タモさんのトホホな講演 デバッグ6(公共事業としての自衛隊)

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田母神俊雄氏が2010年11月21日に行った講演の内容を13項目に整理し、その間違いを「タモさんのトホホな講演 デバッグ」の通しタイトルで9回に分けて指摘する。

講演全体のまとめ

2010年11月21日午後2時より、姫路市民会館大ホールに於いて「田母神俊雄講演会(姫路市・姫路市教育委員会後援……トホホ)」が開催されました。 東進衛星予備校専用の受付口が設けられるなど組織動員の成果もあり、参加者は約900名。立ち見も出る盛況...

9回の目次

■元航空自衛隊幕僚長 田母神俊雄講演会 参加メモ ■タモさんのトホホな講演 デバッグ1(歴史認識) 1.自己紹介 2.歴史認識の誤りが国を危うくしている ■タモさんのトホホな講演 デバッグ2(侵略戦争...

8.経済対策として自衛隊増強を

<田母神講演の要約>
日本の高度経済成長は冷戦のおかげでした。ソ連の太平洋進出を阻止するには、日本に安定的な政権が必要でした。そこで、米国は日本の経済成長を容認した。しかし冷戦が終わったいま、プラザ合意以降、米国は日本との経済戦争に乗り出しました。

構造改革とかいって、郵政民営化や持株会社の公認など、すべて米国の要求が実現したものです。談合禁止というのもそうです。あまりに談合を禁止して自由競争にすると、コスト競争が激しくなって、耐震偽装のようなことも起こる。米国に属していれば安心・安定という時代ではないんです。

国防もそうです。尖閣諸島防衛のために米国が中国と戦ってくれるか。それが米国の国益になると思えば戦うでしょうが、国益にならないと思えば戦いません。安保条約があっても、戦うかどうかは米国が判断するんです。中国の核ミサイルの脅しに抗して、日本の無人島を守るために米国が戦うだろうか。自分の国は自分で守る態勢が必要です。

中国は2020年までに空母を6隻持つという。空母がなければ侵略能力がありません。それはなぜか。いま中国が尖閣諸島を取ろうとしても、そこまで飛んでこれる飛行機がない。日本領空まで飛んできて、5分間の空中戦をすると、帰りは燃料がなくなって東シナ海に落ちてしまう。しかし空母があれば、近くまでやってきて戦える。これに対抗するには日本も空母を持たなければなりません。戦闘機も自主開発すべきです。

戦闘機開発には7,000社ぐらいの企業が関わります。日本はデフレなんだから、公共事業としての自衛隊増強を図るべきです。10万人ぐらい隊員を増やせば、失業対策にもなる。

そんな金がどこにあるのかと言えば、あるんです。日本の借金は900兆円ですが、90%が国内からの調達です。外国から借金していたギリシャみたいなことには絶対にならない。少々借金をしても、それで経済成長できれば吸収できる。いざとなれば一万円札を増刷すればいい。

たしかに各国は自国の利益を第一義として行動しているので、米国に属していれば安心・安定というのは幻想でしょう。自分の国は自分で守る態勢が必要だと私も思います。

なんと、田母神さんが大嫌いな左翼の代表日本共産党も同じことを言っていますので、紹介しましょう。

仮に急迫不正の主権侵害があったり、大規模災害にみまわれるなど、必要にせまられた場合には、可能なあらゆる手段でこれを排除する一方策として、そのときに存在している自衛隊を活用するのは、国民に責任を負う政府の当然の責務です。(『しんぶん赤旗』2005年5月18日)

日本共産党は将来的に自衛隊の解消を目指すとしていますが、次に示すとおり、それには条件が必要であるとも語っています。

(日本が)世界やアジアの諸国と対等・平等・互恵の友好関係を築く。
日本の中立・平和・安全の国際的保障の確立。
憲法9条の完全実施についての国民的合意が成熟すること。
(『しんぶん赤旗』2005年5月18日)

日本の意志だけではダメだ、国際的安全保障の環境が整わなければ、非武装中立は実現できないというのが、日本共産党の考えだと私は理解しています。日本共産党の考えは正しいと思います。

共産党と田母神さんのちがいは、田母神さんが国際環境に合わせて軍拡せよと言うのに対して、共産党は平和のために、核を含めて、軍拡から軍縮に移行するよう、国際社会に対して実際に働きかけている点でしょう。私は共産党の姿勢が正しいと思います。

軍事費に投資しても経済成長はしないと思います。日本の場合、GDPに占める防衛費の比率を1%増やすと10年後には15兆円も生産・所得が減少すると言われているぐらいなので。

ただし、一時的なデフレ対策としてなら、戦闘機開発など兵器の国産化が役立つってのは分かります。国から民間にお金が流れるんですから。まあどんな予算の使い方でも、国から民間にお金が流れれば、ともかくデフレ対策にはなるんでしょう。

それならば宇宙開発でも、低炭素技術開発でも、教育予算増額でも同じことですが、なるべく途中でお金が滞留しない使い方の方がいいわけです。大企業しか参入できない分野だと、せっかく民間にお金が流れても、企業の内部留保として滞留してしまうかも知れません。その点、利潤率の低い防衛産業は、内部留保に回せる部分が少ないので、空港建設なんかよりはデフレ対策として有効かもしれないです。

でも、それならば、かなりの部分が人件費となるので内部留保がゼロに近いうえ、資本の海外流出もほとんどない、教育・福祉・医療分野への投資の方が、直接的な国内消費を刺激する意味では、デフレ対策として有効ではないでしょうか。

自衛隊員を10万人増やすとは隊員を1.4倍にするってことです。
人数が1.4倍になっても防衛予算が1.4倍にふくらむということにはなりませんが、隊員を増やすと、宿舎を建てて衣食住と医療を保障し、給料を支払い、高価な兵器を与えて訓練しなければなりません。

新入隊員の年収は約357万円です。隊員の生活や訓練に必要な経費を考えれば、500万円ではすまないでしょうね。10万人の隊員を増やすと、5千億円以上の予算がかかることになります。それよりも10万人の青年に失業手当を支払いながら職業訓練すれば、失業対策としての効果は同じだし、財政負担ははるかに低いはずです。

ところで余談ですが、「談合を禁止して自由競争にしたからコスト競争が激しくなって、耐震偽装のようなことが起きた」と、耐震偽装がまるで談合を禁じたせいであるかのように弁護したのには笑ってしまいました。田母神さんを有名にした、あの論文のスポンサーのアパグループって、耐震偽装で有名になった会社ですもんね。そりゃ弁護したくもなるわ(笑)