TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)(3)

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1895295888&owner_id=12631570

映画「ベイブ」の冒頭シーン。

ブタたちは暗いブタ小屋で惨めな暮らしを送っていた。ときどき人間が迎えに来て、よく太ったブタをどこかに連れて行く。子ブタたちは信じていた。大きくなって太れば、ブタの天国へ行けるのだと。天国は素晴らしく、誰も戻った者はいない。だから親が天国に召されても、
子豚たちはそれを悲しまず、自分たちにもその日が来るのを待ちわびていた……

結論から書くと、やはりTPPはだめだ。

なにせ安倍政権(というより外務省を含めた日本の官僚たち)に、交渉能力が皆無だからだ。TPP交渉に参加もしていないうちから、すでにほころびが露わになりつつある。こんなことでは、条約の字面がどうであれ、TPPに加盟したらたちまち、赤子の手をひねるみたいにあっさりとアメリカの利益に従属させられてしまうだろう。

安倍さんはこないだの訪米で、TPPの「例外なき関税撤廃」原則にかかわらず、TPP発足後もアメリカが日本車に高い関税を掛け続けることに同意した。だったら何のためのTPPだよということになるが、アメリカの言い分を聞いておけば、農産物で日本の都合を聞いて貰えるかも知れないから、これはよいことだとバカな喜び方をしている。

そう思うんだったら、いまのうちに農産物について合意しとくべきだった。その話に乗る気がアメリカにあるなら、いま乗ってくるはずだ。いま乗らないなら、これからも乗らない。

アメリカは言いたいことを言う国だが、日本に言いたいことを言わせる国ではない。痛み分けなんてことができる相手でもない。あとから話を持ち出したって遅い。本番になれば、原則を押し通してくるだろう。「だって自動車では日本が譲歩したではないか」と言ったって、「それはそれ、これはこれ」で受け流されるに決まっている。

しかも話のついでに、自動車の安全基準や環境基準をアメリカ並みにゆるめる話まで聞いて返ってきた。

日本政府が義務づけている自動車の安全基準について、
>米国などからの輸入車に対しては基準をゆるめるよう求めた。
(2月24日朝日新聞)

安全と環境。これこそ市場における日本車の強みじゃないか。そこを明け渡して、どうやって厳しい販売競争に勝てるのだ。TPPで輸入車の基準を緩和すれば、国内メーカーだけに厳しい基準を適用するわけにはいかないから、結局、国内の安全基準・環境基準全体が、アメリカに合わせてグダグダになるだろう。結果として、日本車の優位性は失われる。

そこへ持ってきて、こんな記事がすっぱ抜かれた。

TPP参加に「服従」条件
後発国再交渉認めず
2013.3.7 中日新聞夕刊
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2013/03/08/tppbussutarted1chunihi1303081007.jpg

日本政府もメディアも、「交渉に参加しなければ、話し合いの中身さえわからない」と繰り返している。

「加盟するかしないかは別にして、ともかく交渉に参加するしかない」
「参加しなければ、日本の要求を伝えることさえ出来ない」
これが安倍政権の立場だ。

ところが、実際には、入ったら交渉が不可能だとわかった。
「既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」
つまり、あらかじめ無条件降伏することを前提にしなければ、交渉に参加させてもらえないのだが、それって「交渉」なのか? で、中日新聞の続報によれば、そのふざけた内容を野田総理は昨年6月段階ですでに知っていたくせに、公表しなかったのだそうだ。おい、おい・・・。
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2013/03/08/tppbusstarted2chunichi1303081men.jpg

では、はじめから飲まされることになっている「現在の参加国間で合意した条文」は何なのか。なんと、それすら私たちは知ることができないのだ。

「TPP交渉国には、交渉文書その他資料について、交渉中、さらには締結後4年間も秘匿する合意がある」
このことを漏らしたのは、ニュージーランド外務貿易省だった。
*http://en.wikipedia.org/wiki/Trans-Pacific_Strategic_Economic_Partnership

交渉内容情報を知ることができるのは、

・政府の交渉担当者
・「利害関係者(stake holder)」(多国籍企業、業界団体、およびそのロビイスト)
・ごく一部の政治家

これだけだというのだ。

おいおい、何を合意するのかさえもわからないものに合意させられ、合意したら従わなくてはならないのか? 冗談ではないぞ。

すでにアメリカでさえ、こういったことに批判がわき起こっている。
さすがにアメリカの市民団体はすごくて、どこかから交渉の秘密文書を入手して公開したのだ。
*http://www.youtube.com/watch?v=HLVKAalmD48

その結果、

「上院議員にさえ秘密の交渉とは何事だ」
「これは企業にアメリカを売り渡すものだ」
「これは経済の問題にとどまらず、民主主義かどうかの問題だ」
「結局は金だ、1%を喜ばせる協定なのだ、1%の夢なのだ、ありったけの金とロビー力をつぎ込んで、未来永劫に力を振るうのだ」

このように批判されている。

乗ったが最後、どこに行くのかさえもわからないバスに、誰が喜んで飛び乗るのだ? なのに政府のエライさんたちは、いそいそと乗り込む用意をしている。

私はブタ小屋で暮らすみじめな賃金奴隷かも知れないが、見たこともない天国を待ちわびるブタでありたくはないぞ。