被災地再生に平成の徳政令を

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日弁連会長が被災者に対する「平成の徳政令」を提言した。これを受けて、日弁連多重債務部会が動きはじめた。サラ金運動のときもそうだが、こういった地味な運動を、メディアはまず取り上げない。でも、やる人はやっているっていうお知らせとして、書いておく。

でもなあ。

提案しているのは「救済手段」だけど、利口に使えば「ゼニ」になるから、それが心配。仮に運動の力でいくつかの提案が実現したとすると、ちっとも運動に参加しなかったようなハイエナ事務所が、「あなたの借金、チャラにします!」なんてTVでジャンジャカ宣伝して「客」をかっさらって大もうけするんだろうなあと思うと、ちょっとやりきれない。

ま、いいか。

さて、いま提案が上がっている大きな柱は3本。
その下に、具体化プランがいくつもぶら下がっている。

■大きな柱

1.二重ローン対策

2.被災者向け倒産法改正

3.保証免除

■それぞれの意味と意義

1.二重ローン対策

家や車や仕事場がなくなったのに、そのローンだけは残っている。新築したり新車を買ったり新工場を建てると、そのローンもかぶさってくる。これが二重ローンだ。これを免除したり、信用供与して返しやすくしたり、国が債務引き受けをしたりという提案がある。

2.被災者向け倒産法改正

震災被害で、今後の民事再生事件や倒産・破産事件激増は避けられない。なるべく多くの人が再生できるように、条件を緩和したり、破産者の財産を身ぐるみかっぱいでしまう破産法を、もう少しゆるくしようよというものだ。

3.保証免除 

保証人制度は「人的担保」といって、日本独特の残酷な制度だ。肉親や友人、取引先の義理にからんで保証人になり、ひどい目に遭う人があとを絶たない。主債務者だって可哀想だ。絶対に保証人に迷惑を掛けちゃいけないと考えて、できない無理をすることで却って傷口を広げてしまう。この際、保証人も免除・免責されないといけない。

以上を具体化する小プランのいくつかはちょっと横道に逸れたテクニカルな話なのだが、まずは、「被災地のみなさんに元気や希望を届けるんだ」、「いろんな知恵があるんだということを伝えたい」と弁護士たちは言っている。

これから、徳政令を具体化する法律案を具体的に立案し、立法運動を始めるそうだ。今後どしどし立法提言が上がり、ロビー活動が展開されるだろう(メディアには乗らないけどね)。

なにせ、「想定外」の有事だ。既存の枠にとらわれない法制度で対応しようよ、菅さん。

この先は話が細かいから、興味のある人だけ読んで下さい。

そのうち兵庫県弁護士会から緊急提言として上がるだろう原案です。

■二重ローン対策

①既存債務についての免除制度の創設
(債権は金融機関において無税償却できるとするもの)

ただし、単純に債務免除してしまうと,東北地方の零細金融機関などは大きな損失を被ることになってしまう。被災地の地方経済の活性化は極めて重要な課題だ。
そこで、

②既存債務の公的機関の免責的債務引き受け(または肩代わり弁済)制度などの創設

一定の場合には、地元金融機関を救済するために、免除ではなく公的機関が(たとえば政府系金融機関とか、復興政策財団などというのを立ち上げて)肩代わり弁済をする。政府が求償権を得た後は、これを免除するなどを考えたら、それで被災者は救われる。

しかし反対意見があった。
「住宅ローン債権を持っている大手金融機関のために,税金を投入して助けてあげる必要があるかどうか疑問がある」と。
阪神淡路大震災のときに、公金を市民個人のために投入できないとして、個人に対する公的補償が一切なく、これを求めて運動している最中に、住専関係で大手銀行に多額の税金を投入することになり、オカシイではないかと大合唱が起きた。確かに大銀行を公金で救済する社会的必要は乏しい。このあたりはまだ詰めが必要だろう。

③債務免除の弾力的な適用の周知。

これは、すでに存在する会計基準や免除特例などを弾力的,柔軟に運用して免除できるケースがあるならば、金融庁なり国税庁の通達一本で済むなら救ってやれよ、というもの。

これらが「債務免除」の提案だ。
これを、住民の二重ローンだけでなく、被災地の事業者(たとえば漁業者、関連加工業者、物流業者、市場、その他)の事業性の債権にも、同じように認めてやってくれ、と。

④~⑥は,免除がダメな場合の軽減策だ。

④二重ローン部分について物権担保に代わる信用保証制度の創設。

これは、新築した物件に従前分のローンも併せて乗っけて抵当権を設定する例があるけれども、それだと過剰負荷になるし、物件喪失のリスクを債務者が一人で背負うことになって不公平ではないか、という観点から、従前債務は,無担保にせよということだ。ただ、無担保というとなかなか難しいだろうから、せめて県の信用保証協会などが特別に保証してやれよ、というもの。

⑤既存債務部分も含めた住宅ローン控除の適用。

これは、住宅ローン控除が物件の売買代金の範囲内でしか認められないので、それだと流れてしまった家のローンの控除ができないことになる。制度の不備だ。それだとかわいそうなので、売買代金額を超えて、既存ローンの分も控除を認めてあげたらどうか、という考え。

⑥既存債務部分を雑損控除扱いにする税務上の特例の創設。

これは、既存債務は、ただただ負担になるだけなので、物件喪失の分しか雑損控除が認められないところ、さらに既存ローンの分も雑損控除に上乗せさせてやれ、というものだ。

「雑損控除の繰り戻し」というのは,スバラシイ制度です。損失額を,前年度の申告に繰り戻す結果、雑損控除の分だけ、納めた税金が返ってくるのです。阪神淡路のときも、雑損控除の繰戻しで、人によっては数百万円が還付されたことがあり(←高額納税者ですな)、助かったという例があります。「この繰戻期間を3年ぐらいにせよ」という提言もあり、そうすると、相当大きな金額が国からポンと還付されて助かります。

■被災者向け倒産法改正

この先、義捐金や弔慰金・被災者生活再建支援金などが支給されるが、支給された後で不渡りを喰らって破産するとなると、手持ち現金が破産財産となって、銀行やローン会社に分割配当されて消えてしまう。こんな馬鹿げた話は許せない。自分が悪いわけでもないのに、法律で身ぐるみ剥がれて事業を再建できないのでは、かわいそうだ。

  • 少なくとも自由財産は400万円以上とする。
  • 生活再建や生業に必要な自宅・自動車・生業に必要な漁船・農機具等は思い切って自由財産とする。
  • 個人再生の債権額上限を1億円以上でもよいことにする。
  • 住宅ローン特則を利用しやすくする(住宅金融保証が代位弁済していても1年間は再生申立ができるようにする、他の担保があっても再生可能とする、支払期間・支払回数を長期化して最低弁済額を引き下げる、申立書類は思い切って簡略化するなど)。

もっとあるかもしれないが。

■保証免除

これは上で述べた通り。