原発とテロ

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原発事故の恐ろしさを目の当たりにした体制側から、原発がテロで破壊されたら日本は破滅だ、原発テロの危険に備えよ、自衛隊を配備せよとの議論が高まっています。自衛隊で原発が守れるのでしょうか。守れるとしても、テロの危険がそれで取り除けるのでしょうか。

以下はそれに関連してとあるコミュに投稿した文章です。

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◯◯さん

先の投稿をする時に、9.11のことも考えたんです。別の文脈で、ですけど。
確かに、あんなに卑劣な犯行を実行するなんて、事前には考えてもいませんでした。

人間が理性的にのみ判断する動物なら、日本は米国に戦争を仕掛けなかったでしょうし、オウムのサリンテロもあり得ない話だしね。歴史を振り返れば他にも突発的な狂気に見える愚行には事欠きません。だから原発テロも、可能性が全くないかと問われれば、ないとは言えないです。

朝鮮半島で軍事衝突が勃発した場合、テロリストがいくつもの原発施設を同時に乗っ取って、格納容器爆破の脅しをかければ、日本政府は後方支援をあきらめるか、少なくとも遅延させるしかないでしょう。少人数で絶大な軍事効果を得ることができます。爆破の脅しでいいのだから、放射能をまき散らすのに比べれば、人道的な非難も最小限に抑えることができます。

ところで、そういったテロを仕掛ける側の立場に立てば、原発の防備が手厚くなれば別の標的を探せばいいわけです。高度なインフラの密集した日本や欧米諸国はテロの標的だらけです。新幹線などの鉄道、高速道路、発送電施設、水施設、化学工場、石油コンビナート、通信などなど、原発ほどではないにしろ、攻撃されたら致命的な施設はゴマンとあり、とても全部を守りきることはできません。

さて、私が別の文脈で考えた9.11テロの話ですが。

米国の航空機テロ対策をマイケル・ムーアが皮肉っていましたね。ライターの持ち込みが禁止されていないのはタバコ会社の圧力なのか、と。そうではないと私は思っています。航空機テロに備えて警備強化するのは、しょせんもぐらたたきにすぎないと米国政府が決断したのではないかと。それよりも徹底的な報復を実行することで、将来の抑止力を担保する方針を採用したのではないかと思うのです。

9.11テロの結果、アルカイダは何を得たのか。何の政治的成果も得ていません。片端から指導者を殺され、財政基盤を失い、拠点を追い出され、辺境でどうにか生き残っているだけです。あんな目にあうことを覚悟で米国にテロで挑みかかろうという組織は、まずしばらくは現れないでしょう。

巻き添えで2つの政府が滅ぼされました。1つはアルカイダを支援していたアフガンのタリバン政府。もう1つは全く無関係のイラク政府です。これで、アルカイダを支援しようとか支持するまともな政府はなくなりました。

イラク攻撃は近代国際法の観点からはむちゃくちゃなやり方で、とても支持できるものではありませんが、頭に血が上った米国は何をするか分からないという恐怖を反米国家に与え、少なくともテロで米国の鼻をあかそうなどと考える政府はなくなったと思います。

そういう意味で、私はイラク攻撃は野蛮な戦争であり、おびただしい市民を巻き添えにした間違った戦争だったと思っていますが、あのやり方が功を奏するのが国際社会の現状であり、そういう野蛮な時代に私たちはまだ生きていることをも、同時に見据えなければならないのだなあと悲しい気持ちでおります。

米国はそのあからさまな暴力でテロを押さえ込みましたが、それも一時しのぎでしかなく、米国のやり方が新たな反感とテロの揺りかごを生み出しており、いずれ第2のアルカイダが現れるだろうということも確かなようですし。

いざとなれば自分の命を捨てることさえ厭わないし、どんなに残虐なことだって嬉々として実行できるのが、人間という動物です。だから私たちの社会をテロから完全に防護することも、テロを根絶することもできないと思います。できることは、絶望した人間をテロに追い込むような環境をつくらないように努力すること。まあそれが難しいんですけどね。