護衛艦「くらま」の事故(3)まとめ

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前の日記で指摘していたとおり、船を誘導した海上保安庁マーチスの責任論が浮上してきたようです。

護衛艦「くらま」の事故(2)海上保安庁の責任は?

管制担当者、護衛艦側に舵を取るよう伝達 * 今回の事故の原点は危険な追い越しをかけた韓国船にあります。 しかし海上保安庁の「情報提供」が不適切だったのではないかとの指摘も現れています。すると、またまたニュースでは「反日」だの「売国」だのと...
■事故の時系列整理と違反項目

軍事コミュでの議論も一段落したので、私が分析した事故の時系列と違反項目をまとめておきます。

1.貨物船が流れの速い中央域を航行、潮に圧されて減速。(港則法施行規則38-1違反 海上衝突予防法第10条2項2違反)

2.韓国船は貨物船が減速したので追い越すことにした。(港則法14-4違反)

3.しかし貨物船は中央付近を航行しており、左を追い越すと航路をはみ出す恐れがあるので右を追い越そうとした。

4.右(沿岸側)は流れがゆるやかなので、貨物船との距離がますます近くなった。(下記参照)

関門海峡海上交通センターHPより引用
「右側(門司埼寄り)から追い越そうとした場合、潮流の影響が比較的少ないことから、一挙に船間距離が短くなり、追い越そうとしている船舶と衝突する危険性が、一気に高まる場合があります。」
http://www6.kaiho.mlit.go.jp/kanmon/

5.同じ頃、海保は貨物船に右へ寄るように誘導し、合わせて韓国船に左を追い越すように誘導。(港則法施行規則27-2違反)。

6.海保の誘導で貨物船が右へ寄り、韓国船の進路をふさぐ形になったので、韓国船はあわてて左に旋回。

7.韓国船は角度がつきすぎて潮の圧力に負け、右舵が切れなくなり、流れとほぼ直角に進むことになって衝突。

■事故の報道について

報道も変わってきています。

前方を走っていた貨物船にも責任があるという論です。
これも私の分析と一致しています。

西日本新聞2009/10/3
7管(第7管区海上保安本部)の幹部は「狭い関門海峡で航路中央を航行するのは危険な場合もあり、今回の貨物船の航行には疑問が残る。ただコンテナ船(=韓国船)がいったん減速し、海峡を過ぎてから追い抜いていれば衝突は避けられたかもしれない」と指摘している。
(全文を末尾に掲載)

軍事コミュの軍事好きのみなさんはどうあっても韓国船に全責任を負わせたかったようですが、すべて退けることができました。まあメンバーはおそらく「週刊オブイェクト」を鵜呑みにしていただけで、ちゃんと検証していないから当然なのですが。
韓国ぎらいや日本びいきの感情論が、彼らの目を曇らせているのです。これは何につけても言えますが。

報道が今後変わるだろうということも、予測しておきましょう。

「韓国船が関門海峡海上交通センターの誘導に従わず、誘導とは違う右から追い越すコースをとり続けた」という報道もありますが、その報道には矛盾があります。交信記録によれば、海保マーチスはまず貨物船に右に寄るように誘導したあと、韓国コンテナ船に左から追い越すように求めているからです。

韓国コンテナ船と貨物船の関係はつぎのとおりです。

  • 貨物船が右に寄ってからでないと、韓国コンテナ船は左に進路変更できません。
  • 貨物船が右に寄ったら、頭を塞がれるのでそのまま進み続けられません。

貨物船が進路をふさぐ形になるので、同一進路はとれないのです。
もしも報道のように韓国船が右を進み続けたのならば、それは貨物船が進路をどかなかったことを意味しており、責任は貨物船にあります。
もしも貨物船がすぐに右に進路を変えていたのなら、韓国コンテナ船が同じ右側を「進み続ける」ことができません。
調べが進めば、この点も正しく明らかにされることでしょう。

関門衝突事故 前方の貨物船 違反?
7管調べ 航路中央付近を航行
西日本新聞朝刊 2009/10/31

関門海峡で海上自衛隊護衛艦「くらま」と韓国籍コンテナ船「カリナ・スター」が衝突した事故で、直前までコンテナ船の前方の航路中央付近を航行していたパナマ船籍の貨物船「クイーン・オーキッド」(9046トン)に、関門海峡の航行規則違反の疑いがあることが30日、第7管区海上保安本部(北九州市)の調べで分かった。7管は、低速の貨物船が航路中央付近を進み続けたため、コンテナ船が管制の誘導に反して、衝突寸前まで右側から追い越す航路をとり続けた可能性があるとみている。

港則法の施行規則は、関門海峡では「できる限り航路の右側を航行する」と規定。罰則はない。

7管によると、衝突の数分前、7管の関門海峡海上交通センター(北九州市)はコンテナ船に貨物船を左から追い越すよう誘導。だが、コンテナ船は減速せず、誘導とは違う右から追い越すコースをとり続けた。関門橋の下付近で貨物船が減速しながら右に進路変更し始めたため、貨物船の船尾右側に位置していたコンテナ船は追突を避けようと左へ急旋回。前方から直進してきたくらまと衝突したとみられる。

7管の幹部は「狭い関門海峡で航路中央を航行するのは危険な場合もあり、今回の貨物船の航行には疑問が残る。ただコンテナ船がいったん減速し、海峡を過ぎてから追い抜いていれば衝突は避けられたかもしれない」と指摘している。

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/131703

<参考情報>
反戦のための軍事入門【本館】コミュの事件・事故・基地被害
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=29299399&comment_count=230&comm_id=1928353

運輸安全委 管制官に対して聴き取り調査
*http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1007150&media_id=88

<関連日記>
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