サルでも分かる安倍さん改憲論

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姫路の労働者9条の会のために、パンフを作成中です。

サルでも分かる安倍さん改憲論──バカバカしさ丸わかりパンフ

・憲法第9条があるから拉致事件が起きた?
・アメリカを狙う弾道ミサイルを迎撃すべき?
・中国の軍拡に対抗するには憲法改正が必要?

こういった疑問に答えます。中身はこれまでmixiに書いてきたものに、ちょっと手を加えただけです。

■はじめに

安倍さんが元気いいです。
自民党は大勝した、維新という味方もついた。
いつでも憲法を変えられるぞ、と。
で、国防軍を持つんだそうですよ。
軍隊を持たないなんて「みっともない」んだそうですよ。

なんでそういうのか、安倍さんはいろんな理由をあげています。
憲法第9条があるから拉致事件を防げなかったとか、
憲法第9条のせいで「平和」しか言えないから北朝鮮になめられるんだとか。
そういう安倍さんの話に、「そうだよなあ」と納得して、憲法を変えた方がいいだろうなと思う人が増えているそうです。それは違うぞと思っても、何がどう違うのか、うまく説明できなくて困っている人もいます。
このパンフレットは、そういう人のために作りました。

「安倍さんの言うこと、少しぐらいは正しいところもあるんじゃないかな」と思っているあなた、「そうは思いたくないけど、どこが間違っているのかよくからない」あなたも、これを読めば安倍さんのトンチキぶりが手に取るようにわかるでしょう。

■基本的人権を公式に否定した改憲案

本題にはいる前に、安倍さんの改憲案というのがどういうものか、ちょっとおさらいしておきましょう。

憲法のむずかしい条文が出てくるので、そういうのは苦手だという方は、ここを飛ばしてもらってもかまいません。

安倍さんの憲法改悪プランは、たとえばつぎの条文ぜんぶ、まるっと削除するんだそうです。

第10章 最高法規
第97条
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

これ、全部なくすんですってよ、安倍さんは。この条文は、基本的人権を制限するような改正をさせないためのものです。ということだと、こいつをばっさり切り捨てたので、将来自民党は人権をいまよりもさらに制限することを考えている……ってことですよね。

それもそのはず、下の引用を見てください。自民党の「憲法改正Q&A」の一部なんですが、「天賦人権説(てんぷじんけんせつ)」にもとづく規定を改めたと、はっきり書いてあります。

また、権利は、共同体の歴史、伝統、文化の中で徐々に生成されてきたものです。したがって、人権規定も、我が国の歴史、文化、伝統を踏まえたものであることも必要だと考えます。現行憲法の規定の中には、西欧の天賦人権説に基づいて規定されていると思われるものが散見されることから、こうした規定は改める必要があると考えました。
(自民党「憲法改正Q&A」より抜粋)

「天賦人権説」とは、「人は生まれながらにして平等であり、誰の生命も同じように大切であって、みんなしあわせに生きる権利がある」という考え方でしたね。この考え方が基本的人権のおおもとになっていることを、皆さんご存じですよね。

これはヨーロッパ式の考えだからダメなんだそうです。日本らしくないんだそうです。自民党は、「人類普遍の原理である基本的人権」を、認めないんです! 否定してしまったんです! いったい国連憲章や世界人権宣言を、どうするつもりなんでしょうねえ。こんな憲法にされてしまったら、人権なんてあってないようなものです。

人権否定と並んで大きいのが、憲法第9条の改悪です。
「外国に攻められたら国民を守るのは当たり前」という意見の人は多いでしょう。

でも、安倍さんのいう国防軍とは、外国の侵略から国民を守るというのではないのです。だって、それだけのことなら、いまの憲法は否定していないというのが、自民党の言い分でしょ? 外国の侵略から日本を守るのが自衛隊で、それを憲法第9条は認めていると、これまでずっと自民党は言い続けてきました。
だから、自民党にとって、国を守るだけなら憲法を変える必要はないはずです。それだけじゃないから、憲法第9条が邪魔なんです。

災害派遣をしたり国を守ること以外に、安倍さんは自衛隊に何をさせたいのでしょう。決まってます。外国に出かけていって戦争したいのです。そのことは、あとで述べます。

憲法改悪案の中身はこのくらいにして、ここからは、安倍さんのトンチキぶりがよくわかるお話です。

■憲法第9条があるから拉致事件が起きた?──安倍さんのヨタ話(その1)

安倍さんは自民党の「憲法改正推進本部」でつぎのように述べました。

「こういう憲法でなければ、横田めぐみさんを守れたかもしれない」

そりゃ、憲法第9条があるせいで拉致事件が起こったのなら、そんな憲法なら変えた方がいいかも知れません。だけど本当にそうなのか、確かめましょう。

北朝鮮が拉致したのは、日本人だけではありません。判明しているだけでも、韓国人、ラオス人、ロシア人、レバノン人、フランス人、ベネズエラ人などなど……世界中の人間を、みさかいなく拉致しているのです。ベネズエラ人の場合、拉致されたのはベネズエラ共産党員でした。敵も味方も一切おかまいなし、というのが北朝鮮の拉致事件です。韓国人にいたっては、何千人も拉致されっぱなしです。

さてこれら被害国のうち、日本以外に第9条のような憲法を持った国が、ひとつでもあるのでしょうか? ありませんね。どの国も大きな軍隊を持っています。

持っているだけではありません。韓国はベトナムで戦い、ロシアはアフガンなどで戦争し、フランスはいまもマリ共和国、イラク、アフガンなどに軍隊を送っています。

そういった国でも、拉致を防げなかったんです。それらの国が安倍さんの話を聞いたら、「軍隊を持っていたら拉致を防げるなんて、お気楽なことを言ってくれるな」と憤慨するのではないでしょうか。

ちょっと調べれば間違いだとわかることを、調べもしないでとくとくと語るおっちょこちょいが、あろうことか、総理大臣です。

しかも安倍さんが間違っていると誰も気づかないのが、自民党という政党です。

こんなあほくさい政党に憲法をいじる資格なんか、あるはずがないじゃないですか。

■憲法を変えたらハイジャックされても安心?──安倍さんのヨタ話(その2)

安倍さんは拉致についてデタラメを述べたあと、こう続けました。1977年に旧西独のルフトハンザ機がテロリストにハイジャックされた事件に触れ、「西ドイツは実行犯を射殺して人質を奪還し、世界から喝采された。西ドイツは何度も憲法改正をしてきたからできた」と。

だったらさあ、安倍さん、西ドイツよりも古い、1970年に起きた、「瀬戸内シージャック事件」の立場はどうなるの? 広島市の宇品港で、ライフルで武装した犯人が客船を乗っ取ったけれど、大阪府警の狙撃隊が犯人を射殺して乗客を救出した事件です。西ドイツの事件より7年も前に、日本で起きた事件です。

憲法変えなくても、テロリストの射殺ぐらいは出来るじゃないですか。これについても、自民党から「総理、それ違います」という声はついに起きませんでした。基本的事実を間違えたら、そこから出てくる結論である「改憲」も間違いに決まっています。

■憲法を変えなければ米軍を助けられない?──安倍さんのヨタ話(その3に行く前に)

安倍さんは憲法解釈を変えて、米軍を助けたいのだそうです。

つぎに述べる4つのことを実現しなければならないのだといいます。

  1. 公海上で攻撃されたアメリカ艦船を、海上自衛隊が守る
  2. アメリカを狙う弾道ミサイルを、自衛隊が迎撃して助ける
  3. PKO(国連平和維持活動)参加中に攻撃された他国軍を、自衛隊が助ける
  4. 戦闘地域で戦う他国の軍隊を、自衛隊が後方支援する

これがなんで大切なのかよくわかりませんが、安倍さんは大切なのだといいます。
テレビなんかでも色々というので、有権者のなかにはつぎのように考える人が増えているようです。

「アメリカは同盟国なんだし、目の前で攻撃されてたら、そりゃ助けるだろ」
「アメリカ人を殺すためにミサイルが頭の上を飛んでいくのに、だまって指をくわえて見てるなんて、それはないよな」
「よその軍隊がなぶり殺しにあいそうなのに、知らん顔はできないよ」
「そういった当たり前のことができないんじゃ、憲法変えるほうがいいかもな」

こういった説明はわかりやすいし、うっかり聞いていたら納得してしまいますよね。でも、これまでの例で分かるとおり、安倍さんも自民党もまるで分かっちゃいないんです。ここからは、そういう話です。

■公海上で攻撃されたアメリカ艦船を、海上自衛隊が守る?──安倍さんのヨタ話(その3)

これ、絶対アメリカに相談してませんよ。相談したら、アメリカに怒鳴りつけられますもん。だって、自分たちを守ってくれとアメリカ海軍が他人に頼んだことなんて、歴史上、一度もないんですから。それが米海軍の誇りなんですから。アメリカ海軍なら、きっとつぎのように言いますね、

「自分のことぐらい、自分で守るわい! 自衛隊に助けて貰う? バカにするな! 米第七艦隊は、世界最大最強の空母機動艦隊なんだぞ! もしも我々が困るような相手がいるとしてだ、そんな敵を相手に、自衛隊に何ができるというのか。寝言は寝てから言え!」

自民党のことをこっちが心配してあげる必要はないけど、誇り高いアメリカ海軍のプライドを傷つけたら、それこそ「同盟関係」にヒビが入るのではないですかねえ。安倍さんも自民党も、本当のところ、軍事的なことなんか何も分かっちゃいないんですよ。そんな人たちが唱える憲法改正なんて、何かの冗談としか思えないです。

■アメリカを狙う弾道ミサイルを、自衛隊が迎撃して助ける?──安倍さんのヨタ話(その4)

安倍さん、あのね、米国に向けて飛んでいくミサイルなんか、自衛隊には落とせません。だって米国を狙うミサイルは、日本上空を通過しないんですから。

地球儀を上から見ればわかります。アメリカへの最短距離を通る「北朝鮮」のミサイルは、北に向かうんです。西海岸を狙うなら、サハリン沖からアラスカに抜けます。東海岸を狙うなら、シベリア上空を通って北極とカナダの上を飛んでいきます。だから、自衛隊が迎撃しようにもできません。

アメリカに向かうミサイルが日本上空を通るなんて、ありもしない事態に対して、できもしない備えをしようというのが、安倍さんです。あほちゃうかと。

こんな大事なことを、よく知りもしないで言い放つような総理が自信満々に唱える憲法改正……ほら、だんだん不安になりません?

■PKO参加中に攻撃された他国軍を、自衛隊が助ける?──安倍さんのヨタ話 (その5)

自民党は、自衛隊を海外に送り出すことに熱心です。でも行かせっぱなしです。いつも観閲式で「自衛隊のみなさん、ごくろうさまです」なんて言っていますが、自衛隊が行った先でどんな仕事をしているのか、どんな苦労をしているのか、そんなことにちっとも興味がないのです。

自民党の総理も大臣も、ヨーロッパにしょっちゅう外遊していますが、そのついでに中東のゴラン高原にいた自衛隊を慰問に行こうなんて人は、ついに現れませんでした。

威勢のよいことばかり言わないで、ゴラン高原へ行ってゴラン、と言いたかったけど、自衛隊はもう帰ってきました。

さて、つまらんダジャレはおいといて、PKOの話です。

PKO部隊が襲撃され、重武装の他国軍でさえ防衛がおぼつかないような事態になったとしましょう。
そういうとき、他国の軍隊はどうするのか? まずは自分の防衛に備えるのが、世界の軍隊の常識です。それは自衛隊だけではなく、どの国もそうです。

どうしても支援が必要なときは、あらかじめその任務を与えられている予備部隊が出動することになっていますが、そういうケースは一度も報告されていません。

アフガンで戦っているISAF(国際治安支援部隊)の、米軍と他国軍の共同作戦の中で、たとえば英軍のために米軍が支援空爆するという事例なら、あります。しかし、他国軍が危ないから別の国が助けに行った事例なんか、聞いたことがありません。そんな事例があるというなら、安倍さんにぜひ教えていただきたい。実例はおそらく出せないでしょう。

PKO部隊は軍隊だけでなく文民も含みますし、そもそも勝ち戦を目的にしていません。だから危なくなれば、無理しないで撤退するのです。事実、攻撃されたからという理由で軍隊とスタッフを引き上げて帰ってしまった国が、いくつもあります。安倍さんがいうようなことが起きたためしは、PKO史上一度もありません。

PKOに参加する自衛隊員は、正当防衛以外の武器使用を禁じられています。安倍さんたちに言わせると、これが「戦場の実態を無視したもので、平和憲法が隊員の手を縛って、むしろ危険に陥らせている」のだそうです。

あの~、武器の使用を「兵士個人または部隊の一部が危険に陥った場合の自衛戦闘」に限っているのは日本の憲法ではなく、国連が決めた『平和維持活動マニュアル』なんですけど。ここでも安倍さんは、現場を知らないのに勝手に空想して、とんちんかんなことを語っているのです。

現場を知らないアホな上司が立てたプランに苦労させられた経験て、ありませんか? 安倍さんのやっているのは、要するに、そういうことなんです。そんなプラン、つぶせるうちにつぶしておくのが利口というものです。

■戦闘地域で戦う他国の軍隊を、自衛隊が後方支援する?

安倍さんにしては珍しく、これはたしかに重大な憲法問題です。

後方支援は「集団的自衛権の行使にあたらない」ので「憲法が禁ずるものではない」といって、イラクやアフガン沖でやらせてきたのが、自民党・公明党政府でした。ところが航空自衛隊がイラクで後方支援したことに対して違憲判決が出ました。それで安倍さんはカリカリきているのです。

なんで怒るのでしょう。

大量破壊兵器を口実に戦争を仕掛けたけど、そんなものどこにもなかったじゃないですか。あれは間違った戦争だったと、アメリカ自身が認めているじゃないですか。なのに、そんな戦争で、何の罪もないイラク市民が16万人も殺されたといわれています。人間のすることだから間違いはあるでしょうが、戦争という究極の暴力行為は、取り返しのつかない過ちをもたらすのです。

そんな戦争に、愚かしくも日本政府は協力して自衛隊に出動命令を下したのでした。「その命令は間違いだ」と正しい判決が下ったのは、憲法のおかげです。間違った戦争からいち早く手を引けたのは、憲法のおかげじゃないですか。これからも、憲法にはそういった役割を存分に果たして貰わなければなりません。

間違って起こした残虐な戦争に協力したことを恥じもせず、自分たちの間違いを棚に上げて、憲法を悪し様にののしるなんて、安倍さんはこれからも間違いを繰り返したいのでしょうか。そんなことを考えている人の改憲論が、ろくなものであるはずがありません。

■安倍さんは東アジアを危なくしている

(1) 軍事常識を破らせた安倍さん

せんだって、中国の海軍艦艇が、自衛艦に向けて射撃用のレーダーを照射する事件が起きました。射撃用のレーダーを向けるというのは「撃つぞ」という脅しだ、とんでもないことだという論調でテレビ・新聞は一色でした。

たしかに危ない話ですが、こういう事態を引き起こしたのが安倍さんであることは、あまり知られていません。安倍さんが総理になるまで、海上自衛隊に対して、中国艦船との距離は28kmを保つようにと指示されていました。ところが安倍内閣が出来るやいなや、この距離を3kmにしてしまったのです。これがそもそも問題の発端でした。

安倍さんは国会で語りました。
「前政権下においては、過度に軋轢(あつれき)を恐れるあまり、わが国の領土・領海・領海を侵す行為に対し、当然行われるべき警戒・警備についても、その手法に極度の縛りがかけられていたと私は承知しています。このことは相手方に対して誤ったメッセージを送ることにもなり、かえって不測の事態を招く結果になることすらあると私は判断したわけであります」

でも、3kmというのは、異常接近なんです。近代艦船は一発でも当たればたちまち燃え上がるアルミ合金で作られているのですから、昔の鉄の軍艦のように、大砲をドッカンドッカン撃ち合うことを想定していません。

近代艦船は、相手ミサイルが飛んできても回避することを前提に、互いに遠くから攻撃し合うことを想定しているのです。攻撃されたら回避できない3kmの至近距離に近づくなど、自衛艦の行動は軍事常識を逸しています。

(2) 本当に危なかった安倍さんの決断

安倍さんは「強気に出れば相手が引き下がる」という思惑で、「極度の縛り」をはずして、28kmを3kmにしたのでした。

ところが中国側から自衛艦の行動を見れば、挑発と受け止めます。そこで中国海軍は「あっちへいけ」とアピールしました。それがレーダー照射です。こちらが相手の嫌がることをしたのに対し、相手はこちらの嫌がることをしたのです。どちらもやり過ぎですけどね。

相手を挑発して逸脱行為を引出し、武力反撃の口実にするのは、戦争をしたい側の常套手段です。日本政府がそこまで目論んでいるとは思えませんが、それくらい危ないことをしたということです。

安倍さんの軽はずみな決定が、これは自衛隊の挑発ではないかと「相手方に対して誤ったメッセージを送ることになり、かえって不測の事態を招く」結果となったのです。本当に危なっかしくて、こんな人に憲法を変えさせたら、たまったものではありません。

■もう少しくわしくみてみますが、読み飛ばしてもいいですよ

(1) 中国との話し合いを裏切った安倍さん

民主党政権が28kmの距離を取れと指示した背景に、それ以前からの中国との協議があったことは、あまり報道されません。それは2011年の「日本中国政経懇談会」です。

東シナ海の緊張緩和を目的として、日中の防衛関係者が忌憚なく話し合う「日本中国政経懇談会」という会合が30年以上も地道に続けられています。

その2011年会合で、自衛艦が公海上で1海里(1.8km)まで接近して監視していることに対し、中国側から「そういう異常接近をすると、中国も航空機を近接させるなどの対抗措置を執らなければならない」と苦情が寄せられました。“接近しあうのはお互いのためにならないから、どちらも止めようじゃないか”というメッセージです。

民主党政権は、これに応えることで、尖閣でこじれた話し合いの契機をさぐろうとしたのでしょう。

中国海軍の主張には一理あります。たとえば米空母艦隊に許可なく3kmも近接したら、レーダー照射程度ではすみません。飛行機が空母にまっすぐ向かってきたという理由で敵の攻撃と勘違いして、米軍駆逐艦がイランの民間旅客機をミサイル攻撃して撃墜した事件がありましたね。米海軍は、空母を中心になんと最長400kmに及ぶ防衛圏を空、海上、海中に立体的に設け、その距離に応じて段階的に責任範囲と使用武器を設定しているのです。

こういった“海の軍事秩序”を無視した自衛艦の大胆な行動は、「中国海軍をなめている」ととられても仕方のないものですから、やられた方は「なめられっぱなしでたまるか」となるわけです。

そういった武官の特性を考慮しないで、現場を知らない勇ましい政治家が「やれ!やれ!」とけしかけると、ろくなことにならないというのが、世界史の教訓です。

(2) 中国の立場と日本の立場

中国の軍備増強は、日本にとっては不気味なことです。が、中国の石油輸入量はとっくに日本を追い抜いているので、日本が海上の安全を保持したいというなら、中国だって同じことです。あちらだって、日本やアメリカの都合で海上輸送を妨害されやしないか、不安なのです。それは中国にとって死活問題ですから、戦って負けないだけの力を持ちたいわけです。

中国から見れば、圧倒的に強大な日米海上戦力に少しばかり追いつこうとすれば大騒ぎしたり、そのうえ尖閣問題を絡める姿勢は、日本の身勝手な言いがかりと見えるので、問題を複雑にするばかりです。

なので、いま必要なのは互いの意図を明確にして不測の事態を防ぐ、「信頼醸成措置」なんです。ところが安倍さんのやっていることは、対抗意識を丸出しにして疑心暗鬼をつのらせることばかり。

さてしも、中国海軍は、さきほど述べた米海軍の立体的防御圏システムを参考にして、今後は武備を固めるそうです。“ひとつ間違えたら一触即発”の危険性が、さらに高まったことになります。安倍さんの子供じみたつまらん挑発行為が中国側の過剰反応を引き起こし、火種をますます大きくしたわけで、ほんま、わからん奴は黙っとれ!と一喝したいところです。

こんな内閣が唱える改憲がどれほど危ういか、もうこれ以上語る必要はないでしょう。

■終わりに

このパンフでは、憲法理念は最小限にしてして、事実関係だけを通して安倍さんの言い分のおかしさというかアホくささを紹介してきました。まだまだタネはつきませんが、このへんにしておきます。

ここに書いたようなことは、どれも新聞やネットで調べのつくものばかりです。少し調べれば分かるはずなのに、メディアは報道しようとしません。なぜか知りませんが、安倍さん側の言い分を垂れ流すばかりです。

そうしたものだけを読んだり見たりしていると、なんだか安倍さんの言うことが正しいように思えてきてしまうでしょう。そこで改憲世論が強まっているのです。

けれども、安倍さん側の言い分なんて、この程度のものなんです。こんな人たちにしてやられるようでは、まことに情けない。これを読んで少しでも「なるほど!」「ほほお、そうやったんか」と思っていただけましたら、そのことを周りの人たちに語ってください。

改憲論を酒の肴に、アホにしてやりましょう。きっと楽しいですよ。
しかもそのことが、憲法を守ることにつながるんです。ますます楽しいじゃないですか。
みなさん、憲法談義をひろげましょう!
そして何が何でも、改憲をくいとめようじゃありませんか!