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今日は大江・沖縄裁判の判決日。
あと30分で開廷です。
備忘録として控訴審での論点をここに整理しておこうと思います。
■第二審の争点
さて二審での原告側主張はこうです。
(1) 一審判決は「軍の命令があったことは証明されていない」と認めた。
(2) にも関わらず、「軍の関与があった」ことをもって「軍命令があったと推認できる」と一足飛びに結論しており、この論理には飛躍がある。
あとは一審で主張したことを蒸し返しているだけです。新たな証言も繰り出しています。これに対する大江側の反論を私なりに要約します。
■名誉毀損の構成要件について
「軍の関与があった」→「軍命令があったと推認できる」と一足飛びに結論しており、この論理には飛躍があると主張する原告側は、判決をちゃんと読んでいません。裁判所は「軍の関与があった」→「軍命令があったと推認できる」と一足飛びに結論したのではありません。
なぜなら判決にはこう書いてあります。「原告梅澤が座間味島における集団自決に関与したものと推認できることに加え、……」「赤松大尉が渡嘉敷島における集団自決に関与したものと推認できることに加え……」
関与があったことはもちろんのことですが、それに留まらず「加え」の後ろにはいくつもの根拠が書いてあります。たくさんの複合的な根拠があるからこそ、“隊長が住民に対し自決命令を発したことを直ちに真実と断定できないとしても、そういうことがあったと大江が信じるについては合理的な根拠がある”としたのです。
このあたりは論証が細かくなりますので、ひとつだけ例をあげます。
2005(平成17)年までは文科省が「座間味島及び渡嘉敷島の集団自決について、日本軍の隊長が住民に対し自決命令を出したとするのが通説であった」と認識していた記録があります。文科省がそうなんだもの、大江さんが同じ事を思うのは当然ですね。
■新たな証言について
新たに出された原告側の証言の信用性がことごとくつぶされています。
具体例を2つだけあげます。
(1) 渡嘉敷村役場前で兵器軍曹から住民に手榴弾が手渡された事実について
これがウソだという証言者がいました。金城重明さんは手榴弾を受け取っていないし、配られたことを知らないと証言しています。これには簡単な反証があるだけです。じつは、金城さんは手榴弾が配られた渡嘉敷部落の人ではなく、阿波連の人でした。だから手榴弾を受け取っていない。それだけのことです。
(2) 「隊長が『住民よ、自決するな』と厳命した」という証言について
宮平秀幸さんが、そう証言しています。宮平秀幸さんから話を聞いたとする鴨野守さん(統一協会の『世界日報』編集委員)が『諸君』にそう書いています。宮平さんはいまもそう言い続けているそうです。
「自分は梅澤部隊長の本部付伝令だった」
「いつも隊長のそばにいて、住民たちが手榴弾をもらいに来た時も、隊長のすぐ横で話を聞いていた」
「村長は忠魂碑のところで村民に、“部隊長から自決するな、避難させなさいと命令されたので解散する”と演説した」と。
しかし彼の証言は信用できません。
- 彼の家族が全員一致して、彼の証言に根拠がないと証言しています。
- 本部付の伝令であった中村尚弘さんも、「秀幸は本部付の伝令ではなかった」と証言しています。
- 肝心の梅澤さんまでもが、原告の応援団長・藤岡信勝に「宮平さんは伝令ではなかった」と証言しています。「その場に宮平さんはいなかった」と。
これらの指摘に対し、宮平さんは別の説明に切り替えました。
「実はテントの影で聞いたから、梅澤さんも他の人も自分がいたことを知らないのだ」。
ところで92年にテレビのインタビューを受けた時、彼は「忠魂碑前で自決するから集まれとの伝令が来たので行った」と証言しており、映像が保存されています。自分は伝令だったとか、忠魂碑前で村長が解散命令を出したなどと述べていません。
こう指摘されると、彼はまた別の説明をはじめました。
「91年にテレビの取材を受けた時に忠魂碑前のことを喋ってしまい、村長から厳しく口止めされた。92年の取材の時も村長に脅されていて、本当のことが言えなかったのだ」。
これが本当なら、渡嘉敷では島ぐるみで真相を隠していたことになり、許されないことです。でもね、村長がそんな脅しなどできなかったことが、沖縄タイムスなどの調べですぐにわかりました。だって村長は脅したと言われている91年より前、90年に他界なさってたんですから。
この事実を指摘されて以後、原告側弁護団は宮平さんに証言を求めず、彼について一言も触れていません。しかし「証言」を撤回もしていません。
他にもたくさん指摘したいところなんですが、あまり長く複雑になってもね。なにせツッコミどころ満載ですので、原告側資料のご一読を……お薦めしようとしたけど、時間の無駄だな。