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憲法の「平和力」の話を続けます。平和力とは聞きなれない言葉ですが、軍事力があるのなら平和力があってもいいんじゃないでしょうか。
［P］92年国連軍備登録制度 戦車、軍艦などの輸出入管理・登録制度
国連軍備登録制度というのがあります。ミサイルなどを輸出するに当たり、国連に届け出なければならないという条約です。日本がホスト国となって、ヨーロッパ各国を巻き込んで実現したものです。こういった制度が必要だとずいぶん前から言われていましたが、どの国がやってもうまくいかなかった。ところが日本がホスト国になり、根回しすると、実現してしまったんです。
［外務省資料］
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/arms/touroku/gaiyo.html
この制度の威力もすごいですよ。実際に、紛争拡大を未然に防いでいますからね。
［P］実例：ロシアのミサイル輸出
最近の例では、ロシアが内戦中のシリアにＳ300というミサイルを輸出すると発表しました。これに対して、そんなことをしたら空爆するとイスラエルが声明を発表しました。米国もロシアに警告しました。その結果、ロシアのプーチン大統領が「ミサイルはまだ供給していない」と言い訳をするというのが、現段階です。
軍備登録制度がなければ、ロシアは秘密に輸出していますよ。するとイスラエルは必ずシリア内戦に介入して空爆しています。そうなったらアラブ諸国が黙っていられないし、イランが直接介入する事態になったかも知れず、紛争がどこまでも拡大することになったでしょう。軍備登録制度があり、ロシアが申告したから、そういう事態が未然に防げたんです。
この制度の根回しを担当した、元国連難民高等弁務官・緒方貞子さんが語っています。「条約が実現したのは、武器輸出三原則を持つ日本が説得したからです。どこにも武器を輸出していない日本、手を汚していない日本、武器輸出に利害関係を持たない日本だから、変に勘ぐられることがなかった。日本が言うことだから説得力があった。」
武器輸出をしないというのは、もちろん憲法第9条があるからですよ。どうですか、憲法9条は国連を動かし、世界を変えているんです。しつこいようですが、あと1つだけ紹介します。
［P］アフガニスタンの兵力引き離し、武装解除措置
10年以上前ですが、内戦が続いていたアフガニスタンでタリバン政権が崩壊してようやく停戦が実現し、政府軍も反政府ゲリラも武器を捨てて軍縮し、兵士たちに職業訓練して市民に戻って貰おうということになりました。この難しい仕事を任されたのが、日本でした。日本政府代表として伊勢崎賢治さん、国連代表として太田由香里さん。どちらも丸腰の日本人です。
［P］武器を提出するゲリラ兵たち
兵力引き離し、武装解除措置、これをDDRというんですが、これまで三十数カ国で試みられて、成功したのはたった3カ国しかありません。シエラレオネ、アフガニスタン、ネパールです。その3つとも、日本が関わっています。つまり、日本が関わらなかったオペレーションは、全部失敗している。
［外務省資料］
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/17/dmc_0707.html
シエラレオネとアフガンでDDRの責任者を務めた伊勢崎賢治さんはこう語っています。
「アフガンの民衆は日本のことをよく知らないけど、とても豊かで戦争をしない国だということだけはみんな知っていた。そういう日本だから、ぼくたちは他国に絶対できないことができたんです。」
伊勢崎さんはもとは改憲派だったのですが、こういった任務をこなしたことで憲法の価値に気づき、いま盛んに憲法を守ろうと訴えています。もっともアフガンの場合、武装解除に成功した直後にブッシュがあのイラク戦争を始めてしまったものだから、タリバンがまた暴れ出して、結局元の木阿弥になってしまいました。イラク戦争さえ始めなければ、アフガンはいまごろあんな内戦状態になっていないはずなんですが、本当に残念なことです。
［P］憲法第9条は世界の平和を守っている
このように、憲法第9条は日本が戦争するのを防いでいるだけではなく、世界各地の紛争を防いだり解決しているんです。実際に戦争を防ぎ、あまたの人命を救っているんです。この分野での日本の貢献は群を抜いています。このこと、私たちはもっと誇りに思ってもいいんじゃないでしょうか。
自民党政府のできは悪いけど、憲法第9条があるから、官僚はそれに沿った外交をするしかないんです。憲法をないがしろにする政府の下でもこれだけのことができるんです。憲法を大切にする政府ができたら、いったいどれほどのことができるか、考えるだけでも楽しくなっちゃいますよね。
だけど改憲政府の下で、マスメディアの影響もあって、世論の風向きが怪しくなっています。憲法を守ろうという話をすると、必ず疑問が出ます。北朝鮮が攻めてきたらどうするんだと。
明日は、その話です。