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法律が不備なばかりに、サラ金の高利に泣いてきた人は数知れない。法の不備をよいことに、うまく利用してボロもうけをたくらんだのがサラ金や商工ローン経営者であり、とんでもない高利を課して、客を自殺や一家離散に追いやってきた。
そういった連中にうまく取り入ってべらぼうに稼いでいた法匪の1人が、いま大阪市長をしている橋下徹であることは、これまで何度か書いた。
じつは、戦争さえなければ、そういった連中はとっくの昔に駆逐されていたかも知れないことを、最近ある資料によって知った。同時に、戦争前の庶民生活について、私はほとんど何も知らないことを痛感した。
■昭和11年の利息制限法改正の動き
その史料とは、「利息制限法改正に関する件」(昭和11年12月24日)。
昭和11年といえば、2.26事件など物情騒然たる時代だった。翌年は日本軍が上海事変を起こし、南京へ攻め込んで大虐殺を起こした。そういった政治上の激動の陰で、庶民は高利貸しの被害に泣いていたようなのだ。高利貸し被害の根絶をめざして司法省が作成したのが「利息制限法改正案」。作られたけれど、ついに国会に出されず、成立しなかった法律だ。
資料は、司法省の案に、銀行局の立場から注文を付けたものだ。そこに、当時の役人の良心がほとばしっているように思えた。こんなことが書いてある。
いゆる庶民金融の現状を見るに、その金利は著しく高利に上っており、一般大衆や庶民階級の金融上の利益保護の点から、見過ごすことができない。(末尾に原文)
戦前、個人に金を貸すのは質屋ぐらいしかなかったと解説されているが、間違いだった。いわゆるサラ金は昭和30年代に現れ、昭和40年代にその害悪が明らかになったとされているが、そうではなかった。戦前から「庶民金融」が存在し、金融当局ですらその弊害を知って対策に乗り出していたのだ。
驚いたのは第5条、第6条の条文だ。
法律を知らないとか、世間知らずとか、ともかくいま困っているなど、人の弱みにつけこんで高利で貸し付けたら懲役刑だ。
売買などの形を偽装していても、貸付とみなす。(末尾に原文)
うわ、こんな法律が昔からあれば、サラ金とのたたかいがどれほど進んだだろうか。裁判所からこういった判決を取るために、10年以上かかったのだ。
■戦争のために成立しなかったことが悔やまれる
明治時代にできた『利息制限法』は、庶民を高利から守るについて、「裁判上の権利」とした。
裁判しなければ、客は自分を守れなかった。
昭和11年改正案は、第2条でそれを「法律上の権利」だと明記した。裁判所の判断など必要などなく、高利は法的に無効だというのだ。
これなんかも、戦後のサラ金裁判で裁判所にそのことを認めさせることができたのは平成になってからだよ。
この法案が日の目を見なかったことによって、しなくてもよい苦労をした人、支払わなくてもよい利息を支払い続けた人は何千万人にものぼる。自殺した人や財産や家族をを失ったひとも、何十万人もいるはずだ。
昭和11年にこの法案が提出できなかったのは、国がそれどころではなくなったからだ。むろん、戦争を始めたからである。惜しいことをしたなあ、戦争さえなければ……とつくづく思わざるを得ない。
ところで話はこれで終わらない。日本軍慰安婦の話に繋がる(橋下はここにも絡んでるなあ)。
■従軍慰安婦問題と高利貸し
従軍慰安婦問題で出てくる例の前借金だ。
契約書を見ると「年利2割」と書いてあるが、これは明らかに『明治利息制限法』違反だ。
当時の『利息制限法』は元金100円未満で15%
元金100円~1000円未満で12%
元金1000円以上で10%だ。
年率20%などという法律違反の前借金契約を官権が容認してしまったのだから、その点からみても慰安婦制度は違法・不当なものだったことになる。
しっかし、慰安婦問題では、またも橋下か、と言う気がする。高利貸しのことも、慰安婦のことも、私は橋下と無関係に関わってきた。なのに、奴はいつでも私と正反対の立場からそこに絡んでくるのだ。他には光市殺人事件のことでも、奴を批判した。なんか、あいつとよほど相性が悪いんだなあ。
■利息制限法改正に関する資料
(秘)利息制限法改正ニ関スル件
昭和11年12月24日
大蔵省銀行局調利息制限法改正案(原文)
所謂庶民金融の現状を見るに其金利は著しく高利に上り居り現下金融の一般大衆及び庶民階級の金融上の利益保護の点より見て看過を許さざるものあり。
第五条
人の知慮浅薄、無経験又緊急なる窮迫の状態に乗じ財産上著しく不相当なる条件を以て金銭その他の代替物の貸付を為したる者は一年以下の懲役又は千円以下の罰金に処す。
常習として前項の罪を為したる者は三年以下の懲役又は三千円以下の罰金に処す。第六条
本法の規定は譲渡担保、買戻約款付売買、手形の割引又は売買等如何なる名義を以てするを問わず取引上消費貸借と同一の効果を有するものに付これを適用す。国立公文書館・アジア歴史資料センター
https://www.jacar.archives.go.jp/aj/meta/reference
レファレンスコード A09050482600