「教科書書き換えに抗議する県民集会」の意味

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来る9月29日、沖縄で「教科書書き換えに抗議する県民集会」が開かれます。

教科書の書き換えというのは、「沖縄の住民多数が軍の命令で集団自決した」という内容から「軍の命令」という部分がなくされる問題です。これは文科省の検定意見によるもので、来期の教科書から変えられる予定です。

軍命令がなかったのなら、なんで県民は「自決」したのだ、死ななくてもいいのに勝手に死んだとでもいうのか! 沖縄県民は怒っています。

文科省が検定意見をつけたのは、「この問題が裁判で係属中だから」、という理由でした。裁判とは作家大江健三郎さんに対する名誉毀損裁判です。大江さんが『沖縄ノート』(岩波新書)に「軍の命令があった」と書いたのが、「命令した部隊長とその遺族の名誉を傷つけた」というものです。

しかしですね、大江健三郎さんの「沖縄ノート」には

(1) 自決命令の具体的記述はなく、
(2) 日本軍の隊長についての言及もなく、
(3) 隊長が自決命令を発したとも書いてありません。

原告は「『沖縄戦史』を大江さんが引用している。その本には隊長の個人名が特定されているから同罪だ」と苦しい理屈を述べています。が、大江さんは『沖縄戦史』引用部分からも、個人名を慎重に取り除いているのです。話にならない裁判なのです。

しかも原告側はこんなことまで言います。

「(自決命令を下したとされる)赤松嘉次大尉をイスラエル法廷でユダヤ人集団殺戮の犯人として処刑されたアイヒマンになぞらえ、赤松大尉が、極悪非道の冷血漢として認識されているアイヒマンと同様、人民裁判によって絞首刑にされるべき犯罪者であるという最大限の侮辱ないし人格非難を行う意見論評である」

こんなこと、大江さんはどこにも書いていません。原告の言い分はほとんど病的で、その扇情的な主張こそがナチスを想起させます。

彼らはどうして大江さんを訴えたのでしょう。大江さんがノーベル賞作家で、有名人で、「9条の会」代表だからだと思います。南京事件の問題で本多勝一さんを名誉毀損で訴え、南京事件の教科書記述を後退させたのと同じ手法です。文科省-産経新聞-「つくる会」系右翼文化人の連携プレーです。

彼らの目標は、一沖縄についての書き換えにとどまらず、全教科書の「つくる会教科書化」であり、向かう先は戦争肯定、改憲です。これは沖縄県だけの問題ではなく、憲法にかかわる全国民の問題であると思います。

大江さんたちは「名誉毀損の構成要件を満たしていない」というだけで裁判に勝てるのではないかと思います。しかし大江さんたちはこの裁判を「歴史の偽造」であり「政治的意図を持った裁判」だととらえ、あえて「軍命令の有無」についても受けて立っています。立派な態度です。

現地沖縄では激しい怒りが渦巻いています。集会主催者には「県議会」が名を連ねています。自民党から共産党まで、スクラムを組んでいるのです。県婦人連合会、県経営者協会、連合沖縄など、水と油みたいな団体が統一主宰者です。びっくりしますよね。

集会には県知事が参加を表明し、県職員にも参加を呼びかけています。各地の自治体の首長、教育長、もちろん議長も参加します。 専門学校の中には休校にして全学生に参加を呼びかけているところもあります。文字通り、全県民の取り組みとして広がっています。

ところが本土ではほとんど関心がないかに見えるので、沖縄の人々はやきもきしているようです。沖縄だけの問題ではありません。憲法を大切にしたいと考えている人すべてにかかわる問題です。各地でなんでもいいから、連帯の行動をしませんか。