特別永住許可制度について(2)

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■特別永住者に対する優遇措置は不公平なのか

特別永住者は、一般の永住者に比べて優遇されているという意見がある。

たしかに、再入国許可の期限が最長5年(一般永住者は4年)だったり、外国人登録証不携帯の罰金が一般永住者の半額だったりという違いはある。これは「特権」だろうか。不公平なのだろうか。

他の外国人の場合と比べてみよう。他の外国人も、ビザが必要だったり不必要だったり、永住申請の際に「独立生計を営むに足りる資産又は技能」が求められたりいらなかったりと、扱いが相手国によって異なる。不公平に見える取り扱いの違いは、普通にあることなのだ。何も特別永住者だけのことではないのだ。

違いが生じる理由は、日本との友好関係が浅かったり深かったり、あるいは来日の事情が異なるところにある。特別永住者の場合、元日本国籍者であるとか、一世から数えた定住歴が百年以上になる家族があるなど、他の外国人に見られない「歴史経緯」がある。そこで他の外国人と異なる扱いになっているのだ。

■不公平には合理的な理由がある

橋下徹大阪市長は「特別永住制度を見直す必要がある」という。おそらく単純平等主義にもとづく意見だろう。よろしい。その意見が正しいといったん認めよう。すべて平等にしよう。それならば、あらゆる例外を許してはならない。

アメリカなど友好国に対して、ビザ免除という優遇措置を認めてはならない。「高度人材外国人」に対する優遇措置も撤廃すべきだ。

もしくはテロリストが多くいる国からの来訪者にも、ビザを免除せよ。平等というのは、そういうことだ。

そんなことが可能かどうか、考えるまでもない。出入国管理は国家主権にもとづいて、高度な外交的・内政的な政治判断でなされているのであり、不公平があっても、そこには合理的な裏付けがあるのだ。
八百屋のキャベツの値段を決めるようにはいかないのだ。

■出入国管理法の目的と特例措置の目的

出入国管理法第1条 本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図る……

出入国管理法はその目的を、このように定めている。要するに管理が目的である。外国人を管理するのは治安対策だ。

これに対して特別永住許可を定めた「特例法」の目的は異なる。法案の目的は、国会答弁と法の条文に示されている(末尾に参考資料として国会答弁と法文を掲載)。この法律の目的は、「在日韓国・朝鮮人の方々の法的地位につきまして、その歴史的経緯及び定住性を考慮いたしまして、これらの人々ができる限り安定した生活が営めるようにする」ことである。

管理や治安も目的のひとつだけれど、それを主眼としていないのだ。法律の目的が異なるのだから、入管法で管理される他の外国人と異なる取り決めをするのは当たり前のことである。治安対策ではなく「定住生活の安定に資する」のだから、他の外国人に比べると管理が緩いのは合目的的なのだ。

橋下市長は公人なのだから、せめてこれくらいのことを認識した上で、責任ある発言をしていただきたい。

衆議院 予算委員会
平成3年2月21日 答弁№139

○左藤国務大臣 在日韓国・朝鮮人の方々の法的地位につきまして、その歴史的経緯及び定住性を考慮いたしまして、これらの人々ができる限り安定した生活が営めるようにすることが重要である、このように認識をいたしております。法務省といたしまして、こういった見地から、これらの人々の法的地位の安定化を図るために出入国管理及び難民認定法の特例法案を今国会に提出いたしたいと、このように鋭意準備をいたしております。

日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年五月十日法律第七十一号)
第六十条  

3  法務大臣は、永住者の在留資格をもって在留する外国人のうち特に我が国への定着性の高い者について、歴史的背景を踏まえつつ、その者の本邦における生活の安定に資するとの観点から、その在留管理の在り方を検討するものとする。