英国の失敗から学ぶ

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1970年代の話。
英国のエアロ・スペース社が、2割の労働者をリストラしようとした。

社内に13もあった労働組合が、その横断組織「職場代表合同委員会(SSCC)」をつくり、会社に画期的な提案をした。自社の現場の特徴と生産能力を誰よりも知っている労働者、エンジニアが、経営陣の誰も思いつかなかった再建策を提案したのだ。

「代替企業プラン」という。

自社の石炭・石油エネルギーの6割が無駄に捨てられていることを知った彼らは、再生可能エネルギー、エネルギー節約技術、効率化に取り組んだ。1976年の段階で、エンジンとバッテリーで動き、燃費を半分にするハイブリッドカーを設計した。トヨタより早かったのだ!

住宅用ヒートポンプ、水素電池システム、また同社は航空会社なので、航空力学を応用した風力発電機を設計した。途上国向け小規模発電機、軽量トラック、線路・道路両用トラック、その他、レーダー技術を応用した視覚支援装置など医療機器のアイデアもあった。

どれもこれも、いち早く取り組んでいれば膨大な利益を生んだはずの商品ばかりだ。これらの生産ラインは労働集約的なので、リストラどころかさらに18000人の雇用を産み、会社に結構な利益をもたらすはずだった。

単に無神経というだけでなく、完全に頭がどうにかしていなければ、このように創造的で画期的な再建プランに反対などできるはずがないではないか。このときこのプランを採用していれば、いまごろエアロスペース社は世界のトップ企業だったろう。

残念ながらエアロ・スペース社の経営陣と株主は、短期的利益をつかめるはずのリストラと工場閉鎖プランに夢中になっており、頑として労働者の提案を受け入れなかった。

また残念なことに、強力な労組本体も、「職場代表合同委員会(SSCC)」に実権を奪われまいというセクト主義で、非協力的だった。SSCCも組合や労働党政権との長々しい不毛な交渉に引きずり込まれ、職場固めを怠ったので、時間がたつとともに職場の改革意欲が失われ、ついに活力を失って会社が勝利した。

みんな少しずつ愚かだった。そのせいで資本家は会社発展の機会を失い、労働者は仕事を失い、労組と労働党は足下の組織を失い、SSCCは存在そのものを失った。労働者の自発的能力を信じなかったせいで、誰も得をしなかった。

この出来事の教訓は深い。大切なのは合理的思考、合理的選択だ。

野田を辞めさせれば未来は開けるのか、
エネルギー政策としての反原発を、反野田という政治課題の中に解消していないか、
節電という精神力だのみはいずれ疲弊しないか、
再生可能エネルギーの普及は間に合うのか、
原発をなくすには高効率低電力システムが不可欠だが、その開発を政策支援しなくていいのか、

原発がなくても長期的エネルギー展望は大丈夫なのか、
経済成長しなくてもいいのか、
これらの課題を資本家や保守政治家のヘゲモニーにゆだねていいのか、
今こそ、市民がいち早く積極的に政策課題として提起すべきではないのか、

などなど、固定観念とドグマを捨てて、市民が全体で合理的に検討しなければならない時なのだが。