http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1704031595&owner_id=12631570
原発事故で注目を集めている自然エネルギー。
ネットでこんな話が出回っています。
「千葉県の犬吠埼に風力発電機を並べたら、東京電力の発電量全部をまかなえる」
もともとは田中優さんがある対談で発言したことがきかっけです。
緊急会議 田中優×小林武史 (2) 「新しいエネルギーの未来」
エコレゾウェブ
http://www.eco-reso.jp/feature/love_checkenergy/20110319_4986.php
田中:東京電力が東京大学に委託して、関東地方沿岸50km以内に風車を建てたとしたら、どれだけ発電するかを調べたそうです。そうしたら出てきたデータが「2005年の東京電力の年間電力販売量とほぼ同じ電力を作れます」というものだった。
対して、田中さんの論に対する批判もかなり流れています。
ところで、どうやら田中さん支持派(自然エネルギー派)は、肝心の元論文を読んでいないようです。一方、田中さん批判派は、田中さんが言いたいことを全然わかっていない。お互いが勝手に頓珍漢なことを言い合っていても始まらないので、ここでちょっと交通整理をしておこうと思いました。
■元論文は「千葉県の犬吠埼に風力発電機を並べたら、東京電力の発電量全部をまかなえる」と書いていない。
まず、元論文はこちら。
地理情報システムを利用した洋上風力賦存量の評価
石原孟
電気評論2010 臨時増刊号
http://windeng.t.u-tokyo.ac.jp/ishihara/article/2010-2.pdf
この論文には、「千葉県の犬吠埼に、東京電力の発電量全部をまかなえるほどの風力発電機は、並べられない」と書いてあるのです。以下にこの論文の要点だけ抜粋します。
東京湾を除く関東地方沿岸50km以内の洋上全域に風車を建てた場合:
286.54 TWh/年の電気が作れる。
これは東電の2005年の年間電力販売量288.7 TWh/年とほぼ同じ。
しかし、この海域の大部分は「水深が500m」もあり、利用はほぼ不可能。
ただし、浮体式基礎(風車を洋上に浮かせる)を使い、水深500m以内の領域にまで拡げた場合
133.42 TWh/年の電気が作れる。
これは東電の2005年の年間電力販売量の46.02%。
現実的には更に、100.59 TWh/年にまで落ちる(漁業等への影響により、使えない海域があるため)
■田中優さんは「千葉県の犬吠埼に風力発電機を並べて、東京電力の発電量全部をまかなおう」とは言っていない。
田中さんは、「自然エネルギーの大きさはバカにできないよ」と言っているのです。いまは家庭用ぐらいしか使われていない自然エネルギー発電ですが、これで産業用の電気をまかなおうという話は、けっして突拍子もない、雲をつかむような話ではないよと言いたいのです。そのために、発電量データを示しているのです。「銚子沖だけで発電しよう」なんて、言っていません。
でも、あちこちに分散して、仮に10%でも発電できたら、すごいじゃないですか。
田中さんは他にも、
「単純計算では、日本の土地面積の5%を太陽光に利用すれば日本全国のエネルギーを賄えます」
「北海道の風力発電だけで日本の電力を賄えるポテンシャルがあります」
など発言しています。
これらに対して「日本の土地面積の5%も太陽光に利用できるわけないじゃん」とか、「北海道の風力発電で作った電気を、東京までもってくるのかよ」とか、こういう直対応的な批判は、意味がありません。田中さんはすべての電気を太陽光でまかなおうとか、北海道でつくろうなどと言っていないからです。
■「あらゆる可能性を探ろう」というのが田中さんの言いたいことです。
田中さんはこう言いたいのです。
「北海道の風力発電だけで日本の電力を賄えるポテンシャルがあります」
「その一部を利用するだけでも、かなりのことができますよ」
北海道の風力発電の可能性について、元データ
環境省:平成21年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査調査報告書http://www.env.go.jp/earth/report/h22-02/index.html
あらゆる可能性を探ろうというのが、田中さんの言いたいことです。
外国の地熱発電所は、日本の技術を使っています。日本は世界一の技術を持っているのに、国内では地熱発電が振るわない。法律の壁とか、せっかく発電しても送電線を持っているのが電力会社だから送電できないなどの、人為的な障壁があるからです。
そこで、田中さんは提案します。
では、人為的な障壁をとっぱらおう。
そして送電線を国有化して、誰でも送電できて、余った電気は電力会社に売れるようにしよう。(あまり知られていないけど、戦前は自治体とか中小電気会社が電線を所有していました。電力会社の所有になったのは、戦後のことです。)
そうすれば、個人も自治体も企業も発電に参入してくる。
すべての家の屋根に、太陽光パネルを乗っける。自治会が山の上や海岸などに発電用地を設けて、そこに「おらが風車」を備える。自治会単位で小規模水力発電所をつくる。離島では波力発電もやる。生ゴミバイオマス発電、天然ガス発電、コジェネを利用する。省電力家電を普及する。……などなど。
これらの技術はすべて実用レベルに達しています。大量生産すればコストはぐんと下がります。いま自然エネルギーの技術開発を担っているのは中小企業ですが、儲かるとなれば大企業も参入してくるのは、風車の例で明らかです。
一般会計だけで年間に2400億円も支出している原子力関連予算の半分でも自然エネルギー開発に回せば、相当のことができるはずです。すべてを自然エネルギーでまかなうのは無理かも知れませんが、原発が担っている3割程度なら可能ではないでしょうか。自然エネルギーで半分以上発電している国があるぐらいなんだから。
原発頼みが危険であることが分かったんだから、向かう先はこの方向しかないように思うのですがねえ。