陸上自衛隊の「総合火力演習」は無駄遣いなのか

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先日行われた、陸上自衛隊恒例の「総合火力演習」

毎年、「こんなことに3億円も4億円も使うのは無駄だ」という声が上がる。
これが無駄遣いかどうか、それはにわかに言えないと思うので、自分の考えを少し書いてみよう。

こういった形で外国武官や一般市民を招待して、その目の前で展示演習をするというのは、諸外国ではあまり例がないのだろう、聞いたことがない。

念のため自衛隊に尋ねてみたが、やはり知らないということだった。自衛隊はその存在に理解を得るという目的があって公開しているのだが、やってみたら思いがけない効果があったそうだ。それは外国武官への影響だ。

航空展示演習で時々戦闘機が事故を起こす。ああいうことになったら、その機体への信頼性が一挙に下がる。陸上自衛隊も同じことで、多数の戦車や大砲が参加する展示演習で、外国武官の目の前で一両でも動作不良を起こしたら笑いものだ。軍用車両というのは機能が複雑になればなるほど、故障しやすいと聞く。訓練を公開するというのは、華々しい反面、権威失墜のリスクをも伴うのだ。

その点で富士の総火演は、凄いのだ。機材の性能や整備に自信がなければ出来ないことなのだ。しかも、大砲にしろ戦車にしろ、百発百中の腕前を見せつけている。走り回る戦車から射撃して小さな的を射抜くというは、これはなかなか出来るものではない。それを易々とやってのける自衛隊の練度の高さに、外国武官は舌を巻くのだ。

155ミリ榴弾砲を一斉射撃し、10秒もした頃に砲弾が空中で破裂し、爆煙で富士の稜線を描いてみせるという一幕がある。

見物者向けのパフォーマンスなのだが、専門家が見ると、これは大変なことなのだ。ものすごい速さで飛んでいく砲弾が、前後上下左右に数十cmと狂わないで、あらかじめ計算した空中の場所で順次破裂していく。照準、発射のタイミング、砲の性能、推進薬の均一性、時限信管の性能及び信頼性の高さ……これらが揃わないと、一発勝負で出来ることではない。

特科部隊(自衛隊は砲兵を特科といいます)とそれを支える総合的工業力のレベルのあまりの高さに、外国武官は苦笑いをするしかないそうだ。

余談になるが、韓国のヨンビョン島を「北朝鮮人民軍」がロケット砲と大砲で砲撃したことがあった。その着弾の様子を航空写真で見たことがあるが、あまりの精度の低さに呆れたことがある。ロケット弾なんか島に着弾したのが3分の1ほどだったと記憶している。あんなのが国境に配備されている精鋭部隊で、時間をかけてしっかり照準してあの程度なら、実戦になったらどうしようもないだろうなと思った。

米国の射撃場で各国砲兵隊が射撃演習をしており、自衛隊も参加しているのだが、自衛隊の特科部隊の精度の高さがお話にならないレベルだというは、有名な話だ。命中率は9割を超える。100発撃ったら90発は命中するのだ。

米軍の命中率は3割程度だそうだ。まあ、米軍は「だったら自衛隊が100発撃つ間に400発撃ったら120発当たるから自衛隊より強い」という軍隊だから、これはこれで凄い。

それはともかく、招待客には、中国の武官も含まれている。彼の目には、展示演習が、こういうメッセージとして映る。

「自衛隊、なかなかでしょ、フィリピン軍やベトナム軍とは違うよ、手出ししないほうがいいよ」

練度の高さ、装備の優秀性を実見させることで、確実に抑止力になっていると私は思う。3億円なら安いもんじゃないかと思うのだ。

同時に「こんなに凄い」けれども「この程度である」と公開していることにもなる。よその国みたいに「手の内を明かさない」方法でビビらせる手法もあるが、装備の性能や保有数量を含めて「手の内を見せる」ことで、「守らせたらすごいけど、攻めていけるほどの力はないでしょ?」と知らせる。相手に全部さらけ出すことで、無用の緊張を防ぐというやり方だ。私はこのやり方が良いと思う。

だから安倍さん、自衛隊をあなたの趣味に使わないでください。
自衛隊を使って中国を挑発するのはやめて下さい。
自衛隊は国を守る組織なんだから、侵略の片棒なんか担がせないでください。