朝鮮人強制連行についての基本認識

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ツイッター世界は広い。中にはとんでもない差別者がいることを知った。ツイートのほとんどが、在日コリアンに対する呪詛なのだ。ぞっとした。ミクシィにもそういうコミュがいくつもある。

それほどではなくても、「在日韓国人・朝鮮人は強制連行されてきた人々の子孫ではない」という言説がネットに絶えない。

何でいま、という気もするが、そのことについて考えてみた。長いので、できるだけ小分けにした。興味のある方は、ゆっくりと読んで考えて下さい。

【1】外国人参政権と強制連行の関係

強制連行なんかなかったというのは、おおかたは、在日外国人の地方参政権に反対する立場からの発言だ。永住資格を得た在日外国人に対して地方参政権を与えるのは間違いだというのだ。その理由として、強制連行された朝鮮人はとっくに帰ってしまったじゃないかと。

なんだか変な議論だ。地方参政権は、在日コリアンだけを対象としたものではない。永住資格を得た外国人すべてが対象だ。米国籍や中国籍、ベトナム籍の人も対象となる。在日コリアンの父祖の出自と、これらの人たちと、どんな関係があるというのだろうか。

永住資格をもった在日アメリカ人に、朝鮮人の強制連行はウソだから、あなたに選挙権与えませんと言ったら、目を白黒させるのではなかろうか。外国人選挙権に反対するために強制連行を否定しても、まったく無意味である。

【2】朝鮮人は嘘つきというウソ

あとは朝鮮人は嘘つきだという文脈で語られている。

在日コリアンが「おれたちの先祖は強制連行で連れてこられて、おかげでおれたちはこんなクソみたいな国にいるんだ」と言っているというのだ。強制連行はデマだし、クソみたいな国にいるのがいやなら出て行けと。

在日コリアンは、はたして自分たちを強制連行された父祖の子孫だと言っているのだろうか、クソみたいな国にいやいや住んでいると言っているのだろうか。それこそまったくのデマだ。自分がたたきやすい発言をねつ造して、ありもしない意見を非難しているだけだ。

強制連行以前から日本に住んでいた大勢の朝鮮人の足跡を追跡・研究したのは、他ならぬ在日コリアンの研究者だった。朝鮮戦争や済州島の住民弾圧を逃れて多数が渡来したことも、隠されていない。

朝鮮人だろうが日本人だろうがエスキモーだろうが、嘘をつく奴はつくし、正直者は正直者だ。そんなことを民族性にからめて語るのが、そもそもデタラメな理屈なのだ。

【3】朝鮮人は密入国者というデマ

話はちょっと逸れるが、朝鮮半島の動乱時期に来日したことを密入国だという人たちがいるが、そうとも言えなかろうと思う。

日本政府が旧植民地朝鮮の人々から日本国籍を喪失させたのは、1952年4月だ。朝鮮半島の人々は、それまでは日本国籍を有していたのだ。日本国籍を持つ人が動乱を逃れて日本国内のどこに行こうと、それはその人たちの自由であり権利だという解釈だって不自然ではない。

【4】強制連行は245人というデタラメ

もとに戻る。

「在日韓国人・朝鮮人は強制連行されてきた人々の子孫ではない」。こういう無意味な言説が何を根拠に流されているかといえば、これまたデマまがいの資料に基づいているのだから恐れ入る。

その資料とは、「昭和35年2月 外務省発表集 第10号」であるらしい。嫌韓・歴史修正主義のサイトではこの資料がまことに重宝されている。

「記事資料 昭和34年7月11日」と記しているサイトもある。外務省が昭和35年に発表したものが、前年の昭和34年に記事になったことを疑問に思わないのだろうか。不思議な人たちだ。

まあともかく、資料それ自体は外務省のものだから、本物だ。

そこには戦時中に徴用されて来た人のうち、昭和34年時点で日本に残っている人は「極めて少数」で、たった245人だと記してある。「現在、日本に残留している在日朝鮮人は自由意志による残留である」と確かに書いてある。245人という数字自体はそうなのだろう。

問題は強制連行を「戦時中の徴用」に限定している点だ。戦時中に徴用が行われた期間は、その資料がいうには1944年9月から1945年3月までの半年間。その期間に何人くらいが連行されたかといえば、資料によれば「ごく少数」だそうだ。もともとの連行数が「ごく少数」なら、後に「極めて少数」なのは当たり前だろう。

【5】ほとんどが自由意思でやってきたというホラ

その資料によれば、1939年から1945年にかけて、渡来朝鮮人は100万人も増えている。それらをすべて「自由渡来」と「自然増」だと資料はいう。

冗談も休み休み言って欲しい。軍の協力がなければおいそれと渡航できない時代だったのに、100万人もの人が自由にやってきたなんて、子どもでもそんな言い訳はしない。

朝鮮総督府の事務官も強制連行が始まっていないはずの1943年に、つぎのように述べている。

「労働者の取りまとめは…半強制的にやっております」(『大陸東洋経済』1943年12月1日号)

公刊物として発行されることがわかっていてもこう述べるのだから、役人でさえ「強制」が悪いことだという認識がほとんどなかったことを示している。まして民間の手配師はどうだったか、考えるまでもない。

法務省法務研修所の森田芳夫が執筆した『在日朝鮮人処遇の推移と現状』(1955年)には、1939年からの労務動員について「政府は、朝鮮人を集団的に日本内地に強制移住せしめる策をとった」と書かれている。

こういった現実についての認識不足が、外務省にはある。植民地行政機関と大企業が手を組んで、無理なやり方で組織的に連れてこなければ、数年で100万人もの人がやってきたりするものか。

だから在日コリアンが全部強制連行された人の子孫だと事実はないし、そんなことを言う人もなかろうが、強制連行は事実あったことであり、そういった人の子孫もいるだろうと思う。

そういう立場の人が自分を被連行者の子孫と名乗るのは当然のことである。

【6】帰りたい朝鮮人は帰った、ほかは好きで残った人ばかりという無茶

つぎに、戦後の話をする。

1945年に200万人いた朝鮮人のうち、帰りたい者はすべて帰ったと資料は言う。だから残っているのは「自由意思」なのだと。

たしかに政府は大勢の朝鮮人を帰らせている。だが、残った人は本当に自由意思で残ったのだろうか。

昭和21年に内務部長あてに出された民生局長の依頼文がある。

<昭和21年8月19日付 内務部長宛文書>
「……之等の者は市内転入禁止のために概ね無籍者である。……大部分は生活の根拠を失ひ生活困難に陥ったので早急に帰国させる様に努めてゐるが帰国の仕度金さえない者が大部分……」

失業者はそもそも帰る金がない。帰りの食物として支給されたのは、1袋88銭の乾パンを3袋だ。金のある人は、家財を置いて帰れといわれる。持ち帰れる荷物は、たった250kg程度なのだから。月賦で買った高い機械も、全部支払をすませないと持って帰るなという。置いて行けというのと変わらない。指定された期日に船に乗らなければ、2度目はない。

これでは帰りたくても帰れないではないか。泣く泣く日本に残ったら、今度はお前が勝手に残ったのだと言われる。なんという扱いだろうか。

【7】一緒に暮らすのがどうして気にくわないのかという暴論

日本に残った人々は、そこに生きる基盤を持つしかなかった。日本に根を生やして、差別の中でたくましく生きた。平均的には日本人より貧しいという統計があるが、努力をして財を成した人もいる。初めはいやいやだったかも知れないが、50年も60年も暮らせば、そこが新しい故郷だ。いまさら帰れでもないもんだ。

日本人は先祖代々から住んでいたと威張って何になろう。一人々々は誰だって、生まれてからの歴史しか持っていないのだ。日本生まれの在日コリアンと条件は同じである。当たり前ではないか。同じ地域に生まれ、同じテレビを見て育ち、同じ言葉を話して同じ空気を吸って生きている友人を、コミュニティの一員として迎え入れるのは当然ではないか。

【8】在日朝鮮人社会のすばらしさ

特に在日朝鮮人コミュニティはすごい。

他国では、外国人がコミュニティを維持するため、外国人ゲットーやスラムを作って集団居住していることが結構あって、社会問題化しているそうだ。

しかし在日朝鮮人はちがう。朝鮮人集団居住区なんてものは、どこにもない。その代わり、苦労に苦労を重ねて自分たちで学校をつくり、子女教育を維持してきた。教育の力で、言語とコミュニティを守ってきたのだ。文化の力を通じて、民族のアイデンティティと誇りを固く握りしめて生きてきたのだ。相互扶助的な金融機関もつくりあげた。まったく、たいしたものである。

朝鮮銀行にはかなりの不正もあったが、システムが改変されたので、今後はもうそういうことはないだろう。

【9】朝鮮総連=北朝鮮というおとぎ話

北朝鮮との関係がどうのというが、愛郷心に日本人も朝鮮人も変わりはあるまい。

一世が元気な家庭では金日成の写真を飾っている所もあるそうだが、日本の年寄りが天皇皇后の写真を飾っているのと同じことだと思う。日本人がいまさら天皇のために突撃する気がないように、金正恩のために命をかけようなんて奇特な御仁がたくさんいようとは思えない。

朝鮮労働党の一党独裁システムを通じて変な指令が下りてくるのは御免だが、そんなものがあるとしても、従うのはほんの一握りだろう。日本の捜査当局が鵜の目鷹の目で朝鮮総連の犯罪行為をあげようとしているのに、新聞に大々的に報道されるのは微罪ばかりではないか。

どんな思想を持っていようと日本では自由だ。しかし圧倒的多数の在日朝鮮人は、チュチェ思想なんかお守り札ほどにも大切にしていない、普通の庶民だと聞く。

よそ者嫌いは人間の宿痾だから根絶は難しいにしても、嫌韓連中のそれは病気に近いものがあると思う。

【10】外国人参政権に賛成する

むしろ、戦後日本を共に支えた気骨ある朝鮮人のたくましい力を貸して貰ったほうが、この国のために断然いい。それには、共生が必要だ。差別をやめること、そして一緒に差別とたたかうことだ。日本のシステムというのが、外国人地方参政権でぐらつく程度の脆弱なものだなんて、とても思えない。

まあ、在日コリアンの中には日本の選挙権なんかいらないという人もいる。その意見はそれとして尊重すべきだろう。もう一方で、日本国民として日本社会のあり方を考えるうえで、外国人参政権の導入を視野に入れるのは間違っていない。

民主党は口ばっかりのへたれだったけれど、いつかまた外国人参政権が政治課題にのぼれば、私は諸手を挙げて賛成するつもりだ。