歴史の偽造ということ 一人のクソ野郎の話

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『満州国治安維持法』をつくった、満州国司法部司法官、飯盛重任という日本人の話を書きます。この人は戦後、日本の裁判官になった人です。

彼がつくった『満州国治安維持法』。それはこんな法律でした。

満州国治安維持法
第1条
国体を変革することを目的として団体を結成したる者は……死刑または無期懲役
……団体の目的遂行のためにする行為をなしたる者は死刑または十年以上……

「国体」を変えようとして組織をつくったら殺すぞという脅しの法律です。満州国の「国体」とは何かは、あとから書きます。ここではまず「団体の目的遂行のためにする行為」、いわゆる「目的遂行罪」とはどういうものかを解説します。これは日本国内でも反戦行動や人権擁護運動を最終的に壊滅に追い込んだ恐ろしい法律でした。

満州ではどんな人がこの法律で捕まえられたのでしょうか。「目的遂行罪」は、私財を投じて孤児院を開いていた人にまでも及んでいます。満州には戦火で親を失ったり、親が強制動員で取られたりしたために、孤児となった少年少女がたくさんいました。この子たちを養うことが罪だというのです。なぜなら、その子たちの親には抗日ゲリラがいるかも知れない。「匪賊」の子どもを養うことは、抗日運動の支援になる。抗日運動とは、満州国の国体を揺るがすものであり、本人に自覚がなくともその目的のために役立っていれば、罪である。

こういうとんでもない理由で逮捕・収監することができるのが、「目的遂行罪」なのです。

そんなつもりはないというのは、言い訳になりません。これでは、気にくわなければどんな行為でも罪にできます。あとに残された、寄る辺ない子どもたちの運命は、わかりません。法務記録に残っていないからです。なんと無慈悲で非人間的な法律でしょう。理由が何であれ、当局からにらまれたら、それでおしまい。満州国とは、そういう国でした。

その満州国の「国体」とは何でしょうか。

満州国治安維持法
第3条
国体を否定し、または建国神廟または帝室の尊厳を冒涜……死刑または無期懲役……に処す

「建国神廟」とか「帝室」という文言がありますね。「帝室」とは、満州国の皇帝・溥儀(ふぎ)の帝室です。では「建国神廟」とは何でしょうか。これが何かというと、なんと「天照皇太神宮」なのです。

満州国司法部参事官である日本人、八田卯一郎は『満州国治安維持法の解説』に満州国の「国体」の定義を記しています。「日満不可分一徳一心の基調の上に立たせ給ふ」と。一徳とか一心というのは、日本の天皇の「徳」や「心」のことです。つまり満州国とは、日本と不可分で、天皇の意のままになって、はじめて成立する。それが満州国の「国体」なのです。

皇帝はいても、建国の神は天照大神。日本国天皇がいてはじめて成立する国体。そのように定めたのは日本人の司法官。その中身を解説して教え諭すのも日本人。満州国とはそういう国でした。言葉の正しい意味での「かいらい国家」でした。

さて、いよいよ『満州国治安維持法』をつくった飯盛重任のことです。飯盛は、敗戦後、捕虜として中国の戦犯管理所に収容されました。ここで彼はこんなことを書いています。

……僕は今話した偽満(偽物国家満州国の意味)の惨酷きわまる植民地統治に対し、敢然と起って抗争した勇敢なる愛国中国人民に対し、過酷きわまる血の弾圧をもって報いたのだ。

(以下その具体例が続く)……そして自分は直接手を下して人を殺さないで大殺人計画、大掠奪計画を立てて、そのための複雑怪奇な機構を組織し、下部機構の者にこれを執行せしめて自分は何か高級で上品な仕事をしているごとく紳士然とすました顔つきでいる。

僕の姿は人間ではない。鬼の姿だ。これが僕の本質だったのだ。

まことに立派な反省悔悟の作文です。彼はこのように平謝りに謝って不起訴となり、わりと早く日本に帰ってきました。彼はその後、裁判官になります。そして何をしたか。

60年安保裁判の時、法廷秩序を乱したという理由で弁護士を監置しました。61年、愛国党赤尾敏が中央公論社長をテロ攻撃した時には、テロを招く雑誌社の言論が良くないとの所見を発表しました。64年、鹿児島地裁所長に栄転。この年、『革新団体違憲論』(!)を発表。さらに最高裁が地裁判決に関与した「平賀書簡」を擁護しました。70年、全国の地裁・家裁裁判官に天皇制や資本主義に関する思想調査を行いました。この年に退官し、あとは右翼論客として売文稼業でいい暮らしをしたようです。

彼は中国で書いた反省の書簡についてこう述べています。「常識のある人なら、中共に抑留されているとき、本当のことをいうなど考えられない」「あれは偽装の作文だ」

飯盛重任という人の一生を振り返ってみましょう。

満州国では頭の良さを生かして、日本軍が気に入るような法律を上手につくり、また複雑な官僚制度をみごとに組織します。そして強大な国家権力の中堅官吏として民衆を弾圧し、威張り散らし、いい暮らしをしていました。

捕虜となるやコロリと態度をひるがえして、中国政府に気に入られようとして、上手な作文をたくさん書きました。たぶん彼は中国の望むような、模範的な戦争犯罪人だったのでしょう。

帰国して、司法試験なしで首尾良く裁判官になりました。するとツルリと顔をぬぐって、自民党政府にご機嫌うかがいを繰り返して、うまく世渡りして出世しました。権力側に都合のよい理屈をもっともらしく考え出して、法律をつかって民衆弾圧の手先になって威張り散らしました。

どうでしょうか、こういう男。むかつくクソ野郎ではありませんか。しかしこういうゲスじじいがエリートには一杯います。ペロリと舌を出して「軍の命令は確認できない」とかうそぶきながら、メシを食っています。裁判官には立派な人が多いです。けれども中にはこういうのもいるんです。