キセノンと再臨界の話

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■臨界とは

ウランに中性子をぶつけると、核分裂して熱を出します。核分裂のときに中性子が出て、次のウランにぶつかるとまた核分裂します。1個のウランが核分裂して、次の反応がちょうど一個なら、連鎖反応が安定的に続きます。この状態を臨界といいます。

1個のウランが核分裂しても、次の反応が1個以下なら、連鎖反応はすぐに止まってしまいます。
普通、こういうのを臨界とは言いません。臨界とは連鎖的核分裂反応が継続することですから。でも、連鎖反応が続かなくても臨界と表現する人もいます。その場合、臨界の定義は何なのかなあ。

1個のウランが分裂して、1個以上のウランを核分裂させると、反応が連鎖的に拡大します。アクセルを踏みっぱなしの車みたいなもので、どんどん反応が加速します。これが暴走です。極端な暴走は、核爆発といいます。

■臨界の条件

原発燃料のウランはわざと不純物を多くして、連鎖反応が起きにくくして、暴走できないようにしてあります(だから原発は核爆発しません)。

反対に水は中性子の速度を落としてウランにぶつかりやすくする働きをしています。燃料棒どうしは、連鎖反応の起きやすい距離にセットされています。

この条件が崩れたら、とりわけ水がなくなったら、連鎖反応はすぐに止まってしまいます。

■再臨界したらどうなるのか

再臨界すると膨大な放射性物質を放出しながら熱を発します。いま圧力容器内にある水などあっというまに蒸発してしまいます。水がなくなると、連鎖反応できなくて止まります。ただし、放置すると圧力容器が壊れるので、またまたベントしなければならず、すると3月の事態の再現ですから、周辺地域はえらいことになります。

■いまは再臨界しているのか

上に書いたようなことが起きていないし、原子炉の温度が安定しているので、再臨界していないと思われます。

可能性は小さいけど、小規模な反応はあるのかも知れません。が、反応があったとしても、連鎖反応を続ける条件が失われているので、すぐに止まってしまうでしょう。

■どうしてキセノンが出るのか

いま述べたような、臨界に至らない程度の小さな核反応が起きているのかも知れません。

別の可能性としては、ウランの自然崩壊があります。ウランが勝手に崩壊してキセノンとストロンチウムに分裂している可能性があります。

他には測定ミスの可能性も捨てきれません。

炉内の様子がわからないので、いまはどれとも特定できないのですが、東電は一番悪い可能性に備えてホウ素を投入しました。ホウ素は中性子がウランにぶつかる前に、中性子を吸収してしまいます。連鎖反応を止める働きをするのです。