[政治手法]幼稚園の畑つぶしと商工ローンの会社つぶしの共通点

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橋下知事が保育園の畑を問答無用につぶした件で、彼が以前アイフル系商工ローン大手のシティズの顧問弁護士だったのをあらためて思い出しました。どうもそのやり口が似ているなあと。で、調べてみたことを書こうと思います。

商工ローンとは「目ん玉売れ、腎臓売れ」で有名になったロプロ(旧日栄)や、同じく国会喚問を受けたSFCG(旧商工ファンド)に代表される、商売人相手の高利貸しです。

商工ファンドは主に29.2パーセント前後の、利息制限法違反の高利契約を結んで零細企業の社長に貸し付けていました。商売の利益なんて投下資本のせいぜい数パーセントですから、こんな資金を元手に商売をしていても早晩行き詰まるのは必至です。

そこで返済が苦しくなった社長は弁護士や司法書士に相談します。弁護士などは和解を提案するために、商工ファンドにあてて、これまでの貸し借りデータを全部出すように申し入れる通知を送ります。するとつぎのような事態が発生します。

商工ファンドは間髪入れずに銀行預金を差し押さえます。銀行は驚き、融資をストップして、回収にかかります。こうなると会社は立ち行きません。たちまち倒産です。

商工ファンドは同時に連帯保証人の家屋敷や工場などを差し押さえます。彼らは不動産を売却して貸した金を回収します。あとに残るのはつぶれた会社。生活手段を奪われた社長と連帯保証人。行き場をなくした従業員……。

彼らの一生はめちゃくちゃです。保険金で借金を返してほしいと遺言して首をくくった社長、焼身自殺で抗議した社長、心労で倒れたり精神をやんだり自殺した配偶者、自殺未遂で一生寝たきりになった連帯保証人、離婚、一家離散、多重債務化……。悲劇は数えきれません。

こんなことができるのは、融資の際にうまく言いくるめて「強制執行認諾の公正証書作成の委任状」を取っているからです。借りた側はそんな公正証書は見たこともありません。商工ファンドの社員が委任状を使って公証人役場で勝手につくるからです。

商工ファンドのこういう手口が怖くて、弁護士も長い間うっかり彼らには手を出せなかったくらいです。法的テロといわれています。

これらの行為は外形的には合法です。裁判所も商工ファンドの主張を認めます。しかし出発点が間違っています。商工ファンドは利息制限法を守らず、法定外の収益を得てきました。法律外の利益を得てきた会社が、自分の更なる利益を得るために法律を利用するのは、何としても腑に落ちません。

続出する悲惨な被害に目をくれることなく、彼らはいまだに同じような手口で高利をかすめ取っています。

さて、橋下知事のやり方も、外形的には合法です。4月に収容の裁定が出ていましたし、地裁もその裁定が正しいと結論しています。園長は即時抗告していますが、即時抗告には執行を止める力がありません。だからいつ執行しようが大阪府の自由だと言われればその通りです。園児の登園時刻に合わせて執行してはいけない法律はありません。たまたま通りかかった園児が行ってしまうまで待たずに力ずくで執行しても違法ではありません。しかし、違法じゃないというだけのことです。

つぎのような事実を知れば、どうでしょう。

  1. 収容されたのは高速道路本体を建設する場所ではなく、工事に関連する場所でした。(資材置き場?)
  2. そこを収容しなくても高速道路の建設はできます。
  3. 必ずそこを収容しなければならない理由はありません。
  4. 付随施設を別の所に移す選択もあったはずだけれど、大阪府はその選択肢を除外しました。
  5. 後に述べる事情により、収容を延期する方が良かったかも知れませんが、その選択も除外しました。

つまりそこを今すぐどうしても収容しなければならない必然性はなく、ただそのように橋下知事が決めただけなんです。決め方に違法性はありません。多数党のゴリ押しだったかも知れないけれど、議会も賛成しています。役人がする行政手続きにミスなんかありません。違法性もミスもなければ、裁判所も正当性を認めます。でも、それだけのことです。どうして保育園の畑を直ちにつぶさなければならないのかという説明責任を果たしていると思えません。

大阪府にも言い分はあるでしょう。「どこに作るのであっても、必ずそこでなければならない理由はない。ないけれど、どこかに作らなくてはならないのも事実だ。みんなが園長と同じことを言い出してどこにも作れなくなっては困るではないか」。それはそうです。だから、より慎重でなければならないんです。どこでも良いものを、あえてそこに作るために土地を差し出せと言うのですから。

その土地を収容されては困る理由を聞けば、なるほどと思います。そこは相続地なんだそうです。畑だったら20年使えば相続税が無税になります。で、なんと今年は19年目だそうです。収容が来年ならば相続税がいらなくなるけど、今年だったら2300万円の相続税に19年分の利息をつけて支払わなければならない。保育園なんてそんなに儲かるものでもないから、園長さんは困るでしょう。代替地をもらっても、相続税が支払えなければその土地を物納しなきゃならないかも知れません。そしたら畑がなくなってしまいます。

場合によれば相続税支払いのために保育園の経営に支障をきたすかも知れません。園長さんが無理な抵抗をしたくなる心情も理解できますよね。なんであと2週間待たないんだという園長の言葉は、どうしても収容するのならせめてそうしてほしかったという意味であって、2週間たてば収容に納得するかと言えば、しなかったでしょう。

大阪府が付随施設を別の所に作るか、来年までその工事を待つかすれば、円満に立ち退きができたのではないでしょうか。それで高速道路計画が頓挫するわけでもないんだし。だから「高速道路の開通が2週間遅れれば何億円もの損が出る」という橋下の弁はまったくの大間違いです。

こう考えれば、事業の必要性は理解できるにしても、強制収容の必然性とか緊急性があったのか、疑わしくなります。必然性・緊急性の強さと、収容される側の事情とのバランスが取れていないと思います。

外形的に違法性がないというだけで、法律の執行によって他人の生活がどうなるかということは一切考慮しない。商工ファンドと橋下知事のやり方、よく似ていませんかねえ。