あるタクシー・ドライバーの話

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身近であった実話。

個人タクシー業者のAさんは、売り上げが足りないときに、仲間に紹介された地元の高利貸しに、つい借金してしまった。景気が良いときなら返せない利息ではなかったが、震災以来、神戸はとても不景気だ。それ以後、支払いきれない利息の取り立てに追われる生活が始まった。

やくざのような高利貸しに脅され、つきまとわれた。利息を支払うためにサラ金に手を出し、さらに別の高利貸しに借りて……生活は破綻した。

妻は子どもを連れて家を出ていった。数年後、自分も家賃が支払えなくなって、アパートを追い出された。車で寝泊まりしながら昼夜無しに車を走らせる暮らしが始まった。しかし稼ぎのほとんどを借金取りにむしられる。警察に相談すると、借りたものは返せという冷たい対応だったという。

病気になっても休めなかった。車が家になって7年、彼はついに脳梗塞で倒れた。車のなかで倒れている彼を発見したのは、取り立てのために行方を探していた借金取りだった。なんとか命を取り留めた彼は、病院から連絡を受けた娘さんの尽力によってアパートに入り、生活保護を取れたのだが、体はボロボロだった。

弁護士の介入により、ヤミ金高利貸しの取立てはピタリとやんだ。久しぶりにぐっすり眠れるとよろこび、人生をやり直したいと語った彼の望みは叶わなかった。3カ月後、彼は亡くなった。

規制緩和の影響でタクシー台数が増えている。稼ぎが落ちて借金に手を出し、失敗する運転手は多い。いまはまだ餓死にまでは至らない。が、餓死寸前だという人がどれほどいることか。構造改革に殺されていく人は想像以上に多いと思う。安倍首相は改革を進めれば日本は豊かになると叫んでいる。ふざけるな! Aさんは、まさにその改革に殺されたのだ!

ちなみに彼から借金の整理を依頼されていた弁護士は、彼の死後、サラ金から200万円も支払いすぎの利息を取り戻し、相続人である娘さんに手渡している。娘さんが感謝したのは言うまでもないが、それにしても、だ、彼は取立ての電話にビクビクおびえながら、追い立てられるように働いてきたのだ。支払ういわれのない借金を支払うために、だ。そのせいで家族を失い、命を縮めたのだ。

なんのために彼は生きたことになるのだろう。彼は真面目なひとだった。生き別れになっていた娘さんも、とてもやさしいひとだった。どうしてこの一家が壊れなければならなかったのだろう。いったい、だれが悪いのだろう。考え込まざるをえない。