判明してしまう勤務先の作業服を着て犯行に及んでいる点から見れば、計画的犯行であったと断定できるか疑わしい」
合理的な主張だと思いませんか? ここで弁護団が言いたいのが、「身元がすぐに判明してしまうようなものを着て犯行に及ぶ不自然さ」であることはすぐにわかりますね。それがたまたま「作業服」であったのは副次的な事柄です。
これを「弁護団は犯人が作業服を着ていたから計画性がないと言っている」と解釈し、さらに「コスプレしていたのが偶発的である証拠だと言っている」と歪曲するのは、いかがなものでしょうか。メディアに流されている弁護団のイメージも、こうやって歪められ、マンガにされた弁護士像なのです。
犯人が憎い。その感情は私も同様です。しかし、感情に流されて弁護団に集団的に懲戒を申し立てる行為は、間違っています。橋下弁護士がテレビで懲戒請求を呼びかけた五月、全国で申し立てられた懲戒請求は3900件にも上ったそうです。異常な集団心理が働いていると思いませんか?