私が姫路市に震災ガレキ受入を求めるメールを送った理由

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私は姫路市に震災ガレキ受入を求めるメールを送りました。
その理由を簡単に書いてみます。

1.広域処理されるガレキは核のゴミではない

広域処理の対象となるガレキは宮城県と岩手県のものだけで、福島県のものは含まれていません。宮城県の「汚染」は東京都東部、千葉北部、埼玉県東部と同じくらいで、茨城県北部よりきれいなくらいです。岩手県はもっと安心です。福島第一原発から岩手県宮古までの距離は、福島第一原発から東京都新宿区よりも遠いのだから。

このデータは、反原発派で鳴る早川由紀夫教授から拝借したものなので、いかなる反原発派の方でも受け入れてくださるものと信じます。
http://gunma.zamurai.jp/pub/2011/0911gmap06.jpg

広域処理の対象となるガレキは東京都のゴミよりもきれいなのだから、断じて「核のゴミ」などではないのです。

2.受け入れ反対の地域自身が、もっと危険なゴミを地域外に排出している

「たとえ1Bq(ベクレル)でも汚染を拡散すべきではない」という理由で広域処理に反対する人がいる。

放射線検査によれば、東京都内から収拾されたゴミは、今回広域処理の対象となったガレキの2倍もの放射線量だそうです。汚染といえないほどの汚染でも「拡散するな」というなら、津波被災地よりも「汚染」されている東京都のゴミは、金輪際都外に持ち出してはならないことになります。

ところで東京都のゴミ処理の現状は以下の通りです。

東京都の産業廃棄物の広域処理の状況 

地域別にみた中間処理の割合は、都内で74%、都外で26%となっている。
最終処分の割合は、都内で26%、都外で74%となっており、都内から排出される産業廃棄物の多くが 都外で最終処分されている。
東京都環境局「東京都廃棄物処理計画(付属資料)」(2002年1月発行)p.59より
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/resource/attachement/fusyou.pdf

広域処理に反対するなら、同じ論理で東京都のゴミも都内に留め置くべきです。これから本格化するかも知れない広域処理どころか、反対派の論理を借りれば、いま現在、すでに東京都は広域処理対象の2倍も汚染された恐ろしい「核のゴミ」を拡散しているだから、これこそが緊急の課題であるはずです。

全ゴミの74%を最終的に都外に搬出している東京都民のみなさん、中でも広域処理に反対している都民の皆さんは、たったいまから全部のゴミを都内で処理するように闘ってくださるか、ご自分のゴミを少なくとも7割ほど減らしていただきたい。

東京都のゴミが都外処分されていることに反対しないのであれば、同じ論理で、広域処分にも反対すべきではないと思います。

3.なぜ困っている地域の復興に手を差し伸べないのか

「広域処理の対象は全ガレキ2400万tのたった2割。それが原因で復興が進まないことなどあり得ない」という理由で広域処理に反対する人がいる。

そんな単純なことなら、被災地が悲鳴を上げたりしないでしょう。もっと具体的に語らなければ実態が分かりません。コンクリートなど埋立可能なものは地元で処理することになっていて、広域処理の対象とされていません。県外で処分してほしいとお願いされているのは、可燃ゴミの一部です。

たとえば岩手の場合では、柱材、角材の瓦礫予想量52万tに対して、広域処理を希望しているのが47万tで、実に9割です。それは岩手県には柱材、角材の処理能力が60t/日しかないからです。それ以外の可燃系混合物113万tは、主に県内で処分する計画となっています。

いまのままでは、1年365日休まず処理しても(そんなことは不可能ですが)柱材、角材の処理に20年以上かかってしまいます。被災地はもともと人口が少なくて、処理能力も低いのです。処理場を増設したり、地元はやれることはやっているし、やろうとしているのです。それでもどうにもならない分を、引き受けて欲しいと言っているのです。

さらに、被災地自治体が処理しなければならないのはガレキだけではありません。1300万t~2800万tのヘドロがあります。ガレキより多いぐらいです。こういった処理に人手も金もかかるし、自治体職員は膨大な事務処理に追われているはずです。事務能力が追いつかないから、現場作業もはかどらない。県外で受け入れて貰えるなら、少しでもお願いしたいという被災地の言い分が、どうして間違っているでしょうか。

4.受け入れ反対はしょせんは地域エゴ

仮に、「広域処理ができなくても、復興が遅れる期間なんか、たかが知れている」というのが本当だったとしましょう。それが広域処理を拒む理由になるでしょうか。自分のところの問題は自分でかたづけろという自己責任の原則が正しいのでしょうか。ガレキ処理には利権が絡んでいるという噂が正しければ、それがガレキ受入を拒む理由になるのでしょうか。私はそんな言い分は正しくないと思います。

阪神大震災のときには、兵庫県は近隣の府県にガレキ処分を助けてもらいました。兵庫県でできるじゃないか、ガレキ処理に時間がかかっても復興は遅れないよとは、だれも言いませんでした。膨大なガレキが関空の埋立に投入されましたから、きっと利権も存在したことでしょうが、それが問題にされたということは一切ありませんでした。それよりも、神戸を助けようじゃないかという思いが優先したのだと思います。なのに、どうしていま同じようにできないのでしょうか。

受益者負担の原則を持ちだして、震災ガレキを東京都に持って行けという意見もあります。たしかに一理ありますが、賛同できません。なぜなら反対の声が一番大きいのが東京なのだし、そんな提案は都民が絶対に受け入れないからです。あっちに持って行け、こっちに持って行けと実現不可能な提案をぶつけ合っていたって、市民同士が仲違いするだけに終わってしまいます。そんな不毛な争いは、したくありません。

いろいろと理屈をつけても、結局のところ、放射能で汚れたゴミは持ち込むなと言うのがホンネだろうと思います。その言い分は一見正しく見えますが、実態からかけ離れた議論であり、しょせんは地域エゴではなかろうかというのが、私の評価です。

脱原発は方向としては正しい。わたしも先日はそういう趣旨で開かれた集会の中心を担いました。今後もそのスタンスでたたかうつもりです。しかし、広域処理反対を脱原発運動の道具にするのには、絶対に反対です。

お気に召さない方もおられるでしょうが、これが、私が姫路市に震災ガレキ受入を求めるメールを送った理由です。

■追記1:なぜ広域処理が必要か(阪神大震災は近隣で処理した)という疑問への回答

兵庫県は処理能力がもともと高かったし、近隣に大阪という大都市もあり、そういう点は恵まれていました。被災地もわりと局限されてたから、50kmしか離れていないわが姫路市でもかなり引き受けました。それでも可燃物は処理しきれず、横浜市、川崎市、埼玉県に引き受けてもらったんです。

なんで沖縄まで運ぶのかといえば、他に引き受け手がないからじゃないでしょうか。近くで受け入れてくれるなら、わざわざ金をかけて遠くに運んだりしないと思いますよ。

■追記2:ガレキ処理にからむ利権とそれゆえの高コストを指摘する意見への回答

利権のことを言い出したら公共事業なんか何も出来なくなるんでは? 現在の日本国内では、国・地方公共団体を問わず、とりわけ建設事業関係では、事実上すべての公共事業に利権が絡んでいると思いますが。

(処理費用が阪神震災時の10倍も高いという指摘に対し)10倍の高値というのは言い過ぎです。田中康夫氏によれば、阪神大震災の時は1t当たり約22,000円、今回は63,000円だというから、3倍弱です。高いことは高い。しかしすべて利権絡みのせいでしょうか。この理由を考えてみます。

まず、阪神大震災の処理費用というのは、あらゆる瓦礫処理費用の平均額です。神戸市のHPに資料がありますが、阪神大震災の場合、コンクリート系廃棄物については神戸港や関空の海面埋立用材として再利用できました。ほとんどタダです。お金がかかったのは埋立に使えない可燃物(一般可燃物と木材)です。全部の平均が22,000円だから、木材には平均以上にお金がかかっているのです。そしていま広域処理の対象となっているのは、その木材なのです。東北の場合もコンクリは埋立に使うそうだから、最終決算はもっと安くなると思います。

つぎに、処分費用は、分別費用と運搬費用と最終処分費用を合算したものです。神戸市の場合、最終処分費用は7,000円でした。22,000円のうち、15,000円は分別など前処理費用なのです。今回の63,000円というのも、前処理費用込みだと思います。神戸の場合、瓦礫は地震でつぶれた場所にあったので、分別は容易でした。今回は津波でかき混ぜられて何もかもがごちゃごちゃだから、分別に非常に手間がかかるそうです。そういったことも、高値の原因でしょう。

あと、飛散防止のために、ダンプではなく完全密閉型コンテナで運んだりするのでコストがかかります。最後に、理由の一端に放射能があると思われます。普通の値段では業者が引き受けてくれない。63,000円といえば高いようですが、こうして見ると、それもむべなるかなと思いませんか?

ついでに神戸の可燃物瓦礫処分の内容を詳しく見ましょう。神戸市は大都市だから施設が整っていたのに、既設の焼却炉で燃やせたのはたった6.7%、仮設焼却炉で34.3%です。20.5%は野焼きしていますが、いまは法改正でこんなこと許されません。県外に委託したのは16.9%でした。委託先は神奈川、広島、福岡と広範囲です。残りが県内委託です。そして、すべての処分に3年かかっています。

岩手・宮城は神戸ほど施設が整っていません。仮設焼却場はどんどん作っていますが、人口が少ないので、本格的な焼却炉を建設しても、数年後はスクラップにしなければなりません。それにだって金がかかるし、無駄ですよね。野焼き処理は違法だからできません。

こんなにハンディがあって、困っているから助けて欲しいと言われているのに、どうして協力してはいけないのか、私にはさっぱりわかりません。

■追記3:安全が確認されたものは受け入れるという徳島県の回答について

徳島県は、「安全な瓦礫については協力したいという思いはございます」と言っている。すべての瓦礫を拒否するということではなく、きれいな瓦礫なら受け入れるというのですから、市民参加の検出体制をつくるなりして、1日も早く受け入れていただきたいと思います。いかにホットスポットがあるとはいえ、宮城・岩手の瓦礫がそんなに汚染されているとは考えられません。

「4000べクレルこえた廃棄物があった」というのは、あれは震災瓦礫ではありませんし、去年からフィルターに蓄積を続けていたちりから検出されたものです。フィルターで長時間濾し取ればどこでもそうなるし、それは逆にフィルターがちゃんと放射性物質を含んだちりを吸着している証左でもあり、フィルターを通せば安全だというデータでもあります。

■追記4:ガレキ処理における政府のダブルスタンダードを懸念する意見への回答

二重基準について誤解がないでしょうか。

100Bqは、放射性物質として扱う必要がなく、自由に再利用できる廃棄物の規準です。(原子炉規制法)

8000Bqは、放射性物質として扱わねばならず、再利用してはならず、廃棄するのに特別の措置を必要とする廃棄物の規準です。(震災特別措置法)

2つは同じものではありません。

100BqはIAEA(国際原子力機関)の安全指針にもとづいていると言われており、たしかにそれは間違っていませんが、その基づき方については周知されていません。

IAEA安全指針で「これ以下は放射性物質として扱わない」とされているのは、セシウム134で500Bq/kg、セシウム137で800Bq/kgの、それぞれ10倍以内というものです。日本はこの安全指針に、さらに安全係数をかけて、100Bqとしています。ですから、100Bqを超えたらIAEA規準違反だというのは、大きな誤解です。

セシウム137なら最大で8000Bq以下を放射性物質として扱わないというIAEA安全指針に対し、新基準は100~8000Bqを「特別な措置が必要な放射性物質」として扱うのだから、かなり厳しい規準であるといえるでしょう。

新基準がどうして必要なのか、喩えて言えば、こうではないでしょうか。これまでは、「水道水は自由に飲んでよい」、「それ以外は飲んではいけない」という2種類の規則しかなかった。しかし災害で長期にわたり水道が使えなくなったので、「赤十字の安全規準をクリアした井戸水は飲んでよい」ことにした。これに対し「これまで飲んではいけなかったものが、どうして急に飲めるようになるのだ」という心配はわかります。しかし間違っていたのは、水道が壊れるはずがないという前提で作っていたこれまでの規準ですよね。

原子力安全神話に毒されて、「特別な管理が必要」な廃棄物が大量発生する事態に備えていなかった政府・国会の怠慢は、責められるべきでしょう。そういう恐ろしいものを産み出した東京電力の責任は、強く追及すべきでしょう。

が、それはそれとして、別問題として扱わなければなりません。私たちは、「特別な管理の必要な廃棄物」ができてしまった時代に突入しているのですから、その時代にふさわしいリスクコミュニケーションが必要だと思います。水道が壊れたことをいくら追及しても、きれいな水が出てくるわけではありません。その時の条件下で、何とか飲み水を確保しなければならない。そこで、新基準ははたして飲める水なのかどうなのか、くやしいけれどその検討が必要になるわけですよね。

8000Bqの廃棄物を直接扱って、触ったりホコリを吸ったりする作業員でも、被曝量は年間1mSv以下だそうです。まして周辺環境にはほとんど影響がないと言えると思います。低線量被曝の影響はよくわかっていないのだから危険だとよく言われますが、その言い方は正確ではありません。理論的には影響があるかも知れないが、いくら微に入り細を穿っても、影響を検出できないのです。検出できないから影響を数値化できないのは、「わかっていない」ことと違います。ですから、岩手・宮城の瓦礫は安心して受け入れるべきだと思うのです。

また国費を使うなとのことですが、阪神・淡路大震災の瓦礫処理費用は国から出しています。政府は3519億円を震災2か月後に予算化しました。東北大震災は阪神大震災の1.7倍の瓦礫と、ほとんど2倍のヘドロ、合わせて阪神の4倍近い災害廃棄物処分が必要です。しかも被災地人口は兵庫県より少ないのです。それでも地方自治体に負担せよとおっしゃいますか?