[貧困・差別]金の亡者と橋下の金融特区など

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金の亡者の話をします。
貧乏人から金をむしり取って贅沢三昧している連中の話です。
橋下の金融特区構想が持つ意味についても、少しだけ触れます。
長いので、ぼちぼち読んでくだされば……

商工ローンからお金を借りた人の連帯保証人にあてて、裁判所から「金返せ」という裁判の通知が届きました。原告は、「エスエフシー・パーティシペーション・カンパニー」。例のタックスヘブンのケイマン諸島にある会社です。これだけで怪しさぷんぷんです。訴訟代理人は、外国法共同事業オメルペニー・アンド・マイヤーズ法律事務所。
http://www.ommtokyo.jp/
これもなんだかお金ギラギラの法律事務所みたいです。

もともとの債権者はSFCGでした。SFCGとは、その前の名前は商工ファンドといいました。SFCGは、商工ファンドカンパニーグループ(Shoko Fund Company Group)の略です。

商工ファンドは強引な取立で社会問題となり、商売がしにくくなったので、SFCGという名前に変えて、客の目をくらませて商売を続けていたのですが、違法行為が目に余り、金融庁に貸金業免許を剥奪されました。リーマンショックが直接の引き金になってすでに破産していますが、こんなのが東証一部上場企業だったのです。

さて問題はその破産手続きの時のこと。SFCGは子会社の不良債権を大量に抱えていました。SFCGは、不良債権を抱えると、連帯保証人から取り立てて優良債権に変えるのが、いつものやり方です。なのにこのときはそうしないで、破産直前にその債権を、新生信託銀行にクズ値でたたき売ってしまいました。

詐害行為もいいところですが、しかし管財人がその行為を取り消して不良債権を取り戻しても、連帯保証人から取り立てができなければ、ただのクズ債権です。このとき、管財人はつぎのように説明しました。

「この債権は根保証(ねほしょう)契約なので、保証人の返済義務は新生信託に移らない、だから連帯保証人に返済を求めることができなくなった」と。

根保証とは何かについては最後に説明しますが、ともかく、どうせ値打ちのない紙切れになったのなら、そして不正な売却であっても、そのことで連帯保証人への請求ができなくなって新たな被害の発生が食い止められるのなら……というので、SFCGの汚いやり方を、多くの債権者はしぶしぶ納得したのです。(過払金2100億円を返すべき、数万人の債権者がいたのです。)

こうして破産によって、膨大な過払金がチャラにされてしまいました。そして新生信託銀行に価値のないクズ債権が残りました。そのはずだったのです。

ところが新生信託は、いつの間にか、債権を「エスエフシー」に売っていました。そしてその会社(おそらく実体のないペーパーカンパニー)が、改めて保証人に手を出してきたのです。

強制執行(差押えや競売)がいやなら、保証人は高い損害金がついて2倍ぐらいにふくらんだ債務を、どうにかして支払わなければなりません。

破産手続中はクズ債権だったものが、いままた宝の山に変わったのです。宝の山を手にするのは誰か。自分の債務を破産でチャラにした連中です。破産したのが「エスエフシージー」、いま取り立てしているのが「エスエフシー」なんだから、姿を変えた商工ファンドカンパニーなんですよ。新生信託銀行だって、もとからSFCGと組んで、債権をあっちにやりこっちにやりして儲けてた仲間企業です。

宝の山をクズ山に見せかけた手法は何か。裁判所を通じた破産手続きという手口でした。膨大な過払金をチャラにしたのも、裁判所を通じた破産手続きでした。

クズ山を宝の山に変える手法は何か。裁判所を通じた強制回収の脅しという手口です。
法律を悪用して債務を逃れ、法律を悪用して債権を復活させ、法律の強制力で連帯保証人を脅すとは、なんと法治システムをなめきった態度でしょうか。

宝の山に変える手口ですが。SFCGのときは、いきなり銀行口座が差し押さえられ、融資が止められて倒産した企業、給料が差し押さえられて解雇されたサラリーマンが続出しました。売掛金が押さえられ、工場が競売に掛けられ、一家離散した家族や、あまりのことに精神を病んだ奥さん、抗議の焼身自殺をした保証人までいました。首つりした保証人は数えきれません。

なにせ、東京地裁の取立訴訟の8割が商工ファンドがらみであり、その内容があまりにも陰惨なので、裁判所が商工ファンドの訴訟を受け付けないという異例の取扱をしたほどでした。こんな地獄絵図の再現を許してはいけません。

しかしSFCGの管財人に、話が違うじゃないかと文句を言おうにも、すでにSFCGの破産事件は終結していて、破産財団は影も形もありません。紙の上では合法性が担保されています。

これをハイエナと言わずして、なんと言おうか。金融の悪魔、極悪非道の債権鬼とでも言えばよいのだろうか。しかし、これが一応は合法なのです。例の小泉改革で債権譲渡の取扱が変えられたから、こんな手口が可能になったのです。

そして合法なら何をしてもいい、もうけることは善だというのが、新自由主義なのです。アイフル系商工ローン会社シティズの元顧問弁護士だった橋下の唱える金融特区とは、こういう連中が甘い汁を吸うためのスープ皿を与えてやろうということなのです。

■「根保証」について

ちょいと難しい法律の話。
SFCGやその子会社は、連帯保証人に「根保証(ねほしょう)契約」を結ばせていました。

根保証契約というのは、普通の連帯保証ではありません。

普通の連帯保証契約なら、10万円借りるなら保証も10万円、200万円借りるなら保証も200万円と、保証する額が決まっています。借りたお金と保証義務がくっついているのです(附従性といいます)。貸主が取立権をよそに売ったら、保証義務もついていきます(随伴性といいます)。

ところが根保証は違います。

最初に10万円の保証をしたはずなのに、いつの間にか知らないうちに、1千万円の保証になっていたりするのです。「貸付10万円」という契約書の連帯保証の欄に、「根保証契約」「極度額1千万円」と小さく書いてあるからです。

これは何かと保証人が尋ねると、「まあ借入枠ですから気にしなくていいですよ」みたいな返事が返ってきます。保証する人は、借主がこのあといくら借りようと自分が保証するのは10万円だと考えています。でも、1千万円の根保証とは、「1千万円まで保証します」という約束枠なのです。

借りたお金と保証義務がくっついていなくて、保証枠があるという形なのです(附従性がない)。借りたお金と保証義務がくっついていないので、貸し主がその取立権をよそに売り飛ばした場合、保証義務はよそに移りません(随伴性がない)。

しかし、債権が確定したら随伴性が発生するのだとエスエフシーは言います。まあ、一応は正しい言い分です。民法の解説にも、そのように書いてあります。では随伴性がないと言明した管財人の言葉は何だったのか。

これから、守銭奴どもと人権派弁護士たちの戦いが始まります。法律やくざと称されたシティズと闘い、何度負けてもあきらめずに法律を駆使してついに橋下の屁理屈を追いつめて打ち負かした弁護士たちです。

SFCGの債権譲渡は、破産手続きを利用した財産隠匿行為ではなかったのか、このようなケースに付随性など認め得るのか、エスエフシーの実態解明を含めて、高度な法理論と調査能力を求められる、手間がかかるばかりでお金にならない闘いになるでしょう。良心的な弁護士の働きには、本当に頭が下がります。

あまり新聞にも載らない地味な闘いですが、市民の権利や生活を守るためにこのように日夜戦っている人たちもいることを知ってほしくて、長い文章を書きました。最後まで読んでくださって有り難うございます。