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戦争には戦争、と金総書記…北朝鮮の放送
読売新聞 – 2005月28日20:47
*http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1224548&media_id=20
韓国議会から推薦された民間調査委員が、魚雷説を真っ向から否定して、座礁説を発表しました。
爆発はなかった 魚雷もなかった
*http://adop.jp/svKP
■座礁説の要約
調査委員のシン氏は、これは事故だと言います。
座礁して、つぎに何かに衝突した。
シン氏がそう述べる理由を要約します。
- 天安から本部への第1通報は「座礁した」というものだった。
- 軍当局も家族に「座礁」と説明していた。
- 当初発表の事件発生時刻がちがう。
- 船体側面下部に座礁でついた大きなひっかき傷がある。
- ビルジキールが傷ついている。
- スクリューが前向きに曲がっている(座礁したのでスクリューを逆回転させ、後退したからだ)。
- 調査報告書は爆発を否定する記述ばかりだ。(「No penetration浸水なし、No burn damage火災跡なし、No heat熱の発生なし、No splinters裂け目なし、Cable covers are not damagedケーブル線カバー損傷なし、Oil tank and dump area not damaged at allオイル・タンクとダンプ・エリア損傷皆無」)。
■座礁説を検証する
「原潜と同士討ち説」よりかは、なんぼかまともですね。
「原潜説」の否定はこちら↓
泥mixi日記「天安を撃沈したのは米原子力潜水艦なのか」
http://doro-project.net/archives/822
すべての情報が公開されていないので確たることは言えませんが、多くの情報に接した調査委員が、中立国も含めてシン氏の説に同意していないのですから、シン氏のはやはりその程度の説得力なのだろうと思います。
「戦争ではなく対話を」というのが私のスタンスで、シン氏もそうなんだと思います。しかしそう言いたいばかりにむやみに「北朝鮮犯行説」を否定する、それも説得力のない論理や検証で否定すると、間違いが顕わになったときに、「戦争ではなく対話を」という正しい意見まで説得力を失いかねないので、ここはきちんとしたことを見ておく必要があると思いました。
シン氏の一番の弱点は、爆薬成分が検出されたことについての合理的な説明ができない点です。理由の「7」にシン氏はいろいろ書いていますが、火薬成分が検出されたことと、付着したアルミ(爆発力を高め、バブルを強烈にする)のことをわざと落としています。
シン氏の座礁説についてはつぎのような反論が考えられます。
氏の説を太字で掲げ、その後に私の見解を書きます。
1.天安から本部への第一通報は「座礁した」というものだった。
天安が衝撃を座礁と勘違いしたのはその通りで、軍当局も当初は座礁と思っていたのでしょう。どんな海難事故でも、事件後は原因説明が二転三転するものです。原因がわからないのに最初から魚雷攻撃だと断定していたら、むしろその方が怪しいと私は思います。当初の錯誤はむしろ謀略否定・不作為の存在を示唆しています。
2.軍当局も家族に「座礁」と説明していた。
上に同じ
3.当初発表の事件発生時刻がちがう。
上に同じ
4.船体側面下部に座礁でついた大きなひっかき傷がある。
シン氏の完全な勘違いです。写真に写っているのは、分厚い付着物です。洗い流した艦体には、こんな大きな傷はありませんでした。
5.ビルジキールが傷ついている。
ビジルキールは傷ついていたどころか、上方にねじれていました。下から大きな力が加わったからです。
写真:これがビジルキール
6.スクリューが前向きに曲がっている(座礁したのでスクリューを逆回転させ、後退したからだ)。
荒天でもないのに、スクリュー部分まで岩礁に乗り上げるような座礁はあり得ません。それほど船の推進力は強くないでしょう。シン氏は右舷のスクリューだけを問題にして、左舷のスクリューになぜ触れないのでしょうか。左舷のスクリューは2枚しか曲がっていません。スクリューが回転しながら後退したのなら、全部曲がるはずです。これはスクリューが回転していなかったことを示しています。スクリューが曲がったのは、砂地に埋まりながら海底を引きずられたからと考えるのが合理的です。
7.調査報告書は爆発を否定する記述ばかりだ。
最初に述べたように、火薬成分とアルミに触れていないのは、シン氏にも説明がつかないからです。熱の痕跡がないからこそ、調査委員会は魚雷の直撃ではなくバブルジェットだと推定しました。焼けてはいないけれど、割れた部分は下から上にねじれていました。竜骨も下から上にねじれながら折れていました。艦首と艦尾も上に折れていました。下から強烈な力がかかり、艦底から甲板にものすごいエネルギーが吹き抜けていったことを示しています。座礁や衝突ではこんなことになりません。
下の写真はオーストラリア海軍の魚雷実験です。天安を沈めたのと同じタイプの魚雷です。このように天安は割れたのです。写真で分かるように、火災は発生せず、焼けていません。
■座礁説には印象操作がある
以上で反証は終わりですが、付け加えることがあります。それは写真を使ったシン氏の印象操作です。
(1) 大きな船が岩に乗り上げている写真
これは満潮時の嵐で岸に吹き寄せられ、干潮で船体が取り残されたものですから、ケースが全然違います。しかも座礁した場合は船底に傷がつくというシン氏の主張に反し、この船には傷がありません。
(2) 船体が2つに割れている写真
このように船体が割れるケースは、例外なく荒天時に漂流して波の力で折れたものです。2隻ともかなり老朽化しているので、座礁して放置され、腐食して割れたようにも見えます(下の写真は違うかも知れない)。
■陰謀論に共通する欠陥
最後に、謀略論は9.11謀略説もそうですが、説明がとても不合理なのです。どうしてこんなことをしなければならなかったのか、こんなことが可能なのかという検証が不十分なのです。
また、同じ効果を持つ、もっと簡単な方法があるのに、どうしてわざわざ困難な手法を採用するのかが、説明できません。得られる効果とリスクの高さが釣り合わないのです。
シン氏の説なら沈没は事故ですから、そのあと、韓国政府はつぎのような行動をしたことになります。
・原因も分からないうちに、これを奇禍として、北朝鮮のせいに見せかけようと考えついた。
(原因が本当に座礁で、目撃者が多数いるかも知れないし、船首に衝突痕でもあればバレバレになる危険を冒して。)
・軍と政府がそのプランに合意した。
(バレれば政権は転覆、またも民主政権に逆戻り、関係者は懲戒免職のうえ刑事罰が下り一生を棒に振るのに、関係者が一致してこんなことをしようと合意できるものでしょうか。)
・証拠品を多数集め、海に沈めた。
(これをするには天安の生存者をはじめ、魚雷を保管していた軍の関係者の下っ端に至るまで、何百人もの口を封じるという離れ業が必要ですが、短い時間でよくもできたものです。)
・国際調査委員会の目を盗んで、船に爆発物「RDX」やアルミを吹き付けた。しかも通常考えつく船底ではなく煙突付近に。
(これをするだけで何人の口封じが必要なんでしょう)
緊張を高めるのが目的なら、もっと簡単な方法がいくらでもあるのに、こんな危ない橋を渡るでしょうか。たとえば先日も朝鮮人民軍の艦艇が2度も「領海侵犯」しましたが、これに対して1~2発撃ち込んで挑発すれば、たちまち海戦が勃発します。そして相手が先に発砲したのだと言えばすみます。他にいくらでも方法があるのに、わざわざバレやすくて危険な謀略を採用する必然性がないと思います。
他にも語られている「疑惑」も、単なる印象にすぎません。
1.スクリューの腐食について
鉄製プロペラに火薬成分とアルミが付着すれば短期間にガルバニック腐食します。海水と同じ濃度の塩水にクギと一円玉を接触させて浸けて、2週間放置すれば、どれほど腐食するか検証できると思います。塩水を攪拌すればもっと実際の検証に近くなります。調査委員会は、腐食スピードについての報告も出しており、納得できる結論です。
2.「1番」のマジックが不自然
共和国は「製造番号はマジックで書かず機械で書く」と反論しました。それはそうでしょう。韓国側もこれを製造番号だと言っていません。こんなぞんざいな印が製造番号だとは、私も思いません。これは製造現場で工員がよくやることですが、部品の組み立て順序とか裏表を間違えないための符丁記載だと思います。家にあるふすまやサッシなどにも、建具屋さんがつけた印(東1とか上とか)が残っていることがときどきありますが、あれです。
推進装置の、防水措置が施してある回転部分に書かれていたので、残ったのだと思います。こんなチョロチョロっとマジックで書いたようなものが証拠だと言われたら、誰に言われなくても調査に当たった専門家が、まず不審に思うに決まっています。
なのに専門家がそう言わないのは、調査委員立ち会いのもとで分解して、そこで発見された経緯があるからではないでしょうか。韓国側のデッチ上げができない状況で、自分たちが発見したからだと思います。そうとでも考えないと、中立国の専門委員でさえ不審に思わない事実を説明できませんからね。
3.130t級潜水艦に1.7tの魚雷を搭載できるのか
130トン・ヨノ級潜水艦はイランに輸出されていて、スペックは完全にわかっており、魚雷が積まれています。
参考動画
http://www.youtube.com/watch?v=sDqcFtvgh00&feature=player_embedded
自重の60分の1程度の魚雷は、普通に搭載できます。旧日本軍は50トン足らずの小型潜水艇でオーストラリア海軍の軍艦を撃沈しました。
でもヨノ級潜水艇が使われたというのは、あくまで韓国軍の推定です。もう少し大きなサンオ級かもしれないし、これはわかりません。ユーゴから技術移転されたサンオ級なら533mm魚雷の発射筒2門が確認されています。
*http://chorea.hp.infoseek.co.jp/dprk/pan/2-3.htm
グーグルアースの写真について、「この潜水艦は75mもある」という反論がありますが、その検証自体がデッチ上げで、論評の対象外です。