派遣村 産経記事のボロを暴く

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下記は「MSN産経ニュース」の記事。

【派遣村】所在不明者約90人戻る 「無断外泊禁止」の張り紙効果?
2010.1.10 22:01
*http://sankei.jp.msn.com/politics/local/100110/lcl1001102207002-n1.htm

年末年始に住居がない失業者に宿泊場所や食事を提供する東京都の「公設派遣村」で、就活費の支給直後に250人の所在不明者が出た問題で、約90人が10日、施設に戻ってきたことが分かった。都は戻った人に事情を聴いて強制退所させるかどうかを判断する。
都関係者によると、都は10日、施設内に「3日以上の無断外泊者および1日以上外泊し15日までに戻らない人は強制退所させる」という趣旨の張り紙をしたという。都関係者は「所在不明の入所者間で『強制退所』の情報が広まったのではないか」としている。

あのう、この記事を書いた記者さんねえ。この記事だけ読むと、行方不明になっていた人が90人も帰ってきたように読めますよね。でもその人たちって、施設外にいた人ですよね。施設外にいた人が施設内の張り紙を見て帰ってきた? 何それ。

この不思議な謎は、じつは簡単に解けました。結論から言います。これは読者をわざと誤導する悪意ある扇動記事なのです。全国紙のやることではありません。

産経新聞の記事を日付を追って読んでいくと分かります。産経の記事がどのように矛盾しており、読者をミスリードするように書かれているか、並べてみれば一目瞭然です。

8日付
200人以上の所在が不明

9日付
行方不明者は……ほぼ倍増し102人。
4日間で入所者がほぼ半減した計算。

10日付
所在不明者約90人戻る
行方不明者は78人となった。

「入所者が半減」、「行方不明が倍増」。こんな文章を読んだら、そうかと思いますよね。でもならべてみれば、すごく矛盾していると思うでしょう?
所在不明200名 → 行方不明が倍増、102名。 → 90名戻って78名

何、それ。

どうしてこんなことになるのかといえば、「行方不明」と「所在不明」の違いをちゃんと説明しないで、わざと紛らわしく書いているからなんです。

「所在不明」とは、夕食のときにいなかったってことです。届けを出して外出して、夕食に間に合わなかった人が大半です。「行方不明」とは、夕食時にいなかった人の内、外出届の出ていない人です。
前夜から無断外泊した人の他、施設内にいて夕食を取らなかった人も含まれます。

実際には、10日の段階で546人登録されていて、減ったのは16人(届けを出して退所した人13人、強制退去2人、死亡1人)。うち、行方不明は78人ですが、施設内にいて夕食を食べなかった人と、無断退去した人の内訳は不明です。

結局のところ、利用者の内、無断で出ていって戻らない人は最大で78人なんです。これを「入所者の半分が所在不明」と表現するのは、正しいのでしょうか。「250人の所在不明者が出た問題で、約90人が10日、施設に戻ってきた」と書くのは正確なんでしょうか。

はっきりいって、ウソですよね。正確に書くならば、こうなります、「外出した利用者のうち、いつもは150人程度が夕食に間に合わなかったが、この日はそれが76人に減った」

産経の記事は、派遣村否定の方向に読者を誘導するものです。いえ、ウソがまじっているから「誤導」と言わねばなりません。ウソをまじえて書かれた悪意ある記事なんて、「報道」とよべるのでしょうか。こういうのって、正しくは「扇動」といいませんか。貧しい人を貶める、心の貧しい新聞、それが産経です。

行方不明と所在不明の区別は、産経新聞記事を分析したので判明しました。
データは末尾にまとめています。

さて、帰ってこない人ですが、全体の7人に1人です。
これが多いと見るか、少ないと見るかは人それぞれでしょうが、事情のある方もあったようです。

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この件について書かれたブログ記事を紹介しますので、ご自分で考えてくだされば有り難いです。

ワンストップの会、1月9日の相談活動
2010/1/9
http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10430621776.html

それから、1月6日に戻って来なかった入所者がいるというニュースが流れた件ですが、いくつかの報道で「200人」とされているそうですが、施設内で東京都から情報を聞いた方によると「42人」が正しいそうです。「200人」というのはどこから出てきた情報なのでしょうね?

「逃亡」だということも断定できた訳ではなく、アパート物件を探していて帰りそびれたケースや、お金を落としてしまって帰れなかったというケースもあり、戻ってきた方もいます。私が実際お話しした方はハローワークに向かう途中でお金を落としてしまったそうで、視覚障害がある方なので寮に連絡もできず、仕方がないので再び野宿をし、その後知り合いのボランティアの方と偶然会って近くの福祉事務所に連れて行ってもらい、交通費を借りて戻ってきたそうです。

また、実際にルールを守れない人が一部にはいるのだろうが、真面目に生活を再建しようとしている人たちもいるのだから、みんな同じように見ないでほしいとおっしゃっていた方もいらっしゃいました。

報道では、東京都の対応がどのようなものなのかということにはほとんど触れていません。オリンピックセンターから臨時の宿泊施設へ、そしてまたなぎさ寮へと移る際の入所者の不安をどれだけフォローできたのか、情報伝達の手段はどのようなもので、きちんと入所者に行き渡っているのかなど、確認すべきことはいろいろあるでしょう。少なくとも6日までは報道関係者は自由になぎさ寮内に入ることができ、いくらでも取材ができたはずなのですけどね。一方的に一部の入所者の素行だけを取り上げて批判するというやり方はいかがなものかと思います。

石原都知事は視察もせずに入所者の人たちが仕事を探す気がないかのように一方的に決め付けていましたが、ハローワークからの求人票が並べられているのは私は今日初めてみました。求人票が置いてあるそばの壁に「ハローワーク求人票」という掲示がしてあるだけで、他に施設内に“ここに求人票がある”とわかるような掲示は見かけませんでした。日中のアナウンスもありませんでした。どのように情報を周知しているのでしょうか?

こうしたことを報道の方々にはきちんと調べて、事実関係をそれぞれの視点から確認して判断し、記事を書いていただきたいものです。

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<産経新聞から拾ったデータ>

1月8日記事
見出し 派遣村、所在不明200人 就活費2万円支給後に続出
利用者 557人。
夕食配膳数 356人分
所在不明者 201人
外出して戻らない 155人
行方不明 46人

1月9日記事
見出し 支給後に派遣村入所者の半分が所在不明に
利用者 548人。前日から6人退所。(←計算あわないw)
夕食配膳数 303人分
所在不明者 約250人
外出して戻らない 143人
行方不明 102人

1月10日記事
見出し 所在不明者約90人戻る 「無断外泊禁止」の張り紙効果?
利用者 546人。前日から2人退所。
夕食配膳数 392人
所在不明者 154人
外出して戻らない 76人
行方不明 78人