公文書にみる従軍慰安婦(3)契約条件

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戦場で、慰安婦たちはどんな暮らしだったのだろう。「慰安所運営規定」が軍によって作られていて、参考になる。規定は各部隊でさまざまなので、共通部分だけを抽出する。

  • 休日はほとんど定められていない。多くて月に2日である。
  • 外出は「許可なくして定められた区域を離れてはならない」とある。
  • 前線では「慰安婦の外出を厳重取締」とか「散歩は午前8時から午前10時まで」などと定められていて、行動の自由はほとんどなかったようだ。
  • 兵は慰安所で現金を支払わず、割り当てのキップで支払う。
  • 軍がそれをもとに慰安所経営者に軍票を支払う。

女性に支払われる報酬割合も軍が決めていた。産経新聞社元会長である鹿島氏の語るところによれば、軍の経理学校で慰安所の経理方法を学んだそうだ。彼は冗談でこれを「ピー屋施行規則」とよんでいる。

つぎに、女性達はどんな契約を結んで戦地へ赴いたのだろう。

群馬県警察に「上海派遣軍慰安所酌婦契約条件」(*末尾に原文)という文書が残っている。

まずは、その資料の解説をしておこう。この資料がどうして残っているのか、その背景を説明する。女性を集めている業者が挙動不審なので警察が逮捕した。業者は、自分は軍の許可を得て女を集めているのだと説明した。警察はそんなことは「常識では考えられない」として、事実関係を確かめた。

群馬県警察の文書をそのまま引用する。

(但しとカタカナと一部の漢字をひらがなに直す。)

本件は果たして軍の依頼あるや否や不明、かつ公秩良俗に反するが如き事業を公々然と吹聴するが如きは皇軍の威信を失墜するもはなはだしきものと認め、厳重取締方、所轄前橋警察署長に対し指揮いたし置き候。

ところが各方面へ問い合わせた結果、どうやら軍が内務省と組んで密かにそういうことをしている、ということがわかったので、業者は釈放された。末尾に紹介した契約書「上海派遣軍慰安所酌婦契約条件」はそのときに警察に押さえられた証拠のひとつだ。

さて、この契約書の内容だが、ひどいものだ。これは前借金で身分をしばって働かせる、いわゆる「身売り」という契約だ。こういうのは公序良俗違反なので、民法上は無効だった。明治時代に、大審院でその判例が確定している。ただし刑法上の罪はなかった。

とはいえ契約書は16才の女子にまで売春させようとするものだ。こんな子どもに売春させるのは、いくら親の同意があっても完全に違法だ。これほどひどい契約書を持ち歩いて女性をリクルートしていては、警察につけ狙われるのは当然である。それでも軍の威光があれば、まかりとおってしまった。そういう時代だった。

契約書には、前借金のうち、2割は天引されると書いてある。前借金の相場は500円だったようだ。都会で働く会社員の初任給が40円だったというので、その1年分。農家には大金だった。

しかし500円借りても、2割を天引されるので手に乗るのは400円。2年間働いて返さなければならないのは、元の500円だ。2年で2割、アドオン金利で年利10%。実質年利はもう少し高くなる。社内貸付としては、常識はずれの高利と言える。

慰安婦は2年間の契約だが、病気などで中途でリタイアしたら、年利12%をつけて前借金を返さねばならない。そのうえ、別に前借金の1割という高額な違約金を取られるという。これでは女性はなにがあろうと辞めるに辞められない。

しかし本当のところ、業者側は女性に途中でリタイアされたって痛くもかゆくもないのだ。それは後で計算する。

慰安婦が月給として手に出来るのは、水揚げの1割だった。兵が支払った料金は1回2円だったというから、1日5人を相手にして10円。25日働けば250円の水揚げだ。それで手に出来るのが25円だ。小野田元少尉によれば、普通のサラリーマンの初任給が40円だった。それが20万円にあたるとすれば、慰安婦の手取りは12万5000円。

住む、食べる、置き薬代は、業者負担だと書いてある。それ以外の経費、たとえば着物や下着や化粧道具、化粧品、日用雑貨、医者代、嗜好品、酒、タバコなどは女性が自分で負担しなければならない。彼女たちは原則として外出もできないので、ちょっと手慰みにバクチでもおぼえさせられたら、あっという間にカスられてしまう金額だ。

ところで証言によれば、1日10人も相手をさせられた女性もいたという。これぐらい働けば、女性にも貯金ができる。だが、そういうタフな一部の女性をのぞき、普通の体力、普通の性的能力しかない女性には、経済的実入りは驚くほど少ない。まさしく借金でしばられた、まったくの債務奴隷だったと言える。

さて、女性ひとりが月に250円ほど、普通にかせいでくれれば、給料を支払ったあとで雇い主が手にできるのは225円。これなら500円貸し付けても、2ヶ月ちょっとで元が取れる。半年働いてくれれば、充分だ。途中でリタイアされたってなんてことない。

前借金を回収したあとは「維持管理費」を支出するだけで、稼げば稼ぐほど丸儲けだ。維持費と言ったって、建物は軍が建ててくれるのだし、食料まで支給された所もあるから、本当の丸儲け。雇い主側としてはもうかってしかたがない。笑いの止まらない商売だったろう。

女性さえ集めればこんなにおいしい商売だもの、金にいやしい連中が、まともな集め方をしてすませていたかどうか。現在の闇金業やウラ風俗業にたずさわる紳士たちがどういうことをしているか考えれば、類推できるのではあるまいか。

上海派遣軍慰安所酌婦契約条件

拝啓 年内余日も無之嘸御繁忙の事と奉存候陳者今回軍部の御了解の元に中支方面に皇軍将士慰安を目的とする慰安所設立致す事と相成り左之条件を以て約五百名の酌婦を募集致候に付何卒大至急御手配煩し度御報知次第直に出張可仕候間御一報被下度奉願候

昭和十二年十二月二十八日
大内殿

条件

一、契約年限満二ヶ年
一、前借金五百円ヨリ千円迄
但シ、前借金ノ内二割ヲ控除シ、身付金及乗込費ニ充当ス
一、年齢満十六才ヨリ三十才迄
一、身体壮健ニシテ親権者ノ承諾ヲ要ス。但シ養女籍ニ在ル者ハ実家ノ承諾ナキモ差支ナシ
一、前借金返済方法ハ年限完了ト同時ニ消滅ス
即チ年期中仮令病気休養スルトモ年期満了ト同時前借金ハ完済ス
一、利息ハ年期中ナシ。途中廃棄ノ場合ハ残金ニ対シ月壱歩
一、違約金ハ一ヶ年内前借金ノ一割
一、年期途中廃棄ノ場合ハ日割計算トス
一、年期満了帰国ノ際ハ、帰還旅費ハ抱主負担トス
一、精算ハ稼高ノ一割ヲ本人所得トシ毎月支給ス
一、年期無事満了ノ場合ハ本人稼高ニ応ジ、応分ノ慰労金ヲ支給ス
一、衣類、寝具食料入浴料医薬費ハ抱主負担トス