「元アルカイダ」でも和解ができるなら・・・

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1069647308&owner_id=12631570

「ソマリア暫定大統領、イスラム穏健派アハメド氏を選出」
読売新聞  2009/1/31  20:13
*http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=737140&media_id=20

なんなんですかね、これは。停戦に合意した和平派みたいに評価されているけど、2年前には彼をアルカイダだと決めつけてたじゃないか。アルカイダとの和平はあり得ないと言ってたじゃん。ブッシュの振り上げたこぶしで何人の人が無駄に死んだんだか。

とは言うものの、筋が通らなくても、主要な戦いが収まるなら歓迎すべきことです。確信犯的テロリストとは非妥協的に戦うが、いわば「攘夷」をやってるだけのゲリラ戦士とは和解できるというオバマ戦略の表れかも知れません。それならばアフガンの和平も期待できるかも知れません。

でも歴史の教訓として、ここに至るプロセスを振り返るのも無駄ではないでしょう。もともと米国がソマリアに介入したのは新大統領が率いていた「イスラム法廷会議」を追放するためでした。それが失敗して、イスラム法廷会議は首都を掌握しました。

アメリカのソマリア工作の失敗
ジェラール・プリュニエ
ル・モンド・ディプロマティーク 日本語・電子版2006年9月号
http://www.diplo.jp/articles06/0609-3.html

その後「テロとの戦い」を唱える米国の後押しでエチオピア軍が介入し、イスラム法廷会議を追い落としました。

Ethiopian Aircraft Bomb Somali Towns In Escalating Conflict
Stephanie McCrummen
Washington Post 2006/12/25
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/12/24/AR2006122400073.html

米国はこの紛争に空母を派遣し、AC130でイスラム法廷会議を上空から砲撃しています。ヘリ部隊が攻撃に参加したという情報もありました。

US strikes on al-Qa’ida chiefs kill nomads
Anne Penketh
Independent  2007/1/13
http://www.independent.co.uk/news/world/africa/us-strikes-on-alqaida-chiefs-kill-nomads-431862.html

米国はイスラム法廷会議をアルカイダだと決めつけて、徹底してたたくつもりだったようです。日本国内の報道は少なかったけれど、米国寄りの情報ばかりだったと思います。イスラム法廷会議=アルカイダ=テロリストというわけです。

その後エチオピアはソマリア人の反発を受けて撤退し、米国は攻撃の足がかりを失って、ソマリアから関心をなくしました。で、時が流れ、このたび米国とエチオピを相手に戦っていた当時のイスラム法廷会議議長が大統領になり、首都に返り咲くと「局面打開に期待がかかる」ですか。

大国の都合に振り回され、生活を破壊され、元政府軍の敗残兵からそそのかされて海賊のうまみを知ってしまった、気の毒なソマリアのマグロ漁師はどうなるんでしょうか。

BBCは海賊は3タイプのメンバーの共同作業だと書いています。

元漁師が操船し、元兵士が荒仕事を担い、技術者がパソコンやGPSを扱う。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/africa/7650415.stm

ニューヨークタイムズはソマリアの漁業を奪われた漁民が「税金を集める沿岸警備隊」と称して海賊を始めたと書いています。
http://www.nytimes.com/2008/10/01/world/africa/01pirates.html

ボイス・オブ・アメリカはマグロの争奪戦が原因だと書いています。先進国のマグロ漁船に漁場を奪われたので海賊を始めたと。ソマリア沖は屈指のマグロ漁場だそうです。
*http://www.voanews.com/english/2009-01-26-voa51.cfm

おそらくどれも正しいのでしょう。まず内戦で経済が崩壊し、家内産業だったマグロ漁の漁場を荒らされ、最後に津波で財産をなくした結果、食べるのに窮した漁民が、政府軍崩れの愚連隊と組んで海賊を始めたのではないでしょうか。海賊は悪いんだけど、だったらソマリアをムチャクチャにしたエチオピアや米国、それを支持した西欧や日本はどうなんだ。海賊“だけ”が悪いのか?