国籍法改正について 外国人はアブナイのか?

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1008571134&owner_id=12631570

国籍法の改正にケチをつけようとする意見が猖獗を極めています。

「外国人に日本の国籍を簡単に手渡すな!」みたいなことを盛んに触れ回っています。それはたとえば外国人は犯罪者が多いんだから、そいつらに日本を荒らされてたまるか、みたいな言い方です。

マイミクさんの日記にこんな意見が紹介されていました。

外国人の犯罪率が高いというのは、経済的状況・社会的弱者であるというのを鑑みてもなお、決して差別でもデマでもなく本当の数字です。

外国人被収容者人員の推移 大臣官房司法法制部司法法制課
*http://www.moj.go.jp/TOUKEI/t_k02.html

日本の外国人登録者数 約200万人 これって全人口の 1.6%だけ
刑務所の外国人受刑者  6183人 これって全受刑者の 7.8%

いや~、たしかにそういう数字が出ていますね。1.6%しかいない外国人なのに刑務所に7.8%もいるんじゃ、日本人の5倍近い犯罪率ですよ。こりゃ大変と騒ぐ気持ちもわからないでもない。

でも、正しいことを言っているんでしょうか。どうなんだかと思って調べてみました。以下はその検証です。

論証は長くてややこしいから、結論を先に書きますね。

外国人には、パスポートを持った「来日外国人」と、外国人登録している「在日外国人」があります。それぞれについて犯罪率を調べてみました。すると、

  • 「来日外国人」の犯罪率は日本人の半分以下でした。
  • 「在日外国人」の犯罪率は日本人の8割強しかありません。
  • 刑務所収容者の数字は、較べられないものを無理に較べていることがわかりました。

大山鳴動ネズミ一匹、だったんです。
では、以下、長くてややこしい論証の始まりです。
数字に弱い人は読まなくていいよ~

■外国人旅行者の犯罪

2007年(平成19年)の数字を見ます。

来日外国人の総数 6,899,307人
うち刑法犯検挙数 7,528人
犯罪者の人口比は0.11%です。
日本人刑法犯の検挙数は365,577人
1億2000万人に対する犯罪者の人口比は0.3%です。

来日外国人0.11%対日本人0.3%。
外国人旅行者は日本人より真面目ですね。

日本人は犯罪不可能年齢の乳幼児や高齢者を含みます。来日外国人はほとんどが犯罪可能年齢です。だから、統計的には外国人の犯罪率が日本人より遙かに高く出るはずなんです。しかし実際にはとても少ないことがわかったわけです。

参照:
http://www.npa.go.jp/archive/toukei/seianki/h19/h19hanzaizyousei.pdf

■予想される反論

来日外国人は在日期間が短いからとかいう反論が予想されますが、それは統計上無意味です。
こう考えればわかります。仮に、来日したのがたった1人で、その人が犯罪を犯したとしましょう。犯罪者人口比100%です。この人が滞在10日だったら犯罪率3,650%で、1日だったら36,500%になるのでしょうか。そんなことありませんね。やはり犯罪率は100%です。だから在日期間は関係ないんです。

■在日外国人の犯罪

次に外国人登録している在日外国人を考えます。

年齢別犯罪統計を見ると、14歳~39歳世代は人口に占める割合が43.7%なのに、刑法犯の中でこの年代が占める割合は59.8%もあります。この世代の犯罪率は全平均の1.37倍高いということです。まあ、このあたりがいわゆる活動年齢ですからね。

参照
http://www.npa.go.jp/toukei/keiji24/excel_file/H18_023.xls

ところで在日外国人の年齢別人口比が一番高いのもこの年代です。全体の66.1%をこの世代が占めています。日本人社会でのこの世代の人口は43.7%。日本社会と較べてその世代の人口割合が1.51倍高いということです。

すると在日外国人と日本人の犯罪率を較べるには、この差を補正する必要があります。補正の計算は以下のとおり。

A 犯罪率とその世代の犯罪率との比
B 日本と外国人のその世代の人口率比

補正率=(1-B)+AB

計算すると補正率0.63となります。
在日外国人の犯罪率に0.63を掛ければ、日本人の犯罪率と比較できるのです。

参照
http://www.toukei.metro.tokyo.jp/tnenkan/2005/tn05qyti0510b.htm

犯罪の原因には世代の他、所得、社会的地位など多くの要素が絡んできますから、とても複雑ですから数字は慎重に扱わなければなりません。そこに留意したうえで、統計数字を見てみましょう。

在日外国人の刑法犯検挙総数は8,148人です。
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/54/image/image/h003001002001e.jpg

↓上記はここにある表です(平成19年度犯罪白書)
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/54/nfm/n_54_2_3_1_2_1.html#h003001002002e

在日外国人の人口は約200万人です。
http://www.moj.go.jp/PRESS/070516-1.pdf
すると犯罪人口率は0.4%。補正すれば0.252%です。
日本人は0.3%でした。
在日外国人の犯罪率は日本人の8割強だということです。

■刑務所収容人数のトリック

では、まとめサイトにあった刑務所収容人口比率の大きさは何なのでしょう。
実はあの表は1つだけ独立して見るものではないのです。
来日外国人も含めた収容人数を、在日外国人の人口と比較するのが、土台間違っているのです。

まず外国人全体の収容人数を見ます。
すると5,919人であることがわかります。

参照:施設別 外国人被収容者の年末収容人員(総数)
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL71050103.do;jsessionid=JwjJcWDpnzm8GD1zGyXNmsZztSw8JjhhGHLfT2yNZQ0TkFrPG839!1213549025!-1744589866?_xlsDownload_&fileId=000001317676&releaseCount=1

そのうち4,410人が来日外国人です。

参照:外国人被収容者の年末収容人員(来日外国人)
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL71050103.do;jsessionid=JwjJcWDpnzm8GD1zGyXNmsZztSw8JjhhGHLfT2yNZQ0TkFrPG839!1213549025!-1744589866?_xlsDownload_&fileId=000001317677&releaseCount=1

その差である1,479人が在日外国人です。
すると在日外国人は200万人なのですから、その割合は0.074%。
補正すれば0.047%です。

では日本人の割合を見てみましょう。
全収容者は79,809人。

参照:施設別 年末収容人員
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL71050103.do;jsessionid=JwjJcWDpnzm8GD1zGyXNmsZztSw8JjhhGHLfT2yNZQ0TkFrPG839!1213549025!-1744589866?_xlsDownload_&fileId=000001317667&releaseCount=1

ここから外国人を引くと日本人収容者数になります。
73,890人です。
1億2000万人に対する割合は0.062%。

日本人0.062% 対 外国人0.047%
日本人収容率は在日外国人より遙かに高い数字です。

■来日外国人の収容人数について

上に見たように来日外国人の刑法犯検挙人数は7,528人でした。
そのうち年末に刑務所に収容されているのが4,410人です。
この数字が高いのか低いのかよくわかりませんが、どうも厳しい取り扱いではないかなあという気がしますねえ。

ということで、来日外国人も在日外国人も、日本人の犯罪率より遙かに低い発生率であることが証明されたのでした。