慰安婦強制連行論

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ネトウヨが集まるコミュに誘われて交わした議論が終了しました。自分自身の理解をまとめる意味で(それだけの意味で)有益でした。慰安婦がまさしく強制連行であったという理由を述べたのに対し、ついに相手側からは具体的な反論がありませんでした。後々のために、日記に再掲しておきます。

■強制連行であったと断定する理由

おおまかに言えば、強制連行であった理由は以下になります。

  • 慰安婦は警察の許可をえないで、軍が権限外の行為をしていたから、「娼妓取締令」違反で、無効な契約です。
  • 「人身売買禁止令」に違反しています。
  • 違法無効な契約は、明治民法90条により、はじめからなかったことになります。
  • そういう契約で、警察の許可なく慰安婦を海外に送るのは、明治刑法226条違反です。
  • 違法無効な契約なのにそれを隠し、慰安婦の法的無知に乗じて人身を支配した行為は、誘拐罪といえます。
  • 誘拐は、つまりそれが強制連行であったことになります。
■慰安婦が違法であることを示す法令

以下は、慰安婦が違法であることに関する法令です。他にもあるでしょうけど、当時の法律をちゃんと適用していれば、慰安婦は全部違法無効であったはずなんです。犯罪行為なのに、軍の権力でごり押しされてしまい、国内には誰も止める力を持った者がいなかったので、まかり通ってしまったのです。「売春は合法だった」と一般論で片付くことではないのです。

■刑法第226条
所在国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、2年以上の有期懲役に処する。

昭和12年、大審院(最高裁)で売春目的で女性を海外に連れ出そうとした業者らが有罪になっています。「醜業(売春)を秘し、女給か女中として雇うように欺まんし、移送することを謀議」(判決文)し、知人の妻らに手伝わせ、長崎から15人の日本人女性を上海へ送った業者らに対し、大審院第4刑事部は「婦女を誘拐して国外に移送した」「共同正犯」として上告を棄却、有罪が確定しています。

ところが軍が介在すると、こういうことが何のおとがめもなくできることになってしまったのです。

■民法第90条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

■人身売買禁止令 明治5年太政官布告
人身を売買し、一生涯または年期を限ってその主人の意のままに使ったり虐使するのは、人倫にそむき、あるまじきことなので、古来より禁じられているところ……今より厳禁のこととなすべし。

原文「人身ヲ売買致シ、終身又ハ年期ヲ限リ其主人ノ存意ニ任セ虐使致シ候ハ、人倫ニ反キ有マシキ事に付古来制禁ノ処・・・自今可為厳禁事」

大正期に大審院が、前借りで女性をしばって売春させる契約について、金の貸し借りは有効だが、それをかたに売春させるのは個人の自由を著しく拘束するものであるから無効としました。

■娼妓規則第1条
娼妓になるのが本人の真意による出願であれば、実情を問いただした上でこれを許し、鑑札(許可書)を渡すこと。

原文 娼妓渡世本人真意ヨリ出願之者ハ実情取糺シ候上差許シ鑑札可相渡

■娼妓規則第3条

娼妓名簿の登録は、娼妓であろうとする者本人が警察署に出頭し、(中略))書面で申請しなければならない。

原文 娼妓名簿ノ登録ハ娼妓タラントスル者自ラ警察官署ニ出頭シ(中略)書面ヲ以テ申請スヘシ

慰安婦は、

  • 本人の意思ではないばあいが多く確認されている。
  • 本人が警察に出頭していない。
  • 従って警察が実情を問いただしていない。
  • 申請書面も出ていない。
  • 警察が許可証を発行していない。

これにより、慰安婦はすべて違法無効となります。慰安婦システムは、その全体が国内法違反だったのです。

■違法性を物語る事件

慰安婦募集が、当時の感覚でも誘拐に類するものであることが、警察資料でわかります。

和歌山県知事から内務省警保局長に宛てた1938年2月7日付の「時局利用婦女誘拐被疑事件ニ関スル件」と題した報告書があります。この報告書によれば、和歌山県田辺警察署は、挙動不審の男性3名に、婦女誘拐の容疑ありとして任意同行を求めました。

彼らは自分たちは「疑わしいものではない、軍部の命令で上海皇軍慰安所に送る酌婦募集にきたのであって、三千名の要求に対し、七十名は昭和十三年一月三日陸軍御用船で長崎港から憲兵護衛の上、送致済みである」と申し開きをしました。

しかし警察は、「無智ナル婦女子ニ対シ金儲ケ良キ点、軍隊ノミヲ相手ニ慰問シ、食料ハ軍ヨリ支給スル等、誘拐ノ容疑アルヲモッテ被疑ヲ同行、取締ヲ開始ス」とあります。栄光ある皇軍が、誘拐まがいの指示を出すはずがないではないかと常識的に考えたのです。

ところが3人の身柄を拘束して取り調べをはじめた警察に、長崎県外事課から信じがたい回答が寄せられました。その男達の言うことは本当なのだと。

「長崎県外事課よりの回答 和歌山県刑事課長殿」という文書には、こう書いてありました。在上海総領事館警察署長から、長崎水上警察署長に、協力依頼が届いている。領事館警察は、上海領事館陸軍武官室憲兵隊から、慰安所を設置することにしたので、渡航の便宜を図って欲しいとの依頼を受けている、というのです。そこで警察は、3人の男を釈放せざるを得ませんでした。

先に示したとおり、警察の鑑札もないのに娼婦を募集するのは違法ですし、満16歳の少女を対象にリクルートするのも、本人の出頭もないのに娼婦契約をさせるのも違法ですから、警察が許可証を出すはずがないのです。しかも彼女たちを海外に送るというのですから、刑法266条違反です。警察が誘拐だと判断したのは賢明です。ところが、憲兵隊の依頼だというので、警察が手出しできなかったのです。この事件、憲兵隊は明らかに誘拐の共同正犯と言わざるを得ません。

■慰安婦は「大日本帝国政府」によって拉致された

慰安婦が強制連行されたことについて、以下の論理にも、返ってきたのは感情的な反発だけで、ついに論理的な反駁はなかった。

拉致=個人の自由を奪い、別の場所へ強制的に連れて行くこと。
強制的に連れて行くこと=強制連行
拉致=強制連行である。

北朝鮮による拉致について、日本政府は以下のような手口をすべて拉致と認定している。

  • 偶然通りがかった被害者を暴力も辞さない方法を用いて拉致する。
  • 巧みに誘い出し、誘拐する。
  • 「仕事の紹介をする」として、本人の同意を取り付けて入国させる。

首に縄を付けて連れて行かれたと証言している朝鮮人慰安婦は、一人もいない。支援者もそんなことは言ってない。多くはいい仕事があると騙されて、慰安婦にされたのだ。北朝鮮に連れて行かれた石岡さん、松木さん、有本さんたちは、いいアルバイトがあると騙されて、拉致された。いい仕事があると騙されて、慰安婦にされた人たちと同じである。有本さんたちが拉致されたというなら、慰安婦たちも拉致されたわけだ。つまり強制連行である。

北朝鮮拉致被害者をだまして連れ出した実行犯には、飲食店主など民間人が多数含まれている。慰安婦たちをだまして連れて行ったのも、民間業者である。民間人が関わっていても、拉致事件は「北朝鮮」の犯行だと認定されている。ならば民間業者が関わっていても、慰安婦を強制連行した責任は軍にあるとしなければなるまい。

  • 軍が設置を計画した。
  • 軍が業者を募集して、選定して、指名した。
  • 軍の指定業者が女性を集めた。
  • 業者は国権を背景に身分と安全と財産を保障された。
  • 違法な募集を警察が黙認した。
  • 軍が慰安所を設営した。
  • 軍が輸送船を用意した。
  • 外務省や総督府が出国を許可した。
  • 軍が慰安婦を輸送した。
  • 憲兵が警備した。
  • 軍が慰安所を管理した。
  • 業者が慰安婦を管理した。
  • 軍が料金を定めた。
  • 軍が軍医の診察を受けさせた。
  • 慰安婦は移動の自由を奪われた。

つまり軍が最初から最後まで、拉致に加わっているのだ。拉致事件被害者は、「北朝鮮政府」に拉致された。おなじように、慰安婦は「大日本帝国政府」によって拉致されたのだ。

■慰安婦は「従軍」していた

慰安婦が「従軍」していたことについても、以下の資料に対し、ついに一言の反論もなかった。

第058回国会 社会労働委員会 第21号
昭和四十三年四月二十六日
戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/058/0200/05804260200021c.html

これはまだ従軍慰安婦問題が大きくなる前の質疑であり、メディアや外国の意見などの影響がない時代の認識を示しています。

政府委員の答弁を要約すると、つぎのようになります。

  1. 戦地の慰安婦に宿舎の便宜を与えていた。
  2. 慰安婦には軍属の身分を与えていた。
  3. 戦地で銃を取って戦ったり従軍看護婦の役割を果たした慰安婦もいる。
  4. そういう人は援護法の対象になる。
  5. 海上輸送中に沈められた慰安婦も軍属あるいは準軍属として、援護法の対象である。
  6. 政府として慰安婦の人数など実態を調べたことがない。
  7. 立場として申し出にくい場合があるだろう。
  8. 法律を知らずに泣いている人もあるだろう。
  9. 一人残らず救うために努力したい。

慰安婦は軍属だったのだから、従軍していたのです。援護法の対象なのだから、「公務」に従事していたことを、政府は認めている。したがって、ただの売春婦などという評価は根底的に誤っているのです。

以下は議事録から政府委員の答弁の抜粋です。

後藤委員:まず第一番にお尋ねいたしたいと思いますのは、大東亜戦争当時、第一線なり、いわゆる戦場へ慰安婦がかなり派遣されておったと思うのです。……いま申し上げましたような、この慰安婦に対する現在の援護法の適用の問題でございますけれども……先ほど申し上げましたような犠牲者が、全部うまく把握されて援護法の適用をされておるかというと、そこまではいっておらないと私は思います。

実本政府委員:いま先生のお話にございますいわゆる慰安婦と申しますか、そういった人々の問題につきましては、……実は何らそういう面からの実態を把握いたしておりません。……たとえば昭和二十年の四月以降のフィリピンというような状態を考えますと、もうそこへ行っていた慰安婦の人たちは一緒に銃をとって戦う、あるいは傷ついた兵隊さんの看護に回ってもらうというふうな状態で処理されたと申しますか、区処された人たちがあるわけでございまして、そういう人たちは戦闘参加者あるいは臨時看護婦というふうな身分でもってそういう仕事に従事中散っていかれた、……軍はそういった意味で雇用関係はなかったわけでございますが、しかし、一応戦地におって施設、宿舎等の便宜を与えるためには、何か身分がなければなりませんので、無給の軍属というふうな身分を与えて宿舎その他の便宜を供与していた、こういう実態でございます。
……戦闘参加者なり、あるいは臨時看護婦としての身分でなくなられた人については、当然請求をしていただいて裁定する、こういうことに相なります。
……ある前線からある前線へ大量の人を輸送船で運んでいた。それが海没したような場合につきましては、はっきりそういう人たちのケースがわかっておりますので……準軍属なり軍属として取り上げてもいいような人たちについては、おおむねそういうケースとして処遇してきたつもりであります。……あるいはまだほかにそういったケースも、知らないために眠っている、あるいは泣いているという方があることが考えられます。
……一人でも漏れのないようにしていくということをやっておるわけでございますので、そういう際には、こういうケースは必ず徹底するように運んでいく、いまの段階ではそういうことを考えております。
……こういう人たち並びにその御遺族の人は、何といいますか、外へ出たくないというようなグループですから、特にそういう面についてはそういう観点から、遠慮しないで出ていらっしゃいというような導き方といいますか、引き出し方をするように指導してまいりたいと思います。